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【北朝鮮】自衛隊関係者が語るミサイル防衛の現実、安倍政権の「煽り」を批判

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
自衛隊の迎撃ミサイル(写真:ロイター/アフロ)

 北朝鮮が3日、6度目の核実験を行ったことで、東アジア情勢の緊迫がますます高まっている。米国のジェームズ・マティス国防長官は3日、北朝鮮が米国の脅威となるなら「巨大な軍事行動で対応する」と警告するなど、米国が北朝鮮への先制攻撃を行う可能性も全く無いとは言い切れなくなってきた。だが、米国が北朝鮮と戦争を行った場合、日本各地の在日米軍基地めがけて、北朝鮮の中距離弾道ミサイルが飛んできて、周辺の住民や民間施設に被害を与える怖れがある。安倍政権は、圧力一辺倒で対話は一切しない方針であるが、日本の自衛隊上層部にも、北朝鮮で戦争が始まった場合、日本の被害を防ぎきれるのか、懸念する声があるのだという。軍事ジャーナリストの古是三春氏に話を聞いた。

〇防衛省・自衛隊関係者らのミサイル防衛への懸念

軍事ジャーナリスト 古是三春氏
軍事ジャーナリスト 古是三春氏

 古是氏は、防衛省や自衛隊に太いパイプを持つ。防衛省・自衛隊関係者らが古是氏に語った懸念は、日本の政治家やメディアのミサイル防衛への過信だった。

 「絶対に匿名、とのことで聞いた話ですが、防衛省・自衛隊関係者にはMD(ミサイル防衛)について、かなり懐疑的な意見があり、ある関係者は『ミサイルの完全阻止は不可能』とまで言っています。また、MDはかなり高額であるため、『不可能なことにカネを使えば、他の兵器調達が妨げられる。弾道ミサイルは、多弾頭化など迎撃ミサイルを無力化する改修が容易。今後10年以上、有効性が認められるMDシステムなどない』とも」(古是氏)。

 政府は「北朝鮮のミサイルの破片が日本に落ちて来る場合、これを破壊する」としているが、こうした主張にも、防衛省・自衛隊関係者らは呆れているという。

ミサイルで破片を破壊してもせいぜい上空から地上へ降り注ぐ破片を増やす効果しかない。(迎撃ミサイルの)PAC3の射程はせいぜい30kmで、目標を消滅させることはできない』とのことです」(古是氏)。

 森友・加計問題で低下した支持率を回復させる好機とばかりに、北朝鮮をめぐる緊張を便乗している安倍政権の姿勢にも、防衛省・自衛隊関係者から批判する声があったという。

北朝鮮は、日本なんか目標にしてない。だから、ビクビク国民を怖がらせても、何の益もない、と」(古是氏)。

〇日本の平和と安全を考えればこその現実路線

 北朝鮮にとって最大の脅威は米国であり日本は相手にされていない、攻撃対象となりうるのも、日本よりも米国。だからこそ、米国と一体となって北朝鮮を刺激することは、日本にとってもリスクとなる―筆者がこれまで記事中で何度も強調してきた情勢分析と、防衛省・自衛隊関係者の見解が一致することは、興味深い。いかに日本の人々の生命と安全を守るかという点で、徹底的にリアリストとしての見方に立てば、現実を無視した強硬論は、むしろマイナスという結論に至らざるを得ないのだろう。

 核実験を強行した北朝鮮へ、強く抗議することは当然のことではあるが、圧力だけでは、北朝鮮に核開発を放棄させることはできないだろう。イラク戦争にからみ、2004年1月11日付けの北朝鮮政府機関紙『労働新聞』が、「大量破壊兵器の査察がまさか戦争にまで広がるまいと考え、それを素直に受け入れたことも(フセイン政権の)大きな失策だ」と主張したように、米国との平和協定なしに核開発を放棄して、イラクの二の舞にならないか、という恐怖が北朝鮮側には染みついている。だからこそ、日本としても、単に圧力一辺倒になるのではなく、米国や韓国の専門家らがまとめた提案(関連記事)のような「落としどころ」を用意すべきではないだろうか。

(了)

2017/09/06 20:50追記:

本記事に対し「イージス艦搭載のSM-3のことが触れられていない」との指摘があったが、SM-3も万能ではない。北朝鮮の中距離ミサイルは200発以上あるとされ、自衛隊の持つSM-3は弾数で対応できない。また、超高高度に撃ちあげ、そこから超高速度で落下させるロフテッド軌道での弾道ミサイル攻撃に対してもSM-3は対応できない。本記事中に書いたように、そもそも北朝鮮が日本にミサイルを撃ってくるか否か、という本質的な問題もあるが。

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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