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NBAファン必見! カイリー・アービングの名演技

林壮一ノンフィクションライター
映画でKyrie Irvingのファンになった方も今季のセルティックスに注目だ!(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ボストン・セルティックスのポイントガード、カイリー・アービング。

 2012年NBAルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞。2016年にはNBAチャンピオンに輝く。5度のオールスター出場。2014年はオールスターでMVPを獲得。アメリカ代表選手としても、リオ五輪と2014年のワールドカップで金メダリストとなっている。

 名門セルティックスの背番号11は、26歳ながら2千万ドル強の年棒を保障されるTOP選手だ。

 そのアービングに、これほどの演技力が備わっているとは驚いた。

 Motion Picture Artwork  2018 Summit Entertainment  LLC. All Rights Reserved.
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 11月9日より全国公開される映画『アンクル・ドリュー』で、アービングは主役を演じている。特殊メイクで白髪の老人となり、老いながらもバスケの達人であるアンクル・ドリューを熱演。お爺さんらしい話し方に、思わず微笑んでしまう。

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 シャキール・オニール、レジー・ミラー、ネイト・ロビンソン、クリス・ウェバー、リサ・レスリーらの名選手も脇を固める。元々芸達者であるシャックも、頑固爺を好演し、相当笑える。

 シャックがキャブスに在籍していた時代、私は控室で彼をインタビューしたことがある。スクリーンを見ながら、「こんばんは」と日本語を口にし、ニヤリとした表情が瞼に蘇って来た。

 

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 ストーリーは奇想天外だが、実にアメリカ的な映画であり、とにかくバスケ好きにはたまらない。何と言っても、アービングのストリートプレイ=数々の技を目にすることができる。この映画でアンクル・ドリューに興味を持った方は、是非、セルティックスのゲームも目にして頂きたい。

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 米国には街のいたるところにフープがある。アメフトやベースボールはヘルメット等に金が掛かるため、少年少女がまず始めるスポーツがバスケだ。5ドルで安いボールが買える。一人で練習する場所も簡単に見付かる。公園のフープでシュート練習をしていれば、どこからともなく仲間やおじさんが現れて、基礎を教えてくれる。One on Oneも心ゆくまでできる。

 PLAYOFF中に出張で飛行機に乗った際、客室乗務員がハンドライティングで紙にスコアを書き、機内の端から端まで歩いて試合結果を伝えてくれたことがあった。いかにバスケが社会に根付いているかを理解したものだ。実際、NBAはどれだけ見ていても飽きない。まさに芸術である。そこに挑んでいる渡辺雄太もまた、清々しい。

 そんなバスケ愛に満ちた国で創られた痛快コメディが、この『アンクル・ドリュー』だ。NBAファン、バスケファンなら必見! この競技の魅力、そして温かさが詰まっている。

Motion Picture Artwork  2018 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
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 しかし…楽しく鑑賞しながらも、私は思った。

 哀しいかな、インターハイやウィンターカップ程度の小さな勝利を追い求め、選手を自殺に追い込むような日本の監督には、この映画の良さは理解できないであろうと。こういう輩にはバスケの本当の魅力や渡辺雄太の価値など、生涯分からないだろうと。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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