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齋藤法相の無責任、ChatGPTに仕事をさせた方が良い理由―大臣会見での呆れた発言

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
齋藤健法務大臣 筆者撮影

 衆院で可決され、参院へ送付された入管法改定案*。この法案の大きな問題とされる一つとして、難民認定申請者の強制送還を可能とするということがある。日本の難民認定率は諸外国に比べ異常に低く、本来、難民として認定し保護すべき人まで、今回の法案で強制送還されるようになる恐れがあるからだ。筆者は、法務大臣会見に参加。日本の難民認定審査について齋藤健法務大臣に質問したが、その無責任ぶりには呆れてしまった。

〇日本の難民認定おかしくない?

 日本の難民認定率は、近年で1%前後と、他の先進諸国に比べ、文字通り桁違いの低さであり、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)からも「難民認定率の低い国」と名指しされている。とりわけ、トルコ出身の難民認定申請者に対する認定率の低さは異常で、1987年の制度導入以来、たった1人しか認定されておらず、この唯一の事例も、当初、不認定とされた難民申請者が裁判で勝ち取ったものだ。こうした問題は、国会でも度々問題となっているが、出入国在留管理庁(入管)は、「我が国の難民認定をめぐっては、多くの難民が発生する地域と近接しているかなど、諸外国とは前提となる事情が異なっている」等として、日本の難民認定率が低いことすら認めようとしていないのである。

〇大臣会見で質問、その回答は?

 筆者は、今月9日の法務大臣会見に参加。齋藤法相とのやり取りは以下のようなものだった。

筆者:

トルコ出身者の難民認定率で日本ほぼゼロ、カナダ9割以上認定と、あきらかにおかしくないかとの議論がある。入管の西山(卓爾)次長は、(国会質疑等で)日本の難民認定率の低さを距離や言葉の問題にしているが、カナダもトルコから遠く、言語も違う。西山次長がまともに答えないので、大臣ご自身のお考えをうかがいたい。

齋藤法相:

難民認定審査については一件一件、審査している。その判断にあたっては3人の参与員も参加していただいている。様々なプロセスをふみながら慎重に判断している。その結果として、数字自体を各国と比較して、日本が大きいとか小さいとかいうのは、必ずしも、難民認定の実態を把握するものではないと思う。ただ、事情が違うということは各国それぞれあろうかと思っている。したがって、その事情の違いが結果として、数字に表れるということは、十分あり得るだろう。

筆者:

お調べにならないのか?入管の難民認定審査はおかしくないかということについて、これだけ色々と言われているわけだから、大臣として調べてみることはないのか?

齋藤法相:

いや、一件一件、きちんとやらせていただいている。

 ご覧の通り、齋藤法相は、筆者の質問に全く答えていない。国会質疑での西山次長の答弁など、日本の難民認定率について、入管は「難民が大量に発生する地域と日本は遠いので、来る難民が少ない」という趣旨の主張をくり返しているが、同じトルコ出身者の難民認定率で日本とカナダ等諸外国との違いが大きい中、上述の様な入管の主張は、ロジックとして成り立たないのではないか、というものが筆者の質問の趣旨だ。齋藤法相は、難民認定審査の制度に話をすり替えているが、これは暗に、これまでの入管の主張が成り立たないことを認めたようなものである。それにもかかわらず、入管の難民認定審査について全肯定し、問い直すこともしない。

〇「きちんとやっている」への疑問

 齋藤法相は、入管の難民認定審査について「一件一件、きちんとやらせていただいている」というが、これも実態とは異なるのではないか。例えば、難民認定申請者に対し、審査官が「貴方の国には大した問題がない」「嘘をつくな」等の暴言を吐いたり、申請用紙を目の前で破り捨てたりするなどの事例が関東弁護士連合会の調査でも報告されている(関連情報)。しかも、他の先進国では、難民認定審査の際の面接で、映像・音声記録を取るが、日本ではそれがないため、入管の難民認定審査が「きちんとやっている」かは、検証しようがないブラックボックスなのだ。 

 また、齋藤法務大臣の発言にある「参与員」とは、難民審査参与員のことで、2005年の法改正時に導入され、法務大臣等は「不服審査に関し公正な判断をすることができる者」として、難民審査参与員の意見を聞かなくてはならないとされている。だが、入管の意向に従い、難民認定申請者に厳しい対応をする難民認定参与員ばかりが重用されているのではないかとの疑惑もある。柳瀬房子・難民審査参与員(「難民を助ける会」名誉会長)は、衆院法務委員会(2021年4月21日)で、

参与員制度が始まったのは2005年からですので、私は既に約17年、参与員の任にあります。その間に担当した案件は2000件以上になりますが、一次審の難民調査官による結論を覆し、難民と認定すべきと判断したのは6件です。

と述べており、その認定率は0.3%。入管問題に詳しい児玉晃一弁護士によれば、これは参与員全体の平均の約半分だという(関連情報)。なお、柳瀬氏は2021年以降も2000件の審査を行ったと受け取れる発言をしているが(関連情報)、他方、認定率7%と比較的高かった阿部浩己明治学院大学教授は朝日新聞のインタビューに対し、「参与員を務めた10年間で、扱った案件は400~500件」だと述べている。また、参与員の中には「2年間で担当したケースが0件」というケースもあるなど、どの参与員に担当させるか、入管の恣意的な判断が働いている疑いがある。

〇齋藤法相の無責任ぶり、AIの方がマシ

 上述の齋藤法相の発言は、入管の難民審査官および難民審査参与員の問題をまるで把握していないかの様なものだ。また、今回の入管法改定案をめぐっては、国連人権理事会の専門家などから、難民認定申請者の送還は国際法違反であり見直す必要があると勧告されている関連情報)。今回の入管法改定案が成立するなら、真の難民である人が「不認定」とされた挙句、迫害の恐れのある母国へと強制送還され、場合によっては命を奪われることすらあり得るのである。人の命がかかっている審査に対し、齋藤法相はあまりに無責任ではないか

 日本の難民認定審査については、お笑い芸人の「せやろがいおじさん」こと榎森耕助さんは「(対話型AIの)ChatGPTに法務大臣になってもらったらいいのでは」と風刺したが、冗談にとどまらず、そちらの方が、齋藤法相よりもマシなのかもしれない。

(了) 

*今回の法案は「改正ではなく、むしろ改悪」との批判も高まっているため、本稿では「入管法改定案」と表記する。

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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