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「強い選手とやりたい!」ライト級でステップアップを狙うイケメン元OPBF王者

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口裕朗

 12月2日に日本スーパーフェザー級4位、西谷和宏戦を控える元OPBF同級チャンピオンの三代大訓。同タイトルを4度防衛した後、ライト級に転向。2020年12月26日には元WBO王者の伊藤雅雪を判定で下した。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 新型コロナウイルス感染等で、リングに上がれない日々が続いたが、このほど11カ月ぶりのリングに上がる。三代の戦績は、目下11勝(3KO)1分け。IBF15位にランクされる。

ルックスも性格も爽やかだ 撮影:著者
ルックスも性格も爽やかだ 撮影:著者

 およそ一年前の試合を三代は振り返る。

 「OPBFを4度防衛し、世界ランキングも15位に入ることができたのですが、ずっと『何かが足りない』と感じていました。正直、防衛を重ねても虚しさを覚えていたんです。そんななかで、伊藤さんとの試合が決まりました。伊藤さんは、自分がアマチュア時代に何度もスパーリングをしていて尊敬するボクサーでしから、燃えましたね。

 彼は目が良くて、パンチを外すのが上手い。同時に手を出したら当たらないので、タイミングを考慮し、かつ、ノーモーションのパンチを練習しました。僕の作戦がハマったと思います」

撮影:著者
撮影:著者

 1994年11月13日、島根県松江市生まれの三代がボクシングを始めたのは高校1年の時だ。

 「小3から中学まで野球をやっていたんですが、正直、魅力を感じていませんでした。一応レギュラーで、8番レフトくらいで試合にも出てはいたのですが、いつも、いかにサボるかだけを考えているような調子で(笑)。高校入学後も、坊主頭は嫌だなと、最初の2~3カ月は帰宅部でした。

 高1の6月くらいに、友人の家に届いたボクシングジムのチラシを見て、その友と一緒に体験に行ってみたんです。こんな世界があるんだな。恰好いいじゃん、と思い、最初は健康コースで通うことにしました」

撮影:著者
撮影:著者

 当時のジムメイトに、この夏の東京五輪で金メダルを獲得した入江聖奈がいた。

 「聖奈ちゃんは、まだ小学生でしたが凄く真面目に練習していましたね。ボクシングは頑張れば頑張るだけ、自分に返って来る。それまでに感じたことの無い充実感を覚えました。

 それで選手コースに変え、高2のインターハイ予選に出場したら勝ったんです。島根県は1回戦が決勝でしたから、そのまま全国大会に進出したのですが、他県の選手は何試合も県予選を勝ち抜いているので、レベルが違いました。場違いな感じがしましたし、劣等感に苛まれましたね」

撮影:著者
撮影:著者

 「1回戦で負けてしまって悔しかったですし、来年は恥しくない試合をしようと真剣に練習し、翌年のインターハイでは3勝してベスト8までいけました。当時の自分としては頑張ったと思います。

 インターハイ後に、中央大学から推薦入学で声が掛かりました。中大は毎年7名の選手を採るんですが、僕は6番目だったかな。伸びしろを評価されたみたいです。でも上京してみたら、高校チャンピオンクラスばかりで、必死で喰らい付いていくしかなかったです」

撮影:著者
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 三代は、アマチュア時代から常に「考えて」ボクシングをしている。自分が成長するためには何が必要か、苦手なモノを克服するにはいかなるトレーニングをすべきなのか。自問自答しながらの練習が、彼を成長させた。

 大学では1年次からレギュラーとなる。

 「中大は指導者がいなかったので、その気になれば、いくらでも手を抜ける環境でした。部員の半分はボクシングに見切りをつけ、いい就職先を探すような雰囲気でしたね。僕は可能な限り上に行きたかったのですが、ボクシングは卒業まで、と思ってもいました」

撮影:著者
撮影:著者

 地道な努力を評価され、4年次にはキャプテンを任される。が、個人戦である最終学年での全日本ボクシング選手権大会はケガで欠場した。

 「右肘のネズミ(関節遊離体)の手術で、集大成と考えていた大学生活最後の大会をキャンセルしたんですよ。『こんな終わり方はできないな』と思っていたところでワタナベジムにスカウトされたので、プロでやってみることにしました。

 デビューから3戦はアマチュアスタイルが抜けず、フワフワしていましたね。アマはテクニックの勝負ですが、プロは人間の動物的強さを生かす為に技術がある、といった印象でした。4戦目で初めての日本人選手、仲里周磨君との試合が組まれ、こちらも彼も無敗だったんです。

 仲里君の映像を見まくって研究しました。自分の長所、出来ない動き、相手の得意なこと、徹底的に照らし合わせました。以来、ずっとそのやり方で戦っています」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 "考える"ボクシングで自らの特徴を活かし、対戦相手の得意とする動きを封じる。三代はそうやって、負け知らずで世界15位まで上って来た。

 「2日の試合も、西谷和宏選手について学んでいます。来年は、より上のステージに上がりたいですね。ライト級の世界ランカーとの戦いを熱望します」

 12月2日の試合、そして2022年の三代大訓に注目だ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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