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NBAの元スター選手がボクシングデビュー!?

林壮一ノンフィクションライター
垂直飛び90.2cmのバネを武器に、スラムダンクコンテストで3度王者になった(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2005年のNBAドラフト、21位でフィニックス・サンズに指名され、直ぐにニューヨーク・ニックスにトレードされたネイト・ロビンソン。

 175センチと小柄ながら、垂直跳び90.2センチのバネを活かし、ニックスで5季プレー。その後、ボストン・セルティックス、オクラホマシティ・サンダー、ゴールデンステイト・ウォリアーズ、シカゴ・ブルズ、デンバー・ナゲッツ、ロスアンジェルス・クリッパーズ、ニューオーリンズ・ペリカンズと渡り歩いた彼は、2015年を最後にNBAから姿を消した。

 2006年、2009年、2010年には2メートル超えの選手たちを抑え、スラムダンクコンテストでチャンピオンとなっている。そのロビンソンも36歳。ここ数年は、イスラエル、ベネズエラ、レバノンなどのリーグでプレーしていた。

 ロビンソンは今、バスケットボールコートではなく、週に6回ボクシングジムに通う。しかも1日に2度のジムワークと、早朝6~7マイルのロードワークで激しく自分を追い込んでいる。8月末日から、ずっとこのメニューをこなしているのだ。

 

 高校時代、アメリカン・フットボール、陸上、そしてバスケットボールの選手だったロビンソンは、フットボール推薦でワシントン大に入学する。だが、2年生からバスケットボールに専念し、脚光を浴びた。

 抜群の身体能力は示してきたが、ボクシングの経験は全く無い。

 ロビンソンは語る。

 「今の俺は獣のようだ。これまでの人生で味わったことの無い日々を送っている。36歳になったが、自分の若さとエネルギーを感じているよ。今までの俺にはなかった感性を養っているところだ」

 ロビンソンのファイトが11月28日、マイク・タイソンvs.ロイ・ジョーンズ・ジュニアのエキシビションマッチの前座として組まれた。対戦相手は、ボクシングで1試合経験のある YouTuberのジェイク・ポール。クルーザー級6回戦として予定されている。

 

TRILLER社が作成した、Tyson vs. Jones戦のポスター
TRILLER社が作成した、Tyson vs. Jones戦のポスター

 「ボクシングに真剣に向かっている。見る人を驚かせたい。多くの人が、俺が負けるだろうと思っている。そんな状況が心地いい。

 俺がNBAに行けると思わない人間が多かった。『あんなチビがNBAの試合で40得点など出来っこない』とも言われた。ダンクコンテストで優勝するなんて、誰も予想していなかった。でも、それらをことごとく覆して来たんだ。今回も、そうしてみせる!

 目の前の課題は、リングで息が上がった時の呼吸法。パンチをもらった時、口をどう動かすべきかを覚えろってことだけど、未経験だから、学ぶことが楽しいよ」

 初めてのスパーリング以降、ロビンソンの目付きは変わったそうだ。ジムでしこたま打たれるロビンソンを見た男たちは、「これで止めるだろうな」と囁き合った。しかしロビンソンは翌日、覚悟を決めた表情でジムにやって来た。溌溂とした足取りだった。

 トップアスリートだったロビンソンは、ボクシングのトレーナーだけでなく、コンディショニングコーチも雇っている。そのクリス・デニーナは言う。

 「ネイトは超一流のアスリートですから、コンディションの築き方、目標への向かい方を理解しています。ただ単にキツい要求をするのではなく、彼を励まし、いい形で仕上がるよう、常にポジティブにサポートしています」

 2015年にペリカンズを解雇されたロビンソンは、映画『アンクル・ドリュー』に出演し、新たな才能を見せたが、ボクシングはどうなるか? https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20181101-00102172/

 タイソンvs.ジョーンズは、前座も目が離せない!?

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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