原発再稼働第一弾か?川内原発の動向に東京・大阪などの人々も注目すべき理由
現在日本の原発は全て停止しているが、福島第一原発事故を経ても電力各社は性懲りもなく、原発再稼働を目指している。中でも、川内原発(鹿児島)、伊方原発(愛媛県)、泊原発(北海道)は、原発再稼働のための原子力規制庁への申請で先行し、仮に再び日本で原発が再稼働するとすれば、これらの原発が最も早く再稼働するのではないかと観られる。鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、「安全性が確保できれば再稼働させざるを得ない」と発言するなど、再稼働容認派だ。早ければ、来年2、3月頃にも原発再稼働の動きが本格化すると目される中、今月15日、川内原発の地元、鹿児島県薩摩川内市で、同市で行われたものとしては、過去最大規模の脱原発集会・デモが行われ、約1800人(主催者発表)が「川内原発再稼働反対」を訴えた。この様な動きは、マスメディアではローカルニュース扱いなのだろうが、川内原発を止められるか否かは、東京や大阪など本州の大都市の住民の安全にもかかわることだ。
◯川内原発の地元でのデモ・集会、福島の事故被害者も発言
今回デモ・集会を行ったのは、「反原発・かごしまネット」や「川内原発増設反対県共闘会議」など反原発の90団体で組織する「集まろう ストップ再稼働!12・15in川内」実行委員会。同実行委共同代表の鳥原良子さん(川内原発建設反対連絡協議会)は「川内原発の関係の仕事をしている人々も多くいるなど、地元でなかなか声を上げられない状況もあるが、本音では仕事さえあれば原発はいらないと思っている住民も多い」と話す。集会アピールには、川内原発の再稼働反対と共に、再生可能な自然エネルギー社会への移行なども盛り込まれた。集会には鹿児島県外からのゲストも参加。中でも、印象的だったのは、「原発いらない福島の女たち」の黒田節子さんの渾身の訴えだ。「薩摩川内市はとても自然の美しいところですね。私達の故郷・福島もそうでした。でも、今や緑が危険なものになってしまった。山や森に放射能が降り、溜まってしまっているのです。孫達と一緒に遊んだ公園が、一番危ない場所になってしまっている。こんな悲劇をもう繰り返してはいけない」。黒田さんは涙声でそう語った。伊方原発のある愛媛県からも「原発さよなら四国ネットワーク」の井出久司さんが参加。「愛媛には、アワビやサザエ、みかんなどの豊かな自然の恵みがある。たかだか数十年間しか動かせない、単なる発電方法の一つにすぎない原発のために、長い間受け継いできた自然の恵みを失うわけにはいかない」と訴えた。
◯甘い活断層評価、巨大事故が起きれば、日本中が汚染
川内原発が再稼働するか否かは、鹿児島県民だけの問題ではない。万が一原発事故が起きれば、偏西風に乗って放射性物質は全国へと広がっていく。大阪や東京にも放射性物質が降り注ぐことになる。川内原発は周囲を活断層に囲まれており、地震リスクは決して低くない。他の電力会社にも言えることだが、九州電力の川内原発周辺の活断層評価も案の定、非常にいい加減だ。国の地震調査研究推進本部は、九電がまとめた資料を「断層の存在を全く無視している」と酷評。九電資料のデータは、地震調査研究推進本部のそれと比較して、活断層の長さが2分の1、地震規模が11分の1など、地震リスクを過小評価したものだったのである。また地震調査研究推進本部は、F-A断層やF-C断層が川内原発にまで伸びている可能性を指摘。川内原発をマグ二チュード7.1の巨大地震が文字通り直撃する恐れがあるのだ。
◯鹿児島県民は勿論、全国の人々が注視すべき
原発再稼働のための原子力規制委員会の新規制基準が抱える最大の問題点は、原子炉の耐震性強化を義務付けていないことだ。新規性基準が電力各社に求めているのは、あくまで、津波対策や電源車の配備、フィルター付きのベント機能の設置等にすぎない。それは福島第一原発事故の原因が「津波による電源喪失」だとされているからであるが、地震による振動自体が、原子炉の配管を損傷させ、冷却できなくなった核燃料が溶け始めたのではないか、という指摘もある。この問題については、また別途とりあげていきたいが、この不十分な新規性基準の下、来年以降、次々に電力各社が原発を再稼働させようとしてくるだろう。その皮切りとなるかもしれない川内原発の動向に、鹿児島県民は勿論のこと、県外の全ての人々も注視していく必要があるのだろう。「集まろう ストップ再稼働!12・15in川内」実行委の松元成一さん(かごしま反原発連合有志)は「年内に大きな集会・デモをやらないと九電や知事、政府になめられると思った。来年3月もデカイのやりますよ。全国の皆さんにも是非応援してもらいたい」と呼びかける。一度、事故が起これば、放射性物質は風に乗って広範囲に降り注ぐ。自治体の境界などは関係ないのだ。