戦争犯罪でも支援するのか!?―日本を「イスラム国」より酷い米軍の共犯者とする安倍政権の安保法制

米兵達と不当拘束されるバグダッドの住民 2004年7月、イラクで撮影

安倍政権が来月中にも閣議決定しようとしている安保法制関連法案。計11本もの法改正・新設を行うとされ、中でも、新たに新設するという「国際平和支援法案」は、米軍の戦争支援のために、全世界のどこにでも自衛隊を派遣するものだ。その活動内容も米兵の輸送や救助、武器弾薬や燃料の輸送や補給と、非常に具体的である。だが、安倍首相に問いただしたい。米国は世界でも最悪レベルの戦争犯罪の常習犯的な国である。米軍の支援をするということは、民間人の虐殺や、民間施設の破壊といった戦争犯罪の支援をするという可能性が極めて高いのだ。日本は、税金を使い、自衛官を危機にさらして、戦争犯罪の共犯者となることを受け入れるのか。

○米国がイラクで行ってきた戦争犯罪の数々

現代において、たとえ戦争中であっても、何をしても良いわけではなくジュネーブ諸条約やハーグ陸戦条約といった、国際人道法がある。これらは端的に言えば、民間人を殺したり、民間施設を破壊してはならない、捕虜を虐待してはならない、というものだ。そして、これらの国際人道法など無いが如く振る舞ってきたのが、他でもない米国なのである。近年の日本が支持・支援した米国の戦争と言えば、イラク戦争であろう。だからこそ、安保法制を議論する上で、イラク戦争で米軍が一体何を行ってきたかを振り返ることは欠かせない。イラク戦争での米軍の戦争犯罪を全てまとめるとなると、いくら字数があっても足らないだろうが、いくつかの例を紹介しよう。

例えば、2006年3月15日にイラク中部のイシャキ村で起きた一家惨殺事件。当時、「テロリスト掃討」の名目で、民家を強襲した米軍兵士らが、非武装・無抵抗の住民を殺害するという事件が頻発していたが、イシャキ村での一家惨殺事件もそうしたものの一つだ。ウィキリークスによって流出した米軍内部文書や現地報道などによると、米兵達が地元小学校の教師であったファイズ・ハラットさん(28)の家を強襲。ファイズさん宅にいた11人を手錠をかけた無抵抗な状態で銃殺した。衝撃的なのは、米軍兵士らが、まだ幼い子ども達まで殺したことだ。ファイズさんの子どものフサームちゃん(生後5ヶ月)、アイーシャちゃん(3歳)、ホウラちゃん(5歳)、ファイズさんの甥ウサマちゃん(3歳)、同姪のアスマちゃん(5歳)ら5人が無慈悲にも殺害されたのである。被害者の中には、ファイズさんを訪ねていたカップルもいた。彼らは婚約者同士で、次の週に結婚する予定だったという。

イシャキ村での虐殺ー現地人権団体提供
イシャキ村での虐殺ー現地人権団体提供

この事件について、米軍はメディアに対し、「イラクのアルカイダネットワークの支援者を捕らえるために民家を攻撃した」「敵からの銃撃を受け、兵士達は応戦した」と主張。だが、地元警察の報告によれば、子どもや女性すらも手首を縛られ、目隠しをされた状態で殺害されていたのだと言う。また、米兵達はファイズさん宅を爆破した上、ファイズさんの飼っていた家畜までも殺していったのである。

ファイズさんらの変わり果てた姿は、地元テレビで報道され、その映像はBBCやCNNなどの欧米メディアも伝えた。だが、日本のメディアは、これらの映像を全く使用しなかった。非常にショッキングなものだが、安倍首相には是非リンク先を観てもらいたい。

・米国のジャーナリスト、クリス・フロイド氏のサイトにイシャキ村での一家惨殺の画像が掲載されている。閲覧注意!

http://www.chris-floyd.com/march/

バイジ近郊で米軍に殺されたイラク人少年(リンク先はモザイク無し)
バイジ近郊で米軍に殺されたイラク人少年(リンク先はモザイク無し)

また、関連映像があるものとしては、08年5月に起きた、イラク中部バイジ市近郊での市民虐殺がある。映像を公開しているイラク系ニュースサイト「URUK NET」によれば、これらの犠牲者達は、米軍の刑務所から解放された被拘束者を祝うパーティーに向かう親戚や隣人達で、乗っていた車が、近くで掃討作戦を行っていた米軍に銃撃され、そこへ米軍ヘリがさらに攻撃を加えられたという。米兵達は、生存者を助けることもせず、冷酷に銃殺し、遺体の額に数字を書いたのだと言う。映像を見てわかる通り、7人の犠牲者の中には少年や少女もいた。

・バイジ近郊での映像。閲覧注意!

http://www.uruknet.de/?p=m45246&hd=&size=1&l=e

米国でも大きな問題となったケースとしては、2005年11月、イラク西部のハディーサで米海兵隊員らが民家を襲い、1歳から14歳の子ども6人を含む、24人もの一般市民を虐殺した事件がある。この件では、主犯格とされるフランク・ウートリッチ二等軍曹の責任が問われたが、降格だけで禁固はなしという判決だった。

・ハディーサでの虐殺についての米独立系メディア「デモクラシー・ナウ」の報道。

閲覧注意!https://vimeo.com/34029029

○米軍が女性を誘拐、性的虐待も

米軍によるイラク人女性拘束・虐待を訴えるアート作品。04年6月バグダッドにて撮影
米軍によるイラク人女性拘束・虐待を訴えるアート作品。04年6月バグダッドにて撮影

