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間もなくやってくる7月18日を「春友」さんこと三浦春馬ファンたちはどう過ごすのだろうか

篠田博之月刊『創』編集長
Rikosaramamaさんの鉛筆画(本人提供)

アミューズ株主総会で今年もその質問が

 6月26日、アミューズの株主総会が開かれた。夕方、ネットを見てみると、総会で三浦春馬さんに関して質問している人の音声が公開されていた。密かに録音してアップしたらしい。質問は、2020年7月18日の春馬さんが亡くなった時の詳細を教えてほしいという内容だった。会社側は、発表している以上のことは把握していないといった回答をしていた。株主総会会場前ではSNSを通じて呼びかけられたデモが行われていたようで、「きょうも三浦春馬さんの件でデモが行われているようですが…」と質問で触れた株主もいたという。総会会場前は厳重な警備が行われていたようで、デモは別の場所でも行われたという。

 その日、朝日新聞と読売新聞の朝刊にアミューズは見開き2ページの大きな企業広告を掲載。「感動だけが、人の心を撃ち抜ける」という特大の文字が躍っていた。アミューズにとっては、昨年、山梨県に本社を移し、新たな出発を告げる株主総会だったのだろうが、そこでもやはり春馬さんについてのことは避けて通れなかったようだ。

 春馬さんの突然の死に疑問を呈し、再調査や真相解明を求める声は、昨年秋からリアルデモとなり、今年に入ってからはさらに各地に拡散している。

 そして今年の7月18日が間もなくやってくる。昨年は一周忌ということで、アミューズは特別追悼の動画などを期間限定で公開したが、今年は6月29日現在、特別な取り組みは発表されていない。

 一方、春馬さんを偲ぶ人たちによる取り組みは拡大しており、今年も7月7日には全国で映画「天外者」などが特別上映される。4月5日の春馬さんの誕生日にも全国及び台湾の300館以上の映画館で「天外者」などが上映されたが、7月は春友さんたちにとっては大きな意味のある月になるはずだ。

さらに秋には「キンキーブーツ」3回目の公演

 今年はさらに10月・11月に「キンキーブーツ」の3回目の公演という大きなイベントが控えている。「キンキーブーツ」は春馬さんが力を入れて取り組んだミュージカルで、過去2回の春馬さんが出演した公演については、断片的に映像が公開されているが、DVD化を求める春友さんたちの強い要望が出されている。

 今年秋の公演は、春馬さん亡き後、他のキャストはほぼそのままで春馬さんが演じたローラの役を城田優さんに代えて上演するもので、既に公式ホームページが立ち上がり、プロモーションも始まっている。昨年秋にこの公演が発表された時には、春友さんたちの間に衝撃が走り、春馬さんのローラが上書きされてしまう、せめてもう少し待ってほしかった、と反発する声が多かった。

 そうした流れを受けて、今年秋の公演がどうなるか、主催者側もいろいろ気にしていることだろう。春友さんたちの反応もここへ来て、あくまでもローラは春馬さんのイメージなので秋の公演を観に行くつもりはないというものと、そうはいっても春馬さんの想いを受け継いだ秋の公演はやはり観てみたいというものと、二分されているようだ。

春友さんたちの「連帯」と「行動」

 YouTube配信「ほっこりカフェ」が6月24日に、創出版刊『三浦春馬 死を超えて生きる人Part3』の内容をまるまる1本の動画で紹介してくれた。

https://www.youtube.com/watch?v=PtKvRBVF_A8

 その中で主宰者の堀内圭三さんが、本を読んだ感想として、〈この1年間、春友さんたちに感じたのは「連帯」と「行動」です〉と語っていた。「連帯」とは、春友さんたちの連携が広がり、様々な交流が生まれていることをさしているのだろう。   

 そしてもうひとつ、春友さんたちの「行動」も着実に進んでいる。春馬さんを偲んでグリーフワークと呼ばれる活動を行うことを「春活」と呼ぶが、その春活の中では、初対面でも声をかけ合い一歩踏み出してみるという行動が広がっている。しかもそうした行動を通して、春友さんたちの想いは、何度にもわたる「天外者」などの特別上映だけでなく、様々な形で結実しつつある。着実に結果を出せているのがすごいところだ。

 春馬さんの映画を特別上映しているとして土浦セントラルシネマズはもはや「聖地」として知られているが、4月5日の各地での上映についてSNSを見ると、他の映画館でも春馬グッズを飾ったりと、春友さんたちが映画館に働きかけて様々な取り組みをするところが増えた。

 その春友さんたちから月刊『創』(つくる)編集部にも、三浦春馬さんをイメージしたいろいろな作品が送られてくるのだが、それらもどんどんグレードアップしていて、おーすごいと思わず声をあげそうになるものが増えた。この記事の冒頭に掲げたRikosaramamaさんの鉛筆画もすごいものだ。色鉛筆を使って彩色もしているので、とても鉛筆で描いたとは思えないほどの精緻な仕上がりになっている。

