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テレビ各局がアニメに一気に注力!新しい動きのTBS、日本テレビ、NHKを追った

篠田博之月刊『創』編集長
『劇場版 転生したらスライムだった件』(左)と『プラチナエンド』(本文参照)

『鬼滅の刃』の世界的大ヒットを受けて日本のアニメに対する国際的な需要が伸び、アニメビジネスが爆発的に拡大している。配信の環境が整ったことや、コンテンツが海外市場に売れるようになってビジネスの規模が大きくなったことなど、様々な要因が重なり、テレビ局はアニメビジネスを一気に加速しつつある。

 これまで比較的後発と言われてきた局も、日本テレビがアニメ事業部を新設して快進撃を行っていたり、TBSが水面下でかなり取り組みの体制を作っていたりと、アニメビジネスへのシフトを急速に強めている。

 ここではその中から、TBS、日本テレビ、NHKの取り組みを紹介しよう。

 ちなみに冒頭に掲げた写真は左が日本テレビが関わる『劇場版 転生したらスライムだった件』(C:川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会)、右がTBSが放送していた『プラチナエンド』(C:大場つぐみ・小畑健/集英社・プラチナエンド製作委員会)だ。

 さて何といってもニュース性があるのがTBSの取り組みだ。同局が水面下でどんな準備を進めているのか、これまではほとんど知られていなかった。今回、かなり詳しく話していただけたのは、ちょうどこれから対外的に明らかにしていこうと同局が考えていた時期だったからだろう。まずはその内容から紹介しよう。

TBSがアニメ事業への大きな取り組み

 TBSのアニメ事業への取り組みについては、メディアビジネス局の渡辺信也映画・アニメ事業部長に聞いた。ちなみにTBSが映画・アニメ事業部を新設したのは7年前、当時もアニメに力を入れようとしたようで土曜朝7時に全国ネットのアニメ枠を新設。『新幹線変形ロボ シンカリオン』などキッズ向けの作品を中心に放送したが、その後番組改編によりアニメ枠でなくなった。

「TBSでは現在、木曜深夜に関東ローカルのアニメ枠を持っており、3月まで集英社のコミック原作の『プラチナエンド』という大人気タイトルを2クール放送していました。4月からは同枠で『まちカドまぞく2丁目』という、以前製作した作品のパート2を放送します。この枠で放送するアニメについては、基本的にTBSが出資し、製作委員会の幹事を務めています。

『鬼滅の刃』の世界的大ヒットは弊社に対してもインパクトが大きく、今一度アニメに注力しようという意識が高まっています。『VISION2030』という、2030年を見据えた中期経営計画があるのですが、その中にも『アニメへの投資を本格化させる』という方針が謳われています。

 できれば劇場用アニメにもトライしたいと考えています。私が以前プロデューサーを務めた『シンカリオン』も、テレビアニメ放送の後に東宝映像事業部の配給で、劇場用アニメを製作しましたが、テレビから映画という流れがまた作れたらと思います」

 アニメに本格的に取り組むという方針は着々と実行に移されつつあるらしい。

「この1月に発表したのですが、セブンアークスというTBSグループ内のアニメ制作スタジオに25億円の投資を行い、潤沢な製作費をかけてハイエンド作品を作れるスタジオにすべく、人材と設備の強化を進めています。

 またグループ内には、DeNAさんと一緒にやっているマンガボックスというマンガアプリの会社もあります。現在私の部が行っているのはアニメの企画に出資してビジネスを行うことですが、将来の理想として、マンガボックスで産まれたIPをアニメ化し、その制作をセブンアークスで担い、アニメ事業を頭からケツまで全てグループ内で完結することができたらと思います。

 さらにこの春、TBSグループ内に海外プラットフォーム向けの新事業会社が立ち上がりました。地上波の放送を前提とせず、世界に向けてTBSブランドの映像作品を届けることを目指す会社なのですが、アニメ事業も関わっていくことになると思います。

 映画・アニメ事業部の人員増強は昨年7月から始まっており、局内異動だけでなく、グループ会社からも増やしました。昨年キャリア採用も行いまして、この4月に入社する新しいメンバーもいます」(渡辺部長)

 先頃、『呪術廻戦』をゴールデンタイムに放送したことも話題になった。

「劇場版が大ヒットした『呪術廻戦』は系列局であるMBSが製作委員会に参加していますが、その関係でTBSも今年、1月10日と2月23日の2回にわたってゴールデンタイムに全国ネットで『呪術廻戦』を編成しました。これは今までになかなかなかった取り組みで、アニメにかけるTBSの姿勢をアピールできたと思います」(同)