ISIL(いわゆる「イスラム国」)の悪名高い所業に、ヤジディ教徒などイラクの少数民族の女性を奴隷とし、性的虐待を加えているという問題がある。これらは、絶対に許しがたい蛮行であるが、米軍もイラクにおいて、女性の誘拐と性的虐待を「対テロ」の戦術として行っていた。「米国自由人権協会(ACLU)」が情報公開法に基づいて入手した米軍文書によれば、米軍が武装勢力との関係が疑われる人物の家宅捜索を行って、目当ての人物が不在だった場合、その家の女性を拘束することが奨励されていたのだという。また、現地人権団体「イラク人権監視ネット」の報告書によれば、アブグレイブ刑務所やブーカ刑務所などでの、女性の被拘束者に対するレイプが頻発。多くの被害女性達は、刑務所から解放された後に精神的苦痛により自殺したという。 

ある女性は、アブグレイブ刑務所で米兵達によって17回もレイプされたという。彼女はその後出所したが、精神的にも身体的にも衰弱し、死亡した。

別の女性は、2003年12月、米軍兵士達が家に突入してきた際に、米軍兵士らが、彼女の夫を見つけることが出来なかったので代りに拘束され、アブグレイブ刑務所へと送られた。夫は妻が拘束されたことを知り、自ら出頭したが、米軍兵士達は、女性を夫の目の前で3回レイプした。女性は2004年の5月に釈放されたが、その後自殺した。

出典:「イラク人権監視ネット」の報告書より

米軍兵士によるイラク人女性の集団強姦事件で有名なものは、2006年3月にイラク中部マハムディヤで起きたものだ。ジェームズ・バーカー特技下士官、スティーブン・グリーン一等兵ら5人がイラク人少女アビール・カシム・ハムザさん(当時14歳)を集団強姦した挙句に殺害。彼女の5歳の妹と両親も銃殺した上、放火した。犯行後、グリーン一等兵らは、イラク軍兵士に「武装勢力の犯行」とウソをついたが、そのことで事件が発覚することとなった。

○組織的に行われていた拷問

アリ・シャハル・アル=カイシ氏
アリ・シャハル・アル=カイシ氏

2004年4月に発覚し、世界に衝撃を与えたアブグレイブ刑務所での米軍兵士による捕虜虐待事件。同刑務所に拘束されていたイラク人男性によれば、虐待や拷問は日常的に行われていて、流出した写真に写っていた兵士だけによるものでは決してなかったのだという。インタビューに答えたアリ・シャハル・アル=カイシ氏は、頭に袋を被せられ箱の上に立たされた状態で両手に電極を繋がれた姿が、世界的に有名になった人物だ。彼は自身の経験として、こう証言する。

「私は帽子以外の衣服を奪われ、写真を撮られました。そして、私は両手両足を縛られた状態で、刑務所入り口の階段を上るように命令されたのです。はいずって階段を上る私に、米兵達は何度も『早くしやがれ!』と罵倒しました。そして、私に小便をかけました。連中は肉体的にも、精神的にも、私を追い詰めようとしたのです。例えば、2時間くらい片手を天井から吊られたままの苦しい体勢でいさせられたり、2週間くらい裸のままにされたり、数日間、水も食料も与えられなかったり。『ミュージック・パーティー』という拷問も受けました。これは、ヘッドフォンで凄まじい大音量の音楽を聴かされ続けるというものです。この拷問は2日間続きました。米兵達はしょっちゅう、私に銃を突きつけ『殺してやる』と怒鳴り、殴りました。『手の古傷が痛むので、鎮痛剤をくれないか』と私が頼んだ時も、米兵は『これが米国産の鎮痛剤だ』と叫ぶと、思いっきり私の手を踏みつけたのです」。

流出したアル=カイシ氏とされる写真
流出したアル=カイシ氏とされる写真

世界的に知られることになる写真を撮られた際に受けた仕打ちについても、アル=カイシ氏は話してくれた。

「小さな箱の上で、頭に袋を被せられ、両手に電極をつなげられた私を、強力な電気ショックが襲いました。最初の一回で、目の前が真っ白に光り、私は倒れてしまったのですが、私の様子を診た医務官はなんと『大丈夫だ。続けろ』と言ったのです。結局、私は5回も電気ショックにかけられたのでした」。

イラクでの虐待問題に関しての米国防総省の内部調査報告書は6000ページに及び、写真は1800点も存在するとされているが、その全容は現在も公開されていない。また、米上院軍事委員会の調査で、イラクやアフガニスタン、グアンタナモでの捕虜虐待や拷問が、ラムズフェルド国防長官(当時)の指示の下で蔓延したことが確認されているが、ラムズフェルド氏は未だ、その責任を公的に追及されず、処罰されないままだ。

○改めて問われる、米軍への後方支援

繰り返すが、本記事で紹介した事例は、米軍がイラクで行ってきたことの一部にすぎない。最近はISILの残虐非道ぶりが目立つゆえに忘れられがちだが、殺してきた人々の数の膨大さ、また先進国の正規軍ではあることを考えれば、米軍の方がISILよりもはるかに悪質だといえる。連休明けから安保法制をめぐる安倍政権の動きは本格化するだろうが、問われるべきは、米軍の戦争犯罪を日本が支援することの是非である。また、今後、実際に米軍の国際人道法違反が発覚した場合、日本側がどのように対応するのか、ということでもある。それによって、後方支援を取りやめるのか。それとも観て観ぬふりをして、後方支援を行うのか。第一次安倍政権では、航空自衛隊イラク派遣の活動内容を隠蔽し、国会でウソをついた安倍首相だが(関連記事)、今度こそ、国会でその説明責任を果たすべきである。また、野党もイラク戦争などの具体的事例から、安保法制の問題点を追及すべきだろう。