ライトフライ級でWBC/IBFと王座を統一し、現役生活のラストマッチでは同級WBOタイトルを獲得したマイケル・カルバハル。

 1988年のソウル五輪で銀メダルを獲得後、プロに転向。1993年にはファイター・オブ・ザ・イヤーに選ばれている。2006年に国際ボクシング殿堂入りを果たした、伝説の男だ。ロベルト・デュランに憧れていた彼のニックネームは「小さな石の拳」。

撮影:筆者
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 4階級を制した元世界王者のレオ・サンタ・クルスが2月5日にカムバック戦を迎える。それについてカルバハルが、思いもよらぬ声明を発表した。現地時間の14日のことだった。 

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20220110-00275607

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 カルバハルは、サンタ・クルスが早い回でKO勝ちすると予想しながら、その対戦相手であるキーナン・カルバハルへの嫌悪感を示した。

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 伝説の王者は述べた。

 「私がキーナン・カルバハルに関与することは無い。何のメリットも無いから。彼のキャリアや人生に関わり合う気も全く無い。

 加えて、キーナンのトレーナーであるダニー(カルバハルの実兄)、キーナンの母であるジョセフィン(カルバハルの姪)とも、一切関係が無い。

 今後も私がキーナン・カルバハル、及び、彼らのチームと付き合うことはあり得ない。『カルバハル・ファミリー』として、一緒に受け取られるのは甚だ迷惑だ」

撮影:筆者
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 マイケル・カルバハルはリングでは激しい闘志を見せたが、派手な車に乗ったり、貴金属を身に着けたりする人間ではない。生まれ故郷であるアリゾナ州フィニックスの自宅近くにジムを建て、若手を育成しながら地道に暮らしている。

撮影:筆者
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 彼はリングで稼いだ900万ドルほどの貯金を、兄であるダニーに全て引き出され、綺麗さっぱり蕩尽されてしまった。2006年にカルバハルが国際ボクシング殿堂入りした際、私は彼らと共に何度か食事し、以来、インタビューを重ねていたので、兄弟の仲が壊れていく様を具に目にした。

撮影:筆者
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 2007年、カルバハルはカネを得るためにと「カムバックして日本にいる2人の世界フライ級王者、坂田健史か内藤大助に挑戦したい。お前がマネージャーになって、日本のリングに上げてくれ!」と私に告げてきた。当時、彼は40歳だった。

 その後3年ほど、弁護士との打ち合わせや、兄を相手にした訴訟を抱えながら、カルバハルは酒に溺れるようになっていった。

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 2年前に再会した折、小さな石の拳は語った。

 「カネはもう諦めたよ。でも、ヤツが犯した罪は償ってほしいと思っている。確かにお前にカムバックを頼んだよなぁ。まだ40歳だったし、そこそこは動けたからね。でも『衰えた姿をリングで晒したりはしない。チャンピオンのまま引退する』って決めてリングを降りたんだから、やるべきじゃないと考え直したんだ。

 色々あったけれど、今は若い選手たちと健全に生きている。我がジムには、常時9人くらいのアマチュア選手が在籍し、あとはダイエットとか健康管理が目的で通って来る方たちで成り立っている。俺の場合は長兄だったけれど、ボクシング界には汚い人間が多い。自分を守ることも大事だな」

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 マイケル・カルバハルの今回の声明は、彼が受けた心の傷の大きさを物語っており、こちらも胸が苦しくなった。