菅長官「その発言だったら指しません」東京新聞記者は何を質問したのか? 全文書き起こし

「その発言だったら指しません」のシーン。首を横に振ったのが印象的。筆者キャプチャ

 菅義偉官房長官が5月29日の記者会見で、東京新聞の記者からの質問に対して「その発言だったら指しません」と回答したことがネット上で話題を呼んでいます。

 2月26日にも「あなたに答える必要はありません」の回答が大きな話題となりましたが、そのときと同様にやはりメディアは「実際にどのようなやり取りがあったのか?」を書いていませんでした。

 そのため、この“発言した”という情報だけで菅長官支持派と東京新聞記者支持派がネット上で論争を繰り広げていますが、ただ言い争うだけでは前進しないのは目に見えています。

 そこで前回と同じくどのような質問だったのか? それに菅官房長官は何と答えたのか? 全文を書き起こしました。

5月29日の東京新聞記者、質問全文書き起こし

東京新聞記者「東京です。あの、ふたたび、上村報道室長の質問妨害、さえぎりについてお伺いします」

菅官房長官「大変申し訳ないですけども、ここはそうしたことを質問するとこでなくて、記者会主催でありますから、記者会に申し入れてください」

東京新聞記者「はい」

東京新聞記者「あの、関連でですね。これはちょっと確認をしたいんですね」

菅官房長官「あの、記者会見の場は違いますから。それはあの記者会に、記者会が主催している会でありますので、そこはそこで対応してください」

東京新聞記者「つまりそうすると、これまでのさえぎりに関して記者会」

司会「(会話に割り込んで)名前を言って、一問ごとにお願いします」

東京新聞記者「東京です。あの、記者会とのあいだで行っているとのご発言でした。で、確認したいんですが、特定の記者の質問を25秒以上経ったらさえぎるということをですね、これ記者会が容認したということを言いたいんですか?」

菅官房長官「いや、記者会で問題点があったら、記者会の方に問題点を指摘してください。ここはあの、大事な記者会見の場でありますので」

司会「このあとにいたる撮影質問、最後でお願いします」

(おそらくここで東京新聞記者が挙手)

菅官房長官「その発言だったら、指しません」

東京新聞記者「(笑いながら)あ、ああ、いいですよ。はい。ほかのことを、じゃ、聞きます」

東京新聞記者「日朝首脳会談についてお聞き致しますね。えっとー、長官あのー、これまでその直接的にですね、金正恩(キム・ジョンウン)委員長と直接あって話をする準備があるという、首相のご発言について、『何が適切かという判断だ』という趣旨のご発言されたと思うんですが、えっとー、昨日、一部報道出てますが、この日朝の交渉について首相の前提なしでの首脳会談について、朝鮮労働党の機関紙が、日本は840万人の朝鮮人を拉致し、戦場や工場に送り出したと、過去の罪を精算する気などまったくないと、この前提条件なく首脳会談を目指す政府を批判をしておりました。これについての受け止めを、お聞かせ」

菅官房長官「(会話に割り込んで)いちいちお答えしません」

出典:2019年5月29日 午後の記者会見より

 書き起こした文章を読めばわかると思いますが、すでに2回同じ質問をされていたため「3回目は指しません」と答えた流れです。

 その後の質問については、朝鮮労働党の機関紙からの批判に対して「いちいちお答えしません」との回答でした(翌30日の記者会見で「北朝鮮からの発表に政府がいちいち答えることは拉致問題をふくむ交渉に影響するためお答えしない」と同東京新聞記者からの質問に回答)。

 ついでに前回の「あなたに答える必要はありません」では、「午前と午後の2回にわたって同じ趣旨の質問があったため繰り返す必要はない」との話が翌日に出てきたため、同様の質問がなかったかさかのぼって調べてみました。

5月28日の東京新聞記者、質問全文書き起こし

東京新聞記者「東京です。えー会見での、上村室長による質問妨害についてお聞きします。先週からですね、上村室長による質問妨害がふたたび再開されました。先週と今日の午前で調べますと、25秒から30秒ほどのあいだに『質問に移ってください』が3回ありました。あの30秒を超えている長い質問はほかの記者にもあるんですが、そちらには妨害はありません。これ狙い撃ちのようにも見えるんですが、見解をお聞かせください」

菅官房長官「まったくそんなことはありません」

司会「あとにいたる撮影質問、最後でお願いします」

東京新聞記者「はい。あのー、受け止めとしては妨害行為に思えます。この妨害行為についてはですね、新聞労連やMIC(日本マスコミ文化情報労組会議)、そして識者や弁護士団体などもこれまで抗議の意を示しまして、官邸前のデモでは、現役の記者(筆者注:東京新聞の別の記者)から『面前のDVだ』との批判も出ておりました。あの室長の上司は菅長官ですけども、質問者の精神的な圧力になるような、この行為を再開された理由というのは何なんでしょうか」

菅官房長官「あのー、この会見は記者会とのあいだで行われてますから、記者会とのあいだでしっかり対応してますし、そういうことはありえません」

出典:2019年5月28日 午後の記者会見より

 前日の記者会見でも同様の質問をしており、ここでも「記者会と対応」という回答だったことが確認できました。

この問題、いつまで続けるの?

 この一連の質問妨害の件というか、菅官房長官と東京新聞記者のやり取り。報道を見ていると誰も進んで解決しようとしていない印象を受けます。

 同じ質問を繰り返す東京新聞記者と、それに対してうんざりしているのか誠実とは言えない反応をかえす菅官房長官。そのやり取りから大事なところを削って伝えるメディアと、それを受けて燃え上がるネットユーザーたち。

 おそらくこれ、ずっとこの状態が続いていくと思います。個人的には記者クラブに所属している人たちが解決に動き出さないのが不思議でなりません。

 内閣記者会(記者クラブ)が質問妨害を容認しているのであればなぜ容認されているのか、していないのであればなぜ東京新聞記者だけが「質問に移ってください」と言われるのか。

 そしてなぜ、メディアは読者に対してあまり長くもないやり取りを大きく切り取り、一部しか伝えようとしないのか。

 前回の記事でも「質問内容を切り取るのはミスリード」と訴えましたが、同じことが今回も起きています。この記事のように全文書き起こすべきだとは言いませんが、「こんな発言がありましたー」と伝えるだけで、メディアっていいんでしょうか?