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週刊誌ほぼ全誌が報じた「佳子さま別居」騒動が示したものは何なのか

篠田博之月刊『創』編集長
(写真:Motoo Naka/アフロ)

 この7月、週刊誌が一斉に報じたのが「佳子さま別居」騒動だ。ウェブ版を含めて言えば、ほぼ全誌が報じたと言ってよいのではないだろうか。この騒動が示したものは何だったのか考えてみたい。

 2023年4月に宮内庁が「広報室」を新設したことは鳴り物入りで報じられたが、その成果が見られないどころか、逆に広報のあり方のまずさを印象付けたのが、この騒動だ。情報の伝え方をどうするかという以前の、もっと基本的な部分で今の皇室が抱えている問題を、この騒動は浮き彫りにしたような気がする。

発端は6月30日の加地・皇嗣職大夫の会見

 最初のきっかけは秋篠宮家の世話をする後嗣職のトップである加地隆治・皇嗣職大夫の6月30日の会見での発言だった。秋篠宮一家が2023年3月に改修された秋篠宮邸に引っ越したのだが、佳子さまは仮住まい先に残り、事実上の別居となった。その話は既に報じられているのだが、今頃になって突然、正式に発表されたのだった。

 しかもその理由が「改修規模を縮減し経費を節減するとの基本方針に基づいて」(同日の宮内庁ホームページ)とされたことで、週刊誌が反発した。週刊誌は既に別居の理由を、佳子さまと秋篠宮夫妻との間に溝が生じているためなどと報じており、今回の発表をウソだと批判したのだった。

『週刊新潮』7月27日(筆者撮影)
『週刊新潮』7月27日(筆者撮影)

 経緯を詳細に報じた『週刊新潮』7月27日号の見出しは「宮内庁長官も非を認めた『佳子さま別居』“虚偽で隠蔽”の波紋」。同誌は7月13日号でもこの問題を報じ、「虚偽で隠した『佳子さま』別居」と批判していた。

西村宮内庁長官と加地大夫の応酬

 さらに問題をこじらせたのは、7月13日の定例会見で西村泰彦宮内庁長官が、発表がこのタイミングになったことについて質問され、「タイムリーではなかった。問題になった時になるべく早く公表すればよかった」と回答したことだ。

翌14日、長官の“苦言”について問われた加地大夫は「それは長官のご意見ではないか。私は節目ごとに必要な説明をしてきた」と答えた。『週刊新潮』はこれを責任の「なすりあい」と断罪した。

 同誌記事中で宮内庁関係者がこうコメントしている。

「そもそも、佳子さまのお一人暮らしが盛んに報じられていたのは春先のこと。その時に対応するのならともかく、皇嗣職は“プライベートなので”と、一切の説明を拒んできた。そうした報道が下火になってから、もっともらしく“経費削減”といった理由を持ち出したのは完全な悪手で、案の定、批判が再燃してしまった。世間の反応を目の当たりにした長官は“問題ありません”と言うわけにはいきませんでした」

秋篠宮家と宮内庁の連携のまずさ

 何故、こういうまずい広報になっのか。同誌記事で匿名の関係者がこうコメントしている。

「時機を逸してまで佳子さまの別居を公表した是非は措くとして、ここまで“準備”に時間がかかったのは、両殿下と皇嗣職とで文言を練り上げる作業に時間が費やされたからです」

 またこんなコメントも紹介されている。

「佳子さまの“別居報道”について宮内庁の広報が機能していない原因は、秋篠宮家との連携がうまく取れていないからだと思います。情報を出す際、最終的には秋篠宮ご夫妻が可否の判断をなさっているはずで、その内容が世間に批判されるのであれば、誰かがきちんと進言しなければなりません」

 この問題、宮内庁の失態とばかり、週刊誌は各誌一斉に報道した。『週刊文春』7月27日号によると、西村宮内庁長官は周囲に苦笑交じりに「炎上しちゃったよ」と語っていたという。

 

背景に宮内庁人事のねじれも?

 ぎくしゃくの背景には宮内庁人事をめぐる問題もあった、と先の『週刊新潮』も指摘しているが、他誌もそれを指摘。「AERA.dot」は7月22日配信記事でこう書いている。

《そもそもこの2人はともに警察庁出身で、加地大夫が4年上の先輩にあたる。西村長官は警視総監や内閣危機管理監などを、加地大夫は県警本部長や皇宮警察本部長など歴任してきたが、現在は後輩の西村長官が加地大夫の「上司」という関係にあるのだ。》

 後輩の西村長官が加地大夫の「上司」という人事のねじれが影を落としているのではないか、というわけだ。

女性週刊誌も一斉に報道したが…

 女性週刊誌も一斉に報道している。

『週刊女性』7月25日号は「佳子さま宮内庁のウソで結婚前倒し」と大きな見出しを掲げた。「宮内庁のウソ」と佳子さまの「結婚前倒し」がどう結びつくのかというと、記事の最後に関係者のこんなコメントが載っている。

「国民からの批判が多い別居騒動にケジメをつけるため、結婚を前倒しにして、できる限り早く皇室を離れるという選択も十分にありうるのです」。

 ちょっと飛躍という気がしないでもないが、同誌は8月1日号「佳子さまご傷心 寝ても覚めてもエゴサーチ」では、一連の騒動を、佳子さまがかなり気にしていると報じている。

『週刊女性』8月1日号(筆者撮影)
『週刊女性』8月1日号(筆者撮影)

宮内庁の広報体制…でも大事なのは

 宮内庁の広報のまずさ、と冒頭に書いたが、「広報室」新設後、宮内庁がどういう取り組みを行っているかは、例えば下記の毎日新聞が報じている。

https://mainichi.jp/articles/20230719/k00/00m/040/447000c

記者と一緒にメモを取る男性の正体は… 宮内庁広報室の仕事

 新しいことに取り組んでいるらしいことはわかったが、それではどうして今回の「佳子さま別居」騒動のようなことが起こるのか。前出の記事にも書かれているように、そもそも秋篠宮家と宮内庁広報の連携がうまくいっていない、あるいはもっと根本的なこととして、佳子さまと両親の間で、あるいは宮内庁との間で、佳子さま別居についての認識が共有されていないということなのだろう。

 問題は広報のあり方といった技術的なことでなく、この何年か、眞子さま結婚騒動などで噴出したいろいろな問題が皇室内部できちんと総括されていないのだろう。

 まあ、一般の家庭でも、娘と親のコミュニケーションが十分でないというのはごく普通のことだから仕方ないのかもしれないが、今回の「別居」には、佳子さまの何らかの意思が反映されている気がせざるをえない。

 そのあたりは皇室のあり方と関わる割と大事な問題のような気もするのだが、それが曖昧なまま、今回のような騒動になってしまうというのは、皇室がいま難しい局面を迎えていることの現われなのかもしれない。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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