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無限に原発を稼働させ続ける?!「未来の世代への暴力」と福島第一原発事故被害者がGX法を非難

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
GX関連法への抗議行動 今月23日、筆者撮影

 「GX脱炭素電源法案」(原子力基本法、原子炉等規制法、電気事業法、再処理法、再エネ特措法の改正案5つを束ねたもの)が、本日中にも参院の本会議で採決されようとしている。GXとは、「グリーントランスフォーメーション」、つまり、化石燃料中心の経済・社会をグリーン=より環境負荷の少ないエネルギーを中心とした経済・社会へと移行するための変革を意味するのであるが、GX脱炭素電源法案は、むしろ原発の延命法案としての要素が強い。複数の環境保護団体による「ワタシのミライ」(「再エネ100%と公正な社会を目指す私の未来」)は、GX脱炭素電源法案に反対する集会を行った。

〇無限に原発を運転し続ける?

 GX脱炭素電源法案に反対する集会は先週23日に、衆議院第一議員会館で行われ、会場に約100人、オンラインで150人が参加した。この集会で、環境NGO「FoE Japan」の満田夏花さんは、GX脱炭素電源法案の最大の問題点として、老朽原発の稼働期間の延長に関する改悪をあげた。「びっくりしたのは、今までは 原則40年1回に限り原子力規制委員会の認可を受けた原発を、1回に限り20年、運転期間を延長できるという規定だったのを、今回、その『1回に限り』という部分が落ちてしまっていることです。つまり現実的に可能かどうか置いといてやろうと思えば何回も申請できてしまうのです」(満田さん)。

満田さん 筆者撮影
満田さん 筆者撮影

 老朽原発を運転し続けることは、それだけ事故リスクが増大するということだ。しかも、これまで運転期間の延長は原子力規制庁が認可することになっていたが、今回の法案では、経産省が行うように変えるのだという。経産省は原発推進であり、運転延長の歯止めがなくなると懸念されているのだ。

〇「これは未来の世代への暴力」

 集会には、2011年の福島第一原発事故の被害者である武藤類子さんもオンラインで参加し、発言した。

オンラインで集会に参加、発言する武藤さん 筆者撮影
オンラインで集会に参加、発言する武藤さん 筆者撮影

「原発事故が起きて、少なくともこの国は原発を止める方向に行くだろうと思いました。そして国会でも運転期間40年ルールや原発の依存度を減らすことや原発の推進と規制を分けることなどが決められました。事故を起こしてしまったことへの反省から生まれた政策だったはずです。しかし、何故、たった12年でその反省を捨ててしまうのか残念で悔しくてたまりません。12年経った今も事故は収束せずに終わっていません。帰還困難区域が存在し、暮らしを奪われた避難者がその数も正確に把握されないままに数万人はいると言います。被害者が望む事故の賠償はされず、責任は問われないままです。放射性物質は今も広範に残り、人々の復興はまだまだの状態です。それなのに事故の被害はないものとされてしまうのではないかという思いです」

「日本で地震が頻発している今、この法案は次の原発事故を招くことになりかねません。そして、それは若い人、未来の世代に対する無責任と暴力だと感じています」。

〇今後も議論が必要

 FoE Japanは、審議が尽くされていないとして、本日5月31日午前10時から同11時に参議院議員会館前で抗議を行うとのことだ。23日の集会でも語られていたが、「安価な電力を供給する」という原発に対する日本でのイメージは既に世界の状況の変化から取り残された、時代遅れのものとなっている。

原子力資料情報室の松久保肇事務局長による解説 5月23日の集会で筆者撮影
原子力資料情報室の松久保肇事務局長による解説 5月23日の集会で筆者撮影

 そうした斜陽産業である原発業界を救うため、公的資金を投入し、かつ事故リスクを高めるような老朽原発の運転延長を行うことが、果たしてGXなのか。仮にこの法案が成立してしまったとしても、今後も議論が必要だろう。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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