昨年アニメ事業部新設!日本テレビの積極方針

 日本テレビは2020年10月にアニメ事業部を新設し、アニメ事業に大きく舵を切った局だ。それまでも『名探偵コナン』を放送しているイメージがあったが、これは日本テレビ系の読売テレビの制作。日本テレビがアニメを冠する部署を作るのは、実はこの時が初めてだ。アニメに対する海外の関心の高まりを見て、アニメに本格的に取り組む必要性を感じて旗揚げをしたのだった。

 アニメ事業部はグローバルビジネス局に属し、担当局次長を兼務する桑原佳子部長はそれまで3年半、海外事業部長を務めていた。ちょうど1年前に話を聞いた時、アニメ事業部新設の背景をこう語っていた。

「私は海外事業を5年半くらい担当してきて、日本のアニメに対する海外の関心が高いことを痛感してきました。これまで国内のアニメ制作を行ってきたチームと海外事業のチームが合体してできたのがアニメ事業部、海外へのセールスと配信が大きな柱です。

 アニメ事業部を立ち上げてから、海外企業のトップから直接話をしたいという申し出も多く、大きな反響に驚いています」

 日本テレビはそれまで火曜深夜に関東ローカルのアニメ枠があったのだが、昨年4月から土曜の24時55分からアニメ枠を新設。取り組みの第一弾として講談社のマンガ原作の『EDENS ZERO』を、日本テレビ系全国30局という大きな取り組みで放送した。

 その後も同局は、後発といいながら大きなアニメ作品に関わることになっているのだが、やはり民放トップの視聴率を誇る全国放送局ということへの評価が後押ししているのだろう。今年で言えば、『転生したらスライムだった件』という大きな作品に関わることになった。

 桑原部長に話を聞いた。

「今年2022年11月に『転生したらスライムだった件』シリーズ初の劇場版が公開されますが、日本テレビでは、この4月から土曜深夜アニメ枠でテレビシリーズ第1期を放送します。以前はTOKYO MX等で放送された作品ですが、今回は日本テレビ系30局で全国展開をして、『転スラムービーイヤー』を盛り上げていきます」

 その後の展開についてはまだ発表できる状態ではないというが、日本テレビがその後もこの作品に関わろうとしているのは間違いないだろう。11月公開の劇場アニメは『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』だが、これも既に多くの期待が寄せられている。

 土曜深夜のアニメ枠には、昨年4月クールの後、10月からは『ルパン三世』を放送した。以前から日本テレビが関わってきた作品だが、リアルタイム視聴率もしっかりとるなど好調だった。

 アニメは今、多くの会社が名乗りをあげて製作が追い付かない状態になっており、3年先を見据えた競争が展開されている。日本テレビとしては、将来に備えた強化策を次々と打っているところだ。

「この3月、キャリア採用の募集をかけ、アニメのプロデュースとビジネスとそれぞれ経験者を採用します」(桑原部長)

 火曜深夜のアニメ枠では今年4月から講談社のマンガ原作の『トモダチゲーム』が放送されている。昨年7月クールに放送したアニメ『月が導く異世界道中』は、海外販売が同局史上最高額だったという。ちなみにこのアニメはMBS毎日放送、TOKYO MX、BS日テレで放送。関東と関西で系列でない局が取り組むというケースは、アニメの場合増えているそうだ。

 前述したように日本テレビで放送されている読売テレビ制作のアニメ枠は、土曜日の17時半と18時の2つ。後者は『名探偵コナン』の放送枠だが、前者には昨年『僕のヒーローアカデミア』が放送されるなど強力なラインナップだ。

『進撃の巨人』『キングダム』NHKのアニメへの取り組み

 この何年か、アニメへの積極的な取り組みが目につくのはNHKもそうだ。最近で言えば『進撃の巨人』と『キングダム』の放送だ。『進撃の巨人』はこの3月までThe Final Season Part2が放送されており、4月からは『キングダム』第4シリーズが放送されている。『進撃の巨人』は既に原作は最終巻まで発売されているが、アニメはまだ続き、来年最終回を迎える予定だ。

 こうした話題作を放送しているアニメ枠はNHK総合の日曜深夜24時05分からだが、4月にはこの枠が土曜深夜24時に移設された。そのほかNHKはEテレで『きかんしゃトーマス』や『おしりたんてい』など子ども向けのアニメをたくさん放送している。

