残り時間31.4秒で逆転勝ちしたブルックリン・ネッツ ~背番号13の継承~
ジェームズ・ハーデンが放った3ポイントシュートが決まり、スコアは126 - 124となった。試合の残り時間が31.4秒となって初めて、ブルックリン・ネッツは優位に立った。
2月16日、フィニックス、アリゾナ。ケビン・デュラント、カイリー・アービングをケガで欠くネッツは、TipOff直後から劣勢に立たされた。対戦相手のフィニックス・サンズは、ネッツの監督であるスティーブ・ナッシュが現役時代を過ごしたチームである。
客席には「Welcome Back Steve Nash」と書かれたボードが見えた。
ナッシュは18シーズンNBAでプレーし、サンズに在籍していた2005年、2006年と連続でMVPに選出されている。ポジションはポイントガード。2005年から3季連続、更に2010、2011年と5度アシスト王にも輝き、オールスターには8度出場した。
ナッシュが引退をアナウンスしたのは、2015年の3月。その直前、クリーブランド・キャバリアーズは、カイリー・アービングのバックアップとしてプレーしないか? と彼にオファーを出した。
今季より監督となり、そのアービングやデュラント、そしてハーデンを指導しているのだから、時の流れを感じる。
人格者として知られるナッシュだが、NCAA等での監督やアシスタントコーチを経ず、いきなりNBAの監督となった点を疑問視する声も少なくなかった。
だが、蓋を開けてみれば17勝12敗と、上位を争いながら首位であるフィラデルフィア・セブンティシクサーズを追っている。それでも、昨日のゲームでは、チームの顔であるデュラントが左腿裏、アービングは背中の痛みでベンチにも入っていない状況に立たされた。
サンズのポイントガード、クリス・ポールは好調で、29得点7アシスト。ここぞという場面で3ポイントを決め、ゲームの流れはサンズが掴んでいた。
4Q開始時点で88-100と劣勢に立たされていたネッツだが、試合終了の5分33秒前にハーデンがコートに戻ると、猛攻を見せる。ハーデンは、かつてのチームメイトであるポールの動きを観察したうえで、ギアを入れたかのようにも見えた。
そして終了間際に逆転し、さらにハーデンが2本のフリースローで加点。結局、128-124で西地区5位を下し、東地区2位の座につけている。この夜のハーデンは、38得点11アシストと大車輪の活躍であった。
試合後、ナッシュは言った。
「チーム全体がいい。選手たちは非常に気持ちの入ったプレーをした。主力の二人はベンチ外だったが、各々がハートを見せたね。
フィニックスが私にとって大きな意味を持っているのは当然だ。言葉に出来ないほど、素敵な時間を過ごせた。チームメイト、コーチ、組織と、全てがこの上ないものだった。加えてファンも素晴らしかった。ここに住んでいた10年間の毎分毎分、私は心から愛情を感じていたよ」
シーズン途中からハーデンがネッツに移籍したことで、戦力は格段にアップした。とはいえ、16日のサンズ戦はナッシュの采配を強烈に印象付けるゲームであった。そのキープレーヤーが、現役時代のナッシュと同じ背番号13だというのも、偶然ではないように感じる。
ナッシュに「名選手名監督にあらず」という言葉は当て嵌まらないか。