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パレスチナとウクライナ~ダブルスタンダードで分断される日本と世界

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
画像右がパレスチナ自治区ガザ、左はウクライナ 筆者撮影

 イスラエル軍による、パレスチナ自治区ガザへの攻撃は、なおも続いており、犠牲者数は増える一方。また、ロシアによるウクライナ侵攻も2年目を迎えようとしている。この二つの大きな危機を語る上で、キーワードになるのが、「ダブルスタンダード」(二重基準)だ。ロシアによる侵略に抵抗するウクライナを支持し支援する欧米は、一方でガザを抑圧し続け、昨年10月以降、大量虐殺とも言えるような無差別攻撃を行っているイスラエルを支持している。他方、ロシアは自国の侵略を棚に上げながら、イスラエル寄りの欧米を批判する。普遍的な人権や「法の支配」というものではなく、各国が単純に好き嫌い、己の利害で動いていることは、パレスチナやウクライナの市民にとっては勿論のこと、国際秩序にとっても極めて深刻な事態だと言える。そこで、本稿では、昨年11月に行われたイベントでの、パレスチナとウクライナの両方を取材した筆者が「ダブルスタンダードで分断される世界」をテーマに語った内容を紹介する。以下、上述のイベントからの筆者の発言の抜粋。

〇パレスチナとウクライナを取材した立場から

 こんにちは、ジャーナリスト志葉と申します。えっと今まで結構私の講演とか来られた方もいらっしゃるのかなとか思ったりもするんですけども、簡単に自己紹介しますと私は2002 年からこの仕事やっておりまして、 2003年にイラク戦争が始まってすぐにですね、開戦2日目にイラク現地に入って あのバグダッドで取材を始めたっていうのが自分のキャリアの始まりみたいなとこなんですね。で、まあイラクには10回ぐらい行ってますし、パレスチナも同じくらい行ってるのかな?で、ガザに 入ったのは6回くらい。ウクライナもまだ2回しか行ってませんけど、一応取材はしているというような感じです まあ、その経験から言えば、ダブルスタンダードって、ものすごい変なことのように映るんですよね。

 ウクライナもガザも、どっちも悲惨な戦争で、人々が苦しんでるのに、なんで正反対の対応をするのかっていうことですよね。例えば、日本の人々なんかは割と比較的ガザの状況に対して同情的じゃないですか。ま、中にはイスラエル支持の人もいますけど。ただ、ウクライナに関しては、結構なんか微妙な反応の人も多い。もちろん、日本でも「ウクライナのからロシア軍は撤退しろ」って呼びかけてる人もいますけど。いますけどやっぱりガザに比べると熱意の量が全然違うじゃないですか。逆に欧米なんかはウクライナに同情的で、ウクライナ支援とかやってるわけじゃないですか、軍事も含めて。それに対してガザでの攻撃に対しては、なんとイスラエルを支持しますみたいなこと言っちゃって。

 ドイツのショルツ首相は「イスラエル軍は国際人道法に則って戦争してるみたいなこと言って。「はあ?お前の目は節穴か」って問いただしたくなるような、酷いこと言っちゃってるわけですよね。米国のバイデン大統領も、苦虫を噛み潰したような顔で「いや、病院に攻撃してるのは本当は結構まずいんだけど」とイスラエルに対し困っている様な顔を一応、しているわけですね。一応。それなのに、ショルツ首相は、もうドヤ顔でイスラエル全肯定ですよ。無茶苦茶ですよね。

 はい、だからダブルスタンダードは日本だけの問題じゃないんですよ。私、日本のリベラル/左派知識人によく喧嘩売って、あのそれで結構嫌われ てるんですけども、私自身も リベラルなんですけどもね。でもこれ、日本だけの傾向じゃなくてその世界中でリベラル/左派のねじれみたいなのがやっぱりあるんですよね。じゃあ、どうやって、ねじれを乗り越えていくべきなのか、何よりもガザで起きている悲惨な状況、そしてウクライナの状況というものを、少しでもマシなものにしていくか。今日はそれを話していきたいと思います。


〇パレスチナには同情的、ウクライナには冷たい日本のリベラル(の一部) 

 はい、じゃあ、懲りずに話の、しょっぱなから「喧嘩」を売りましょうかね。これはですね、私がちょっと前に書いた記事なんですけど、"ウクライナ報道にみる「朝日新聞」の迷走"という記事です。朝日新聞の現地で取材してる記者さんは、めちゃめちゃ頑張ってんですよ。それはね、私、評価してるんですけど、その日本でなんかウクライナ行ったこともないくせになんかウクライナのことを語いたがる記者さん達もいまして。大体どういうことを言うかっていうと、ウクライナは非武装無抵抗をやったらいいんじゃないかだとか、国民を戦わせるとは何事だみたいな感じで、ロシアのプーチン大統領を批判するより、ウクライナのゼレンスキー大統領を批判することに、お熱が上がってるっていうようなところがあって。なんじゃそりゃと思ったのが、この記事を書くきっかけでした。

 で、いわゆる日本のリベラル知識人達が言ってることを色々、あの分析したんですよ。すごく「あるある」なのは、 徹底抗戦だって言ってるゼレンスキー政権を、太平洋戦争で「一億玉砕」だとか言ってた、かつての日本に重ね合わせ てるという部分がやっぱり傾向として、すごくある。だから、ゼレンスキー政権がそのロシアに徹底交戦してるっていうのに対して批判的であると。でも、ちょっと待ってよと思うのは、日本は侵略した側です。そしてウクライナは侵略された側。そもそも同列に話すこと自体がおかしいんですよ。

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フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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