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見逃すな!『ロッキー』シリーズの続編『クリード 炎の宿敵』

林壮一ノンフィクションライター
老いたロッキー・バルボアも味がある(写真:Shutterstock/アフロ)

 映画『ロッキー』シリーズの続編、『クリード 炎の宿敵』が1月11日に公開される。

 老いたロッキー・バルボアが、ライバルだったアポロ・クリードの息子のセコンドに付くストーリーが前回。続編である今作は、アポロの息子とイワン・ドラゴの息子が世界ヘビー級タイトルマッチを懸けて戦う内容だ。

 『ロッキー4』で拳を交えたロッキー役のシルベスター・スタローンと、ドラゴを演じたドルフ・ラングレンは、今やそれぞれが72歳と61歳の老人だ。共にセコンドとして現役ファイターを支える。

 『ロッキー』シリーズは荒唐無稽だと非難される部分もあるが、本作は、敗北を喫したボクサーの悲哀、ボクシングでしか生きられない男の侘しさ、そして、リングで金を稼げるのは僅かな成功者のみといったリアリズムも描かれている。そして何より、家族愛をテーマとした点がいい。

 

 前作『クリード チャンプを継ぐ男』でメガホンをとったライアン・クーグラー監督は今回、スケジュールの都合で続投できなかった。クーグラーは、デビュー作『フルートベール駅で』で、その才能を絶賛された男である。この作品は、オークランドのフルートベール駅で、白人警官に射殺された黒人青年の実話を映画化したものだ。主人公に抜擢されたのは、マイケル・B・ジョーダン。このコンビが『クリード』を生み出すことになった。

 アドニス・クリード役のジョーダンを、肉体派俳優と感じる方も多いだろうが、『フルートベール駅で』においては、社会の底辺で蠢く黒い肌の足掻きを見事に演じていた。

 クーグラー監督は『フルートベール駅で』の日本上映記念で来日した際、「今後も社会に対して、反差別・偏見のメッセージを伝えていく」と語っていた。『ロッキー』を題材に、どのように問題提起をするのかと期待していたので、今回の監督交代は残念に思った。

 とはいえ『クリード 炎の宿敵』は、ロッキーファンにはたまらない内容であるし、監督を務めたスティーブン・ケイプル・ジュニアにも興味を覚えた。

 一度でもロッキーに胸を熱くさせたことのある人なら、必見の映画である。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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