難民であることは罪ですか?森まさこ法相に問う―トランプ政権以下の難民ヘイトの見直しこそ必要

東京入管前で被収容者の難民男性の解放を求める人々 筆者撮影

 今日は国連の定める「世界難民の日」。難民の保護と援助に対する世界的な関心を高め、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)をはじめとする国連機関やNGOによる活動に理解と支援を深める日だ。そんな日だからこそ、日本の法務省及び出入国在留管理庁(入管)の難民に対する差別と迫害は、今、ますます悪化していることを強調したい。

 祖国での迫害を恐れ、帰国できない難民達を、入管がその収容施設に長期拘束(収容)している上、入管職員による虐待やセクハラ等が相次いでいる―こうした状況は、国内外のメディアから批判され続けてきた。だが、法務省は難民達を救済し、収容ありきの政策を見直すどころか、「難民として日本にいる事自体が罪」とも言うべき罰則案を、有識者懇談会「収容・送還に関する専門部会」に今月15日に提言させたのだ。この提言に基づき入管法を「改悪」するのか。森まさこ法務大臣の姿勢が問われる。

◯「難民であることが罪」なのか?条約にも違反

 法務大臣の私的懇談会の一つである「収容・送還に関する専門部会」が今回まとめた提言は、「強制退去違反罪」を新設するべきだとしている。つまり、入管によって「不法滞在」であるとして、退去処分に従わない外国人に刑罰を科すというものだ。だが、入管が「退去を拒んでいる」として、その収容施設に長期収容している外国人の多くが、迫害や紛争から命からがら逃れてきた難民だ。昨年10月1日の法務大臣会見では、入管の収容施設に収容されている被収容者の約7割が、難民認定の申請者、あるいは難民認定申請をしたことがある者だとしている。つまり、今回提言された「強制退去違反罪」は事実上、難民を追い出すためのものだ

 だが、1981年に難民条約に加入した日本は、難民を受け入れ庇護する義務がある。また、難民条約の第31条は、「不法に入国しまたは不法にいることを理由として(難民に対し難民条約加盟国は)刑罰を科してはならない」としている。また、難民条約第33条は「難民をその生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない」としている。つまり、「収容・送還に関する専門部会」が提言した「強制退去違反罪」は、難民条約に反しているのだ

◯トランプ政権の米国以下!日本の難民認定審査

 法務省及び入管側の言い分としては、難民認定申請者のほとんどが「誤用・濫用的に難民認定申請している」というものがある。つまり、「真の難民」ではなく、「偽装難民」であるから、収容したり強制退去させたりしても問題ない、という理屈である。だが、法務省及び入管が、公正かつ適切な難民認定審査をしているとは、到底言い難い。象徴的なのが、トルコ出身のクルド難民の扱いだ。トルコでは、少数民族であるクルド人はその民族としての権利を認められず、苛烈な迫害を受け続けてきた。現在もトルコでは、クルド人へのヘイトクライムが横行している。そのため、多くの先進国でトルコ出身のクルド人が難民として認定され、庇護の対象となる確率は高い。「収容・送還問題を考える弁護士の会」のまとめによれば、クルド人含むトルコ出身の難民認定率は、カナダで約89.4%、トランプ政権下の米国ですら約74.5%、やや低めなフランスで約26.1%という割合だという(いずれも2018年の国連統計)。これに対し、日本では友好国であるトルコに配慮してなのか、1981年に難民条約に加入して以降、トルコ出身のクルド人が難民として認定されたことは、ただの一人もない。 

「収容・送還問題を考える弁護士の会」のまとめ 同会の勉強会で筆者撮影
「収容・送還問題を考える弁護士の会」のまとめ 同会の勉強会で筆者撮影

◯法務省・入管の権限を問い直すことこそ必要

 そもそも、法務省及び入管が収容長期化を問題視するようになったのは、昨年6月に大村入管(長崎県)で、長期収容に抗議してハンガーストライキを行っていたナイジェリア人男性が餓死し、国会やメディアで取り上げられたように、入管施設での人権侵害が次々と明らかになり、批判が高まっているからだろう。昨年11月には、女性収容者の着替えやトイレをビデオカメラで監視していたことが発覚、国会で森法務大臣も追及された。

 さらに今年4月には東京入管で、男性職員含む警備官による女性収容者達への組織的な虐待及びセクハラ事案が発生、有志の国会議員による法務省ヒアリングでの追及が続いている。

 難民認定審査のあり方や、必要性の有無にかかわらず、とにかく収容施設に拘束するという「全件収容主義」の抜本的な見直し、収容中の処遇改善など、法務省及び入管が山積する問題に手をつけないまま、「強制退去違反罪」を新設するというのであれば、日本に逃げてきている難民達をさらに追い詰めるだけだ。今、必要とされているのは、度重なる不祥事にも自浄能力の全くない法務省及び入管が難民認定審査を行う資格があるのか、難民を収容施設に拘束する資格があるのかを問い直すことであろう。

(了)

 

パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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