 こうしたアニメ枠の位置付けについて、編成局の下要・編成主幹に聞いた。

「総合テレビの深夜枠は、話題性のあるアニメを放送するという位置づけです。10代から30代の、このアニメを見るためにNHKに接してくれる人たちへ向けたものを放送しています。NHKで必ずしも制作しているわけでなく購入して放送する作品もありますが、若い人たちにも楽しんでいただける話題作を積極的にお届けしようと考えています」

『進撃の巨人』は長期にわたる作品で、NHKが放送し始めたのは2018年7月放送のSeason3から。その後、The Final Seasonが20年12月からと22年1月から放送されていた。

『キングダム』は、最初はBSだったが、第1話からNHKが放送。一度中断したものの、2020年度から6年ぶりに復活し現在に至っている。「アメトーーク!」で話題になったり、実写映画が公開されたりという盛り上がりを受けて、NHKとしても再び取り組もうということになったという。ただし以前は制作にも関わっていたが、今は『進撃の巨人』と同じく購入して放送する形だ。

 若い視聴者を獲得する狙いがあることは理解できるが、実際にはどういう見られ方をしているのだろうか。

「『進撃の巨人』は、録画視聴されている方も多いのですが、20~40代の男性によく見られています。この番組だけNHKを見るという限定的な視聴者もいるというのが特徴です」(下編成主幹

 編成局の吉國勲チーフ・プロデューサーが補足する。

「『進撃の巨人』は10~20代の視聴者も多いのですが、『キングダム』は40~60代が中心です」

 このところ民放も、強いアニメ作品には積極的に関わろうとしており、ある種の争奪戦が繰り広げられていることは想像に難くないが、その中でNHKの強みといえば、やはり全国一斉放送ということなのだろう。

 坂田淳チーフ・プロデューサーがこう語る。

「全国で同時に見られるということの意味は大きいですね。放送を見ながらファン同士がツイッターなどで盛り上がるというのがアニメの見られ方のようですから。購入アニメの、放送後の外部での配信についてはNHKは関わっていないのですが、最初に放送するという意味は大きいと思います」

『不滅のあなたへ』(C:大今良時・講談社/NHK・NEP)
『不滅のあなたへ』(C:大今良時・講談社/NHK・NEP)

 NHKが制作を行ったアニメで話題になったのは、大今良時さんのマンガが原作となった『不滅のあなたへ』だ。

「昨年4月よりEテレで月曜22時50分から放送したものですが、クオリティが高く、NHKで制作したアニメの中では、かつてないほど海外でも配信されました。Eテレでは『おじゃる丸』や『忍たま乱太郎』など子ども向けのアニメをたくさん放送していますが、『不滅のあなたへ』は大人向けに本格的なものを作ろうという取り組みで制作されたものです」(下編成主幹)

 NHKが制作したアニメの外部での海外配信については、関連団体のNHKエンタープライズが担うケースがほとんどという。

「『不滅のあなたへ』以外でも海外配信で広く見られた作品があります。『魔入りました!入間くん』も特にアジア圏ではすごく人気があります」(吉國チーフ・プロデューサー)

 NHK総合とEテレでアニメが編成されていることは前述したが、枠をどこに設定するかについてはいろいろな検討がなされているようだ。

「月曜22時50分からの大人向けアニメということで『不滅のあなたへ』が放送されたのですが、この枠は21年度から日曜19時に移設されています。『不滅のあなたへ』第2シリーズは22年秋から放送されます。大人向けあるいは家族が一緒に見る作品をという枠ですが、21年度は『ラブライブ!』シリーズの最新作『ラブライブ!スーパースター!!』の放送や、『映像研には手を出すな!』や『プラネテス』の再放送などをしてきました」(下編成主幹)

 4月から始まった22年度では、Eテレのアニメ枠はさらに2枠ほど増えるほか、Eテレ全体の大幅改編のなかでアニメの編成も近年なかったほど大きく変わっている。特徴的なのは水木金の平日19時台にアニメを並べるという改編だ。

「多様なアニメ作品をどう編成するか、NHKが制作するものと購入してくるものをどう組み合わせて効果的な編成をしていくのかなど、いろいろ考えながら取り組んでいます」(同)

 アニメには今後も積極的に関わっていこうという方針のようだ。

 これ以外のテレビ局の取り組みについては、月刊『創』5月号に掲載したレポートを下記のヤフーニュース雑誌で公開しているのでご覧いただきたい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/b67634a25306369949c1986bee4305c22f8742ba

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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