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21回目のKO勝ちで戦績を24戦全勝とした元WBCスーパーミドル級王者だが…

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 現地時間の3月13日に「WBCスーパーミドル級タイトル挑戦者決定戦」として催されたデビッド・ベナビデスvs.ロナルド・エリス戦は、第11ラウンド2分3秒、TKO勝ちでベナビデスが勝者となった。

 元同タイトル保持者のベナビデスは、2019年9月28日にアンソニー・ディレルを9回KOで下してWBCスーパーミドル級タイトルを獲得した。

 が、2020年8月15日に組まれた初防衛戦で体重オーバーという失態を演じ、ベルトを手放す。現在24歳のベナビデスは、このファイトをクリアすればIBF王者との統一戦が描かれつつあった。

 コロナ禍でトレーニングがままならない状態に置かれたとはいえ、自身の手でビッグマッチへの道を閉ざしてしまったのだ。

 それでもSHOWTIMEはベナビデスを見捨てずに出直しの機会を与え、同ファイトを放送した。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 ベナビデスのハンドスピードは目を見張るものがあった。かつ、一発の威力もある。今回は167.2パウンドで、問題なく計量をパス。もう少し自分に強い男であれば、より大きなステージに立てている選手ではなかったか。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 SHOWTIMEも復帰戦ということで、18勝(12KO)1敗2分けという安牌な相手を見付けた。両者の実力差は歴然としていた。ベナビデスは532のハードパンチを放ち、その54%にあたる289発をヒット。10ラウンドまでの採点は98-92、99-91、98-92とワンサイドで元チャンピオンがリードしていた。

 しかし、このレベルの相手なら、もっと早く仕留めねばならない。でなければ、統一戦で勝つのは難しい。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 試合後、ベナビデスは言った。

 「今日の自分のパフォーマンスは良かったんじゃないかな。でも、もっといい試合が出来たように思う。エリスはタフだった…。見る人が楽しんでくれたことを願う。

 多くのコンビネーションを放った。何度もエリスが試合を投げるんじゃないかと感じたけれど、持ち堪えたよね。もっと早くストップ出来た筈だけど…あの精神力には脱帽だよ」

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 元チャンピオンは今後についても触れた。

 「ジャーモール・チャーロ(WBCミドル級王者)、カネロ(WBA/WBCスーパーミドル級王者)、カレブ・プラント(IBFスーパーミドル級王者)など、名前のある選手全員とやりたい。彼らに勝つ自信はある。ファンもそれを望んでいるだろう」

 コロナ禍で沈む今日、BIGマッチはSHOWTIMEも望むところだ。が、この日のベナビデスでは、自身が対戦を希望する3名から白星を挙げるのは難しいと感じざるを得ない。

唯一無二のチャンピオンだったマーベラス・マービン・ハグラー
唯一無二のチャンピオンだったマーベラス・マービン・ハグラー写真:ロイター/アフロ

 一昨日の原稿でも触れたが、デビッド・ベナビデスvs.ロナルド・エリス戦が行われた日、元統一ミドル級チャンピオンのマーベラス・マービン・ハグラーが亡くなった。SHOWTIMEも追悼のテンカウントを鳴らした。

 ハグラーは体重超過でベルトを失うような類の男ではない。ベナビデスが対戦を希望する3名とハグラーでも、存在の大きさはまるで比較にならない。ハグラーは「ボクシングはアートだ」と語ったが、その闘いぶりはまさしく芸術だった。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210315-00227409/

 試合後、SHOWTIMEにマイクを向けられたベナビデスは「一度だけ、マービン・ハグラーと会ったことがある。とても哀しい。本当にLegendだったよね」と話したが、少しでも伝説に近付けるよう、己を磨くべきだ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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