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アルゼンチン人コーチが語る「U23アジア選手権を振り返って」

林壮一ノンフィクションライター
10番として期待された海外組の食野亮太郎だったが…(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、京都サンガから栃木SCへの移籍が決まったエスクデロ競飛王。自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 最近、川越市のフットサル場で自身のスクールを始めた彼が、アジアでさえ勝てないU23日本代表について語った。

撮影:著者
撮影:著者

 サウジアラビア戦、シリア戦と比較したら、カタール戦の日本代表は戦う姿勢を見せましたね。激しいプレーは出来ていました。2敗する前から、ああいう闘志が欲しかったですね。

 とは言え……総じて日本は、いいサッカーをしていませんでした。サイドを抉る攻撃も狙ってはいましたが、効果的ではなかった。全てが中途半端ですね。レッドカードもPKも、可哀想な部分は確かにありましたが、カタールも今回はあんまり強くなかったのに、それを超越する代表チームではなかったです。

 結局のところ、「冨安健洋、堂安律、久保建英らを呼ばないと、箸にも棒にも掛からない」ということを突き付けられただけの大会でした。ただ、僕はヨーロッパ組が加わっても、こんな状態ではメダルを獲るのは難しいと思いますよ。

 今回、ヨーロッパ組として、スコットランドでプレーする食野亮太郎が10番を付けていましたね。森保監督は彼に期待して、3試合に先発させたんでしょう。でも、僕が見る限り、食野は普通以下の選手です。日本のメディアは彼を「浪速のメッシ」と紹介していましたが、どうすればそんな表現が出来るのでしょうか? 食野はボールを貰って3人4人抜ける選手ですか? ゴールできますか? アシストできますか? キープできますか? 

 「日本のメッシ」とか「浪速のメッシ」なんていうニックネームを無責任に付けると、選手にとってはプレッシャーになります。あのレベルの選手をそんな風に扱ったら、可哀想ですよ。

 東京五輪まで時間がありません。U23代表は、このメンバーでは絶対に勝てないと学んだ訳ですから、オーバーエイジも含めて、どうしたら一つでも勝てるかを考えたメンバー選考をしてほしいです。せっかくの開催国なんですから、国民を熱くさせる試合を見せてもらいたいですね。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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