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1ラウンドでノーコンテストとなったIBOウエルター級タイトルマッチ

林壮一ノンフィクションライター
Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME

 ペンシルバニア州フィラデルフィア出身のサウスポー、ジャローン・エニス(23)。アマチュア時代の戦績は、2015年ナショナルゴールデングローブ王者を含め、23勝3敗。

 2016年4月30日にプロデビューし、26戦全勝24KOと順調に白星を重ねて来た。IBOというマイナータイトルながら、自身初となるベルトを得て、一気に上を目指す未来図を描いていた。

Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME

 エニスは、試合開始のゴングから、積極的に手を出す。南アフリカ出身の対戦相手、クリス・ヴァン・ハーデンも28勝(12KO)2敗1分けと侮れない選手だったが、エニスの勢いは止められそうもなかった。

Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME

 小気味良いフットワークを活かしたジャブと連打で、エニスがペースを握っていたように見えたファーストラウンド2分39秒、両者は激しく頭をぶつけ合い、試合が中断する。

Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME

 ハーデンの額からは鮮血が流れ落ち、ダメージを考慮したドクターが続行不可能と

判断。同ファイトはノーコンテストとなった。

 エニスは57発の手数を出し、22打をヒット。そのうちの19発が強打であった。KOを狙ってエンジンが掛かり始めていた矢先のアクシデントだけに、失望は大きかったようだ。

Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo: Amanda Westcott/SHOWTIME

 試合後、エニスは言った。

 「頭が当たる前から、ヤツはダメージを負っていた。リングを支配していたのが誰であるかは、見ての通りさ。簡単な相手だった。

 俺はもっともっと成長する。直ぐにでもジムに戻って、トレーニングするよ。誰とでも戦う。ビッグネームとのファイトを希望する」

1971年3月8日、モハメド・アリに初めて土をつけたジョー・フレジャー
1971年3月8日、モハメド・アリに初めて土をつけたジョー・フレジャー写真:ロイター/アフロ

 強気のエニスが、フィラデルフィア出身である点に興味を覚える。フィラデルフィアは、ジョー・フレジャーが過ごし、ティム・ウィザスプーン、メルドリック・テーラー、バーナード・ホプキンスらの世界チャンプが誕生した地である。

 そんな場所でボクシンググローブを握ったエニスが、どのようなキャリアを積んでいくか。フィリーに新たな歴史を刻めるかが嘱目される。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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