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23戦全勝21KOで存在感を高めるアジア系ハードパンチャー

林壮一ノンフィクションライター
(C)Sean Michael Ham/PBC

 WBOバンタム級タイトルマッチ、ジョン・リール・カシメロvs.ギジェルモ・リゴンドー戦の前座8回戦に出場したブランドン・リー(22)。この日も持ち前のハードパンチで対戦相手を圧倒し、自身13度目の初回KO勝ちを飾った。目下、23戦全勝21KOの、注目株である。

(C)Sean Michael Ham/Premier Boxing Champions
(C)Sean Michael Ham/Premier Boxing Champions

 「今日の僕のパフォーマンス、良かったでしょう。いい仕事ができました。成長していることが自分でも分かります。次のレベルに進みたい。その準備は万端ですよ」

 メインイベントの前に組まれた2試合が早く終了したため、リングサイドでファンとの記念撮影に応じていたリーは、リングに上がって改めてインタビューを受けた。

 リーは年内にWBAかIBOの世界タイトルを目指すと報じられている。

(C)Sean Michael Ham/Premier Boxing Champions
(C)Sean Michael Ham/Premier Boxing Champions

 リングパフォーマンスと同様に、大学で刑事司法を学んでおり、文武両道を己に課している点もリーの魅力だ。

 試合後の通路で、彼にICレコーダーを向けてみた。

ーーーー大学生でもあるとのことですが、どちらの学校に通っているのですか?

 「カリフォルニア州立大学サンベルナディーノ校です」

ーーーー世界王座を目指すと同時に、学業の重要性を感じているのですね?

 「はい。その通りです。疎かにするつもりはありません」

ーーーーハーバード大からNBA選手になった……と言いかけると、

 「ジェレミー・リンですよね! そうそう!! 僕もアジア系アメリカンとして、彼のような存在になりたいと常々思っています」

 と笑顔で語った。

(C)Sean Michael Ham/Premier Boxing Champions
(C)Sean Michael Ham/Premier Boxing Champions

 1999年4月25日生まれのリーがボクシングジムに通い始めたのは5歳の頃。アマチュア戦績は、181勝9敗。3度、全米王者となった。

 韓国人の父とメキシコ人の母、9つ上の兄という環境で育った。英語とスペイン語は話せるが、韓国語は数えるほどの単語しか知らない。ただ、韓国の文化には興味を持ち、自身のルーツにも誇りを感じている。好きな食べ物はプルコギ。

ジェレミー・リン
ジェレミー・リン写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 沈静化した感はあるものの、コロナ禍におけるアメリカ社会においてアジア系は差別のターゲットとされた。リーがロールモデルとするジェレミー・リンも然りである。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210302-00224856

 マイノリティーの家庭では「学こそが自分を守る武器となる」と叩き込むのが一般的だ。リーはコミュニティーカレッジ(短大)で芸術を学んだ後に4年制大学に編入した経緯がある。"学ぶ"ことに対して貪欲なのだ。

 ブランドン・リーが、リング内外でいかなる戦いを見せていくかに、興味津々だ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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