衰弱する女性を理由も示さず拘束続ける-東京入管の難民虐待疑惑、行政手続法も国際法原則も無視 続々報

東京入管に拘束されているメルバンさん(写真中央、右)。親族提供。

 6歳の時に、少数民族クルド人への迫害が行われているトルコから逃げてきた日本育ちのクルド難民メルバン・ドゥールスンさん(22)が、東京入国管理局の収容所に拘束されている問題(関連記事)で、新たな情報が入った。メルバンさんはパニック障害を抱えているにもかかわらず、彼女の体質に合う薬を入管の収容施設に持ち込めないことから、支援者らはメルバンさんの仮放免を求めていたが、東京入管側は具体的な拘束の延長の理由を示さないまま、仮放免請求を却下した。支援者らは、メルバンさんの体調悪化を危惧している。

〇衰弱していくメルバンさん

 昨年11月末、東京入管がメルバンさんを拘束してから、約3か月が経つ。メルバンさんは、6歳の頃、日本に来て以来、仮滞在を更新し続け、日本で学校も通っていた。特に犯罪にかかわったわけでもない彼女を何故、入管が拘束したかは、詳細は弁護士が情報開示請求を行っているところであるが、長引く拘束で、メルバンさんは精神的に追い詰められ、衰弱しているという。市民団体「SYI(収容者友人有志一同)」のメンバーで、先日メルバンさんと面会した織田朝日さんは「面会のたびに、どんどんやつれている」と懸念する。

 「顔色がとても悪いし、ストレスのせいか、髪が地肌が見えるくらいに薄くなってしまっていました。収容施設に収容される前は、すごく美人な子だったのに…最近は食事もろくに取っていないそうで、本当に彼女のことが心配です」(織田さん)。

 収容施設で、それまで使っていた薬の差し入れすら禁じられていることは、パニック障害を抱えるメルバンさんにとっては死活問題。その上、独房に閉じ込められ、発作を起こしても放置されたり(現在は雑居房に移動)、メルバンさん解放を求めるFAXや電話をやめるよう、織田さんら支援者に伝えることを入管職員が要求、応じなければ家族や友人などの面会も禁じると脅してきたことなど、理不尽かつ虐待とも言えるような入管側の扱いが、メルバンさんを追い詰めている。

 織田さんがメルバンさんのことを描いた4コマ漫画

 メルバンさんの状況について、筆者はこれまで幾度か、東京入管に事実確認の問い合わせをしたが、「個別のケースにはお答えできない」との回答しか得られていない。今回、織田さんが東京入管に、なぜメルバンさんの仮放免請求を却下したのか、と問いただしたところ、「収容を続けても問題ないと判断した」と回答したという。だが、入管施設内で適切な医療を受けられずに、病状が悪化したり、その結果、死亡したりするケースはこれまでも何例もある。織田さんは憤る。

 「つい先日、東京入管から仮放免された外国人女性も、1年以上も、胸の痛みを訴え続けて、最近ようやく検査したところ、乳がんだったそうです。メルバンさんを仮放免しないで大丈夫であるという保証が、一体どこにあるのでしょう?」

〇行政手続法に反する入管の説明不足、拘束の必要性にも疑問

 クルド難民弁護団の事務局長で、メルバンさんの代理人である大橋毅弁護士も、東京入管の姿勢に疑問を呈する。

 「他の被収容者の事例と同じように、メルバンさんのケースでも、入管側は、仮放免請求を却下した理由について、『総合的に判断した』等と書面で書くだけで、具体的な説明を一切しませんでした。これは行政手続法に反しますし、何が問題なのかを伝えなければ、被収容者は対応できません。仮放免請求を却下するにしても、行政手続法に従い、その詳細な理由を明らかにすべきです」。

 

 そもそも、メルバンさんの場合、収容施設に拘束する必要性があるかも大いに疑わしいのだという。

 「現在、日本の入管行政は、『退去強制事由に該当する者について全件収容をして退去強制手続を行う』とする、全件収容主義を採っております。しかし、本来、入管法39条による収容令書は、退去強制事由に該当するというだけではなく、収容の必要性ある場合に初めて発付することが許容されるものです。実際、裁判所が判断を示した事例として、過去2回、全件収容主義を否定しています」(大橋弁護士)。

 つまり、メルバンさんの日本での在留資格を入管側が認めないとしても、彼女を収容施設に拘束するには、それなりの必要性が問われるということだ。

 「収容の必要性に何があてはまるかというと、逃亡のおそれがある等があげられます。しかし、メルバンさんは幼少から日本で育ち、入管の指示に従って在留の手続きをしてきましたし、日本で結婚もしています。彼女が逃亡のおそれがあるとは、考えづらいわけですから、収容しておく必要性がないと言えるでしょう」(大橋弁護士)。

東京入管。収容施設もこの建物の中にある。筆者撮影。
東京入管。収容施設もこの建物の中にある。筆者撮影。

〇意味がなく、ただメルバンさんを衰弱させるだけの拘束

 また、法務省・入管関係者が、前出の織田さんに明かしたところによれば、「トルコ籍クルド難民を、トルコに強制送還することはできない」というのだ。これは、迫害される危険性の高いところへ、難民申請者を強制送還してはいけないという、ノン・ルフールマンの原則があるからであろう。

ノン・ルフールマンの原則

難民を、迫害が予想される地域に追いやってはならないという国際法上の原則

 そうであるとすると、メルバンさんをトルコに強制送還できないのであるから、入管側の立場からしても、メルバンさんを収容施設に拘束している合理的な理由は無いということだ。織田さんは「メルバンさんを、あれだけボロボロにして、傷つけて。入管はこれ以上、何がしたいのでしょうか?この収容に何の意味があるのでしょうか?」と訴える。

 難民に対する日本の入管行政については、人権理事会、自由権規約委員会や拷問禁止委員会、人種差別撤廃委員会など国連は、再三、是正勧告している関連情報)。それにもかかわらず、メルバンさんのように、理不尽に難民が苦しめられる事例が後を絶たない。日本の政府与党は勿論、野党や有権者も、その人権に対する姿勢が問われているのである。筆者としても、今後もメルバンさんの件を注視していきたい。

(了)

*本記事では、筆者がメルバンさん本人及びご家族の了承を得て、実名・顔写真を公開している。本記事をSNS等でシェアするなどの場合を除き、メルバンさんの顔写真の無断使用、とりわけメルバンさんを誹謗中傷する目的での写真の使用は、厳しく禁じる。

パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。

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