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開催された「再審法改正をめざす議員と市民の集い」は大きなうねりのステップになるか

篠田博之月刊『創』編集長
集会で挨拶する日弁連副会長(筆者撮影)

 2022年5月27日、衆院議員会館で「再審法改正をめざす議員と市民の集い」が開催された。コロナ禍の中だが会場へ直接訪れた人は約100人、そのほかYouTubeでオンライン視聴した人も多かったと思う。録画された動画はこの後もYouTubeで視聴可能だ。

https://www.youtube.com/watch?v=68WRFkmkT_M

 冒頭から全編視聴すると2時間以上かかるので、下記内容から判断していただき、目当ての部分ごとに視聴するのもよいかもしれない。

 集会を主催したのは「再審法改正をめざす市民の会」。今回の集会は結成3周年を記念してのものだ。

「再審法改正をめざす市民の会」は冤罪被害者や弁護士、大学教授などが運営委員を務めており、私も運営委員のひとりだ。これまでの活動については下記のホームページに詳しい。

https://rain-saishin.org/steering/

日弁連、市民の会、国会議員が一堂に会したことの大きな意味

 この日の集会は、再審法改正に本格的に取り組む姿勢を見せている日本弁護士連合会(日弁連)が後援。日弁連、市民、国会議員が集まって集会を開催したという、そのことが大きな意味を持っている。

 そもそも再審法改正の目的や内容とは何なのか。それについては上記の「市民の会」ホームページに説明が載っている。最近の動きや経緯についてはヤフーニュースに先ごろ書いた下記の記事を参照してほしい。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20220525-00297738

再審法改正めざす大きな動きが始まりつつある!5月27日に大集会も

 5月27日の集会は、冒頭でいろいろな冤罪事件の被害者が発言する動画(なかなかの力作だ)が映された後、「市民の会」運営委員の水野智幸・法政大教授による開会挨拶。そして日弁連の秀嶋ゆかり副会長の激励挨拶、さらに国会議員のアピールなどが続いた。法改正のためには国会議員の取り組みが欠かせないわけだが、自民党を始め、立憲民主党や社民党、共産党など超党派で取り組む態勢が既にできつつある。

袴田議連事務局長の鈴木貴子議員(筆者撮影)
袴田議連事務局長の鈴木貴子議員(筆者撮影)

 国会議員で最初に挨拶したのは、再審請求中の袴田事件の支援をずっと続けてきた袴田議連事務局長である自民党の鈴木貴子議員だった。自民党からは複数の議員が挨拶したが、野党議員も続々。社民党の福島みずほさんらも途中で駆け付けてアピールを行った。

 第1部の基調講演を行ったのは鴨志田祐美弁護士。大崎事件弁護団事務局長として東奔西走の活躍を続けているが、「再審法改正をめざす市民の会」運営委員であるとともに「日弁連再審法改正に関する特別部会長」も務めている。

 その日は午前中、悪天候で新幹線が80分も遅れたそうで、一時はもう間に合わないかと思った、という前置きをして本題に入った。再審法改正をめぐる問題についてパワポを使ってわかりやすく解説したもので、ぜひ動画で視聴してほしい。

左から周防監督、桜井さん、金監督(筆者撮影)
左から周防監督、桜井さん、金監督(筆者撮影)

 第2部は冤罪犠牲者としてこれまた日本中を飛び回っている布川事件元被告の桜井昌司さんと、「再審法改正をめざす市民の会」共同代表の一人でもある周防正行監督、そして桜井さんを追った映画『オレの記念日』の金聖雄監督による鼎談だった。

 桜井さんはがんの診断を受け、余命まで宣告されているのだが、この日も会場に元気な姿を見せた。

 その後、冤罪被害者やその関係者のメッセージビデオの上映。かつて東電OL殺人事件と呼ばれた冤罪事件の被害者ゴビンダさんが海外からもメッセージを寄せたのが印象的だった。

国会請願署名2万余人分(筆者撮影)
国会請願署名2万余人分(筆者撮影)

 会場には再審法改正をめざす2万余の国会請願署名も置かれていた。

 最後に「市民の会」運営委員の指宿信・成城大教授が閉会挨拶。これもなかなか興味深い話だった。

 再審法改正をめざす人たちが一堂に会したこの集会が、今後拡大していく大きなうねりのひとつのステップになることは間違いない。この動きが今年後半、さらに大きなものになっていくのは確実だが、再審法改正という歴史的ともいえる改革、これからどうなっていくだろうか。

 この1年ほど、新聞・テレビなどのマスコミもこの動きを取り上げるようになっているが、再審それ自体が市民にいまいちなじみがないし、何が問題でどう変えるべきなのか、そもそもわかりにくいテーマだ。改革への動きを進めるためにはマスコミの報道も欠かせない。様々な事件を報じているマスコミにとっても大事な問題なのでぜひ取り組んでいただきたい。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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