Yahoo!ニュース

アルゼンチン人コーチが語る「南米王者リバー・プレートは、今回、レアル・マドリードに勝てる!」

林壮一ノンフィクションライター
リベルタドーレス杯、4度目のVを飾ったリバー・プレート(写真:ロイター/アフロ)

 ようやく南米王者が決まった。リベルタドーレス杯決勝で、アルゼンチンの2大チーム、リバー・プレートとボカ・ジュニアーズが相まみえるのは初めてのことだった。第1戦を2-2のドローで終えた両軍は、スペインで2戦目を戦い、3-1でリバー・プレートが勝利した。

 記念すべき決勝であったが、一部のリバー・プレートファンによってスーペルクラシコは汚されてしまった。元アルゼンチンユース代表、ビーチサッカーアルゼンチン代表で、現在は埼玉県に発足したクラブチームFC Futureで指揮を執っているセルヒオ・エスクデロが、今回のリベルタドーレス杯決勝を振り返った。

写真:著者撮影
写真:著者撮影

 12月9日にレアル・マドリードのホームスタジアム、サンティアゴ・ベルナベウで行われたリベルタドーレス杯決勝第2戦は、気持ちのこもった素晴らしいゲームでした。至る所で、ファイトが見られましたね。

 明暗を分けたのは、ボランチでした。ボカ・ジュニアーズのキャプテン、パブロ・ペレスは、先日リバー・プレートのファンがボカのバスを襲撃した際にガラスの破片が目に入り、視力が40%も低下してしまったのです。加えて右足太ももの肉離れで、自らベンチに交代を要請し、ピッチを去りました。

 ペレスはボカの精神的な支えであり、替えのきかない選手です。監督は、どうしても彼をピッチに残したかった。でも、ケガが酷かったんですね。また、もう一人のボランチ、ウィルマル・バリオスが2枚目のイエローカードで退場となり、ボカは10人となってしまいました。更には、後半終了間際に投入されたMF、フェルナンド・ガゴも右足のアキレス腱を断裂し、延長後半にピッチを離れざるを得なくなってしまった。

 今回のボカは、ケガ人が続出したことが敗因でしょう。それプラス、ボカの監督の采配で気になったのが、先発で起用されて先制点を挙げたダリオ・ベネデットを下げ、ラモン・アビラを投入した点です。2人とも生粋のストライカーで、いい選手であることは間違いない。昔、アルゼンチン代表はバティストゥータを先発で出し、疲れて来たところでクレスポを投入する策をよくとっていましたが、それと良く似ていました。

 とは言え、バティストゥータとクレスポは共存できないタイプ同士ですが、ベネデットとアビラは2トップとして同時にピッチに立たせてもいい仕事が出来るんです。2人の連携プレーの方が効果的だったように思います。もちろん、監督には監督の考えがあるのですが…。

 リーベルは深刻なケガを抱えた選手もなく、万全の状態で決勝第2戦を迎えることができました。一部の狂ったファンが、ボカのバスを襲撃したことで、ホームで戦えなくなりましたが、決勝第1戦において、敵地であるボカのスタジアム、ラ・ボンボネーラで引き分けたことが大きかったですね。それも先制されて追いつき、リードされて追いつくという粘り強さが良かったです。チーム全体が精神的にタフになっていましたね。

 そして、109分にミドルシュートで決勝点を挙げたリーベルの背番号8、フアン・キンテロ。彼は守備に強いボランチなのですが、ミドルシュートの練習をかなり積んでいました。毎日の積み重ねが、あのゴールに結びついたんですね。

 パブロ・ペレスがベンチに下がる際、悔しさのあまり、キャプテンマークをピッチに投げつけていましたが、ゴールしたキンテロのガッツポーズとは対照的でした。ペレスも一流選手ですが、今回は運が無かったですね。

 アルゼンチンで成功する選手は、貧しい家庭の出が多いです。10代でプロになり、名前を売ってヨーロッパで稼ぎたいと皆が望んでいます。今回のクラブW杯でヨーロッパ王者として出場するのはレアル・マドリードですが、ジダン監督もクリスティアーノ・ロナウドもいなくなって、以前ほどの怖さはありません。今、チーム状態は決して良くない。

 リーベルの若さが、レアル・マドリードを超えたパフォーマンスを見せる可能性は大でしょう。期待したいと思います。僕はリーベルは勝てると思っています。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事