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驚天動地の大谷翔平の元通訳「違法賭博」疑惑騒動!日米メディアの受け止め方の違いとは!?

篠田博之月刊『創』編集長
大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

全世界に衝撃が走った「違法賭博」騒動

「『青天の霹靂(へきれき)』というのは、こういうことを言うのであろう」

『週刊文春』4月4日号のコラムで林真理子さんがそう書いている。大谷翔平選手の元通訳、水原一平氏の違法賭博疑惑のことだ。確かに全世界に衝撃が走った。

 もともと大谷フィーバーが続いていたところへ、突然の結婚と妻をめぐる騒動。それが一段落してさあ開幕!というタイミングで違法賭博疑惑をめぐる騒動だ。こうした急展開には誰もが驚いていることだろう。

 締切から発売までタイムラグがある週刊誌などは、相当振り回されたに違いない。大谷選手自身が質疑応答なしの会見を開いて、自分は賭博にはいっさい関与していないと言明したのが日本時間の3月26日朝だ。その時点で、賭博騒動は約1週間続いていた。

 その週の前半発売の週刊誌といえば、例えば26日発売の『AERA』4月1日号は巻頭特集が「新たな“SHO-TIME”開幕」。「大谷翔平の経済効果は?」と題するレポートもあって、大谷フィーバーがいかに大きな経済効果をあげているかを報告している。その特集の最後に1ページ、「米スポーツ界の”タブー“」と題して賭博疑惑に触れ、「大谷選手の前途に暗雲垂れ込めぬことを願うばかりだ」と結んでいる。

 同じく26日発売の『サンデー毎日』4月7日号も巻頭カラーグラビアで「大谷劇場 メジャー第二幕開幕!」と題して、ソウルでのMBA開幕戦での大谷選手の活躍を伝えている。そして記事中で1ページ、「激震!ドジャース 水原一平通訳を電撃解雇」というレポートを入れている。

 球団が水原氏を突如解雇したのは日本時間で22日だから、両誌ともそこから取材に走ったのだろう。

28日木曜発売の週刊誌3誌は大報道

 3月26日の大谷選手の会見を受けて報じた週刊誌は、28日木曜発売の『週刊新潮』『週刊文春』『女性セブン』だ。26日火曜日は校了日のはずで、ぎりぎり待って会見の内容を盛り込んだのだろう。

週刊誌も大々的に報道(筆者撮影)
週刊誌も大々的に報道(筆者撮影)

 週刊誌3誌とも、この話題に大きく誌面をさいた。

『週刊新潮』4月4日号はグラビアを含めて15ページという異例の扱い。『週刊文春』も「総力取材12ページ」とうたった大特集だ。『女性セブン』4月11日号は6ページながら見出しがすごい。「『大谷翔平を潰せ』米球界違法賭博FBI謀略」と表紙にもうたっている。

 謀略とは何かと言えば、記事中で在米ジャーナリストがこうコメントしている。

「当局は1月には大谷選手の口座からの送金を確認していたにもかかわらず、当事者への捜査の前に、わざわざアメリカのスポーツメディアに情報を流した。結果として、大谷選手にとって最もダメージが大きくなる、シーズン開幕に合わせたタイミングで疑惑が明るみに出ることになりました」

米メディアの初期報道には混乱も

 果たして「謀略」と言えるのかはわからないが、確かに米メディアの報道は早かった。第一報は現地時間20日の地元の有力紙「ロサンゼルス(LA)・タイムズ」。ほぼ同時にスポーツ専門放送局ESPNも取材に動いていたようだが、LAタイムズの報道がわずか10分早かったという。球団が水原氏の解雇を決めたことを知って報道に踏み切ったという。

 そうした米メディアの事情を『週刊新潮』4月4日号は、そのLAタイムズヘの取材をもとに伝えている。ちなみに実はESPNは水原氏への取材まで行っていて、ある意味スクープだったのだが、水原氏が嘘を言っていたと謝罪・撤回。初期報道で混乱を招いた。

 同誌や『週刊文春』は、ソウルでの大谷選手の開幕戦での活躍を、彼の妻と水原氏の妻が仲良く観戦している写真を掲載している。2人の妻にとっても今回の事件は衝撃だったに違いない。

 この先、詳細な真相が判明するのはもう少し先、アメリカでの捜査が進んでからだろう。

大谷選手に対する日米メディアの温度差

「デイリー新潮」は3月25日付で「アメリカで強まる『主犯は大谷翔平・水原スケープゴート』説」という記事を配信していた。冒頭でこう書いている。

《水原一平氏のドジャース解雇騒動が混迷を深めている。アメリカでは「なぜこんな怪しい展開になっているのに、日本人は美談で済まそうとするんだ」という疑念が噴出。「主犯は大谷翔平、水原スケープゴート説」が強まっている。背景には「米国第一主義」を掲げるドナルド・トランプ前大統領が返り咲きそうな気運が関係しているとの指摘もある。》

 今回の賭博疑惑をめぐって日米のメディアに違いが見られるという指摘は他でもなされていたように思う。米メディアも時間を追うに従って変化はしていったはずで、そのあたりはきちんと検証・分析しないといけないだろう。

 ただ、前述した『女性セブン』4月11日号も「謀略」云々の記事の中で、在米ジャーナリストのこんなコメントを紹介していた。

《大谷がアジア人であることも「無関係ではない」という声がある。

「いくらユニコーンともてはやされていても、ベースボール発祥の地であるアメリカでは、大谷選手は所詮“外国人”なのです。特にアジア人への偏見や差別は根深いものがある。次々と記録を更新する彼の活躍をおもしろく思わない人たちは少なくない。実際、ドジャース以外の球団のファンたちからは、一連の問題で大谷選手の責任を追及したり、『処罰せよ』と論じる声がすぐに上がり、大谷選手の会見後も止まりません。

 米球界には、これまでの記録を塗り替え、慣習にも風穴をあける大谷選手へのやっかみがあるはずです。》

 そのあたりが本当だとしたら、大谷選手は今後の活躍でそれを払しょくするしかない。

 日本でも「今の大谷報道は大量でやりすぎだ、大事なテーマはほかにもある」という声も出始めている。ただ大谷フィーバーが、社会に対する閉塞感の裏返しだという見方もできる。自民党の裏金問題など多くの市民が愛想をつかしているのだが、かといって政権交代とか、対抗すべき展望も見当たらない。その閉塞感をホームランによって一時的にであれ吹き飛ばしてくれる、爽快感を与えてくれるのが、大谷翔平選手だったのではないか。そんなふうに思える。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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