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10/31 1つの試合に2階級のタイトルが懸けられる世界戦

林壮一ノンフィクションライター
WBAライト級王者のデービスは23戦全勝22KOのサウスポー(写真:ロイター/アフロ)

 ニューヨーク、現地時間10月2日に、SHOWTIME Sports、メイウェザー・プロモーション、TGBプロモーション等によって発表されたジャーボンテイ・デービスvs.レオ・サンタ・クルス戦は、今月31日にテキサス州サンアントニオのアラモドームでの開催が決まった。

 新型コロナウイルスの影響で無観客試合が続いていたが、3月以降、ボクシングのビッグマッチでは初めて客を入れての興行となる。チケットは、テキサス州現地時間5日午前10時より発売される。

 実現が喜ばしい一戦だが、デービスの持つWBAライト級とサンタ・クルスが保持するWBAスーパーフェザー級、異なった2つの階級のベルトが懸けられる点が解せない。

 1988年11月7日、シュガー・レイ・レナードがドニー・ラロンデを9回TKOで下した一戦も、ラロンデのWBCライトヘビー級タイトル防衛戦だけでなく、WBCスーパーミドル級王座決定戦として認められた。レナードは傑出した選手であったが、複数階級制覇の記録を樹立させるべく政治力を後ろ盾としており、同ファイトは物議を醸した。

 デービスは言う。

 「世界中に向けて自分のファイトを見せるいい機会。とても楽しみだ。まだ2週間くらいだが、キャンプで物凄くハードなトレーニングを重ねている。最高のコンディションに仕上げるよ。

 自分のファイトがPPVで放送されるのは、ボクシングを始めた頃からの夢だった。世界王者であるレオ・サンタ・クルスと複数階級のタイトルを懸けて戦うんだから、これ以上ないパフォーマンスを見せる!」

 一方のサンタ・クルスも語った。

 「10月31日は、自分のキャリアにとって最大の試合になります。デービスはタフなファイター。おそらく今までの相手の中で一番タフじゃないかな。2つのタイトルがかかっているし、自分の試合がPPVで流れるのも初めてです。いい試合をしないとね。

 デービスはパワーがありますが、僕の経験とボクシングIQが上回るでしょう。彼は序盤から攻撃的に向かってくるでしょうね。それは十分予想しています。勝つのは僕です」

 この試合のプロモーターの一人であるフロイド・メイウェザー・ジュニアが2014年9月13日にマルコス・マイダナとのリターンマッチを行った際も、WBA/WBCウェルター級と、WBCスーパーウェルター級のタイトルマッチとして成立した。

 ジャーボンテイ・デービスと契約するメイウェザー・ジュニアは、次のようにコメントした。

 「(コロナで)ボクシングイベントから離れていたファンが、心から喜ぶ素晴らしいファイトになるだろう。自分はデービスのトレーニングを間近で見て、手助けもしているが、彼の才能は特別なものだよ」

 そのデービスだが、2017年8月26日にスーパーフェザー級の体を作れず、体重オーバーでIBFタイトルを失ったのではなかったか。今更130パウンドのタイトルを懸ける必要はないだろう。

 IBF、WBAのスーパーフェザー、WBAライトとこれまでに3本のベルトを巻き、23戦全勝22KOを誇るデービスと、37勝(19KO)1敗1分けの戦績で、IBFバンタム、WBCスーパーバンタム、WBAフェザー、WBAスーパーフェザーと4階級を制し、5階級目を狙うサンタ・クルスとの試合は、確かに注目を集める。

 だからこそ妙な売り方はせず、興行も真っ向勝負が相応しい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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