 このRikosaramamaさんともう一人、dekoさんこと銀屋純子さんの鉛筆画もすばらしい。作品を寄せてくれるなかでこの2人の鉛筆画はクオリティの高さで双璧だ。

dekoさんこと銀屋純子さんの鉛筆画(本人提供)
dekoさんこと銀屋純子さんの鉛筆画(本人提供)

 前述した「行動」という点では、銀屋さんは、三浦春馬さんの著書『日本製』を全国の図書館に寄贈するという「日本製届け隊」という活動も行っており、既に139冊を寄贈しているという。

春友さんたちの「我が家の春馬コーナー」

 春馬さんが亡くなってから間もなく2年がたつわけだが、春友さんたちの熱量に衰えはない。最近、春友さんたちに「我が家の春馬コーナー」の写真を送ってほしいと呼びかけたところ、たくさんの写真が届いた。なかには驚くようなものも少なくない。例えば調布市在住の春友さんの写真を紹介するが、「春馬コーナー」といっても家の一角にそれがあるというイメージでなく、部屋中が三浦春馬なのだ。

調布市在住の春友さんの「我が家の春馬コーナー」(本人提供)
調布市在住の春友さんの「我が家の春馬コーナー」(本人提供)

 もうひとり別の春友さんの写真だが、春馬コーナーに食事が置かれている。これは「陰膳」(かげぜん)といって亡き人を偲んで食事を供するという風習だが、この方は、毎日、この陰膳をやっているのだという。本人のメッセージを紹介しよう。

「陰膳は一日一回は最低やってます。だいたい朝か昼。夜はダンナがいるからやりにくい(えへへ)。あとはおやつ食べる時とか、気が向いたらお供えしています」

「春馬コーナー」の陰膳(本人提供)
「春馬コーナー」の陰膳(本人提供)

 こうして紹介していると春友さんたちの熱い想いに改めて感心する。『創』はこの2年間、毎号、春友さんたちの写真や投稿を掲載しているのだが、編集していて思わず胸が熱くなるようなものが多い。最後に、宮崎県のみほさんのメッセージを紹介しておこう。このメッセージも読んでいて目頭が熱くなった。 

あれから2年経ってわかったこと

《あれからもう2年が経ちます。あんなに苦しくて毎日泣いていた私はもういなくて、やはり時間の流れを感じずにはいられません。

 あの日、気持ちを消化できずに書き殴った日記には「もう○年生きてきたから、この苦しさがずっと続かないことは知ってるし、時間が解決することも知ってる」と書かれていました。

 貴方自身を忘れることはないけれど、人は忘れるから生きていけるのだと聞いたことがあります。あの時のように苦しいままの日々が続けば、それこそ生きていけなかったかもしれない。また、人は声から忘れていくのだそうです。けれども、こんなにたくさんの作品を残し、毎日どこかしらで声が聞けるこの環境で、忘れようにも忘れられるはずがありません。

 貴方のように生きようと誓った想いは、いつの間にか薄れてしまっています。落ち込んで、悲しくて、怒る元気もなく、誰にでも優しくできたのはせいぜい1年くらいでした。生きる希望をなくし、どうせ死ぬならと断捨離した部屋は物で溢れています。

 貴方も私のように、本当はただの人間だと思いたかったのですが、完璧な人間の貴方しか知らず、嫌なところを見つけられないばかりに、沼にハマって抜けられなくなっています。嫌いにさせてくれたら、と何度思ったことか。会うことの叶わない人をこれからも想い続けていくのか、と怒りにも似た感情が湧いてきます。例えば、貴方がどんなに勘弁してくれ、と言っても忘れてやるもんか。あれから2年経つけれど、毎日貴方を想っています。今日も貴方を想っています。

 この1年で私は、全くと言っても良い程に興味のなかったSNSを始めて、今はそこで繋がった春友さん達に支えられています。春馬くんがいない事実や、小さなニュースに傷付く気持ちを忘れさせてくれる、大切な場所になりました。

『創』にも大変お世話になりました。皆さんの投稿を拝読して、同じ気持ちの方がいることを知って励まされたり、他の雑誌にはない記事に心が安らいだり、空羽ファティマさんの文に共感したり。

 1人でじっと時間が過ぎるのを、泣きながらでも待っていたらいつかは大丈夫になると信じて、1年近くはそうして過ごしてきました。けれど、涙は一向に止まらないし、気持ちは落ち着かないし、誰にも言えないし。

 2年経ってわかったことは、誰かに想いを吐き出すことがグリーフワークには必要だということでした。同じ想いを共感してくれる人たちが、否定せずに聞いてくれることは、私にとって救いになりました。まだ悲しみのどん底にいる方は、誰かに想いをたくさん話してほしいと思います。それが顔もわからない見知らぬ誰かであっても。》

 春友さんたちは、今年の7月18日をどんなふうに過ごすのだろうか。

月刊『創』

http://www.tsukuru.co.jp/

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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