ViVi・自民党コラボと「老後2000万円」騒動の共通点―大炎上の理由は?

批判が殺到した自民党とのコラボPR ViViのウェブサイトより

 女性向けファッション雑誌「ViVi」(講談社)が自民党とコラボしたPR企画に、批判が殺到している。メディアが政党の広告を載せること自体は珍しいことではないが、今回のViViのPR企画には、多くの人々が強い違和感を感じたようだ。それが「炎上」、ネット上での非難轟々という状況を招いたのだろう。ViViと自民党のコラボPRの何が問題か考察してみた。

○「自民党の機関誌か?」との批判

 政党が、新聞やテレビ、そしてネット上に広告を出すこと自体は、選挙前ではよくあることだ。資金力のある大きな政党がより有利になるという問題は公平性という点では深刻だ。今回もそうした金にモノを言わせて広告を取ったという批判はネット上で散見できる。それに加え、単に広告を掲載したというだけにとどまらない表現も批判を招く要因となった。

 コラボPRでは、「ViVigirl」という同誌公認のインフルエンサー(影響力の大きい人物)である女性達が、自民党のロゴ付きのTシャツを着てアピールしている。こうした露骨さに対し、ツイッター上では「ViViは自民党の機関誌になり下がった」「モデルの女の子達が可哀想」等の批判が相次いでいる。

 講談社広報は「政治的な背景や意図は全くございません」「若い女性が社会的な関心事、なかでも政治的なことについて自由な意見を表明する場があってもいいのではないか、と企画しました」と説明するが、ViViを象徴するようなモデル達に自民党Tシャツを着せておいて、苦しい言い訳だ。例えば、民放が自社看板アナウンサーを自民党の政治家と握手させたり肩を組まして「自民党、頑張れ」等と言わせるCMを放送したら視聴者はどう感じるか、ということだろう。

○虚偽によるイメージ

 さらに大きな問題としては今回のPR企画タイトルでの「権利平等、動物保護、文化共生」「わたしたちの時代がやってくる!」という文言が、自民党の政策と相反するもの、つまり誇大・虚偽広告というべきものであることも批判を招いた。映画評論家の町山智浩さんは、自身のツイッターで以下のように指摘している。

 町山さんの指摘には、筆者も全く同感である。先日の「女性は子どもを3人以上生んでもらわないと」との自民党の桜田義孝・前五輪担当相の発言や、「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想」と国会で発言した杉田水脈衆院議員が安倍首相のお気に入りとなり、自民党入りして同党女性局役員を務めていること、世界各国の男女平等の度合いを示す2018年版「ジェンダー・ギャップ指数」調査対象149カ国のうち自民党政権下の日本は110位に位置していること等…自民党関係者の数々の暴言や政権の「実績」から考えて、PRで「権利平等」を強調することは不適切であろう。実際、ツイッター上でも「個人の権利に無関心で女性蔑視の発言を繰り返す自民党にまかせていては、自分たちの時代はやってきません」「女性誌が女性蔑視も甚だしい自民党を担ぐとか大概にしなさいよ」等の批判の声が次々と上がっている。

 「動物愛護」も白々しい。例えば、近年、毎年2万頭ものゾウが密猟の犠牲になっており、象牙取引の規制強化が国際的に叫ばれているが、これに強硬に反対し、 国内市場の閉鎖には未だ至っていないのが、自民党政権下の日本である。

 生態系の保全という点では、沖縄県の民意を無視して安倍政権が強硬に進める辺野古米軍新基地の建設によって、世界的に貴重なサンゴ群やジュゴンなどの生息環境を破壊されてしまうことが内外の専門家から懸念されている(関連情報)。先日、動物愛護法が改正されたが、実験動物などへの規制一つとっても、欧米に比べ日本は遅れている。どの口で「動物愛護」を言うのか、という疑問は持たざるを得ない。

 「文化共生」も自民党とは「水と油」だ。あくまで「労働力」であって「移民」としての権利は認めない外国人労働者の受け入れ政策や、朝鮮系学校への公的支援カット、さらには国連難民高等弁務官事務所の年次報告で、「難民庇護率が際立って低い」と名指しで指摘されている日本の難民鎖国ぶり関連情報)など、自民党が「多文化共生」をアピールすることはおこがましい。ツイッター上でも「『自民党』とのコラボで『外国人に親切にしたい』とか『差別をなくしたい』とか【本気で】言ってるんだろうか?」等と疑問視されている。

 なぜ、改憲や消費税増税、原発再稼働といった、自民党の政策をストレートに紹介せず、むしろ自民党の政策とは相反するメッセージを前面に出したのか。講談社広報に聞くと、「編集部や第三者が指示したわけではなく、あくまでも彼女たちの自由な意見を短くまとめた言葉ですのでわかりません」と何とも無責任な回答。今回のコラボPRをまとめた主体は「広告代理店と弊社の広告担当部署」(講談社広報)とのことなので、見た人々をミスリードさせるような広告をつくった責任は講談社にある。批判を浴びたコラボPRの内容についてViVigirl達に責任を転嫁するとは、あまりにご都合主義だろう。

○ViViコラボPRと「老後2000万円」騒動の共通点

 何より、広告主の自民党の「虚偽」体質こそ問題だ。「老後に2000万円が必要」と自助を促す金融庁審議会の報告書について、麻生太郎財務大臣は「人生設計を考えるときに100まで生きる前提で退職金って計算してみたことあるか?」「今、きちんとしたものを、今のうちから考えておかないかんのですよ」と記者団に語っていたが、世論の猛反発を受けると態度を一変。「政府のスタンスと異なる。受け取りを拒否した」とした。さらに、「年金100年安心プラン」という自公政権のこれまでの主張との矛盾について野党が予算委員会での徹底究明を求めると、「報告書はもうないわけですから。予算委員会にはなじまない」(自民党 森山裕国対委員長)と、報告書の存在自体を無かったことにする暴挙に出る始末だ。こうした事実を軽んじ、黒を白と言いくるめる自民党の体質が、皮肉にもViViとのコラボPRにも顕著に現れていた。その点、ライターの武田砂鉄さんの指摘は興味深い。

 ViViと自民党とのコラボPRが大炎上したのは、金融庁「老後2000万円」報告書をめぐるドタバタに象徴されるように、自民党の「虚偽」体質を多くの人々が見抜いているからである。自民党も、広告を載せる媒体も、そのことは肝に銘じておくべきなのだ。

(了)