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誕生日会見での「眞子さま結婚」問題についての天皇発言をどう考えるべきなのか

篠田博之月刊『創』編集長
天皇会見発言についての週刊誌報道は…(筆者撮影)

「眞子さま結婚問題」についての天皇のコメント

 2月23日の天皇誕生日に先立って19日に収録された会見で天皇が「眞子さま結婚問題」について発言した部分が話題になっている。発言全文は既に新聞やテレビなどで報じられており、宮内庁のホームページでも見ることができる。

 眞子さま結婚問題についての発言はこうだ。

《眞子内親王の結婚については、国民の間で様々な意見があることは私も承知しております。このことについては、眞子内親王が、ご両親とよく話し合い、秋篠宮が言ったように、多くの人が納得し喜んでくれる状況になることを願っております。》

 その日の会見で天皇がこれに言及することは関心を呼んでおり、宮内記者会と宮内庁の間でも議論と応酬があったようだ。記者会は事前に5つの質問を提出することになっており、そのうち3番目まではカメラ撮影が認められている。記者会と宮内庁の応酬で、この質問は3番目に入れられた。

 今年の誕生日会見での目玉はこの3番目だった。特に週刊誌などは事前にそれについて誌面化する予定を組んでいたようだ。皇室や宮内庁もそれが内容如何では大きな報道になることを認識していたはずだ。

 実際の「眞子さま関連質問」に対する天皇のコメントは、踏み込むのを避けて当たり障りない内容にとどめた印象を受けた。でも週刊誌の受け止め方はそうではなかったようだ。

 2月25日発売の『週刊新潮』3月4日号の見出しは「天皇陛下が『眞子さま』に苦言!『結婚には国民の納得が必要』」、『女性セブン』3月11日号は「天皇陛下、眞子さまへ『聞く耳を!』痛烈注文」だ。

 このあたりまではわからないことはない。《眞子内親王が、ご両親とよく話し合い、秋篠宮が言ったように、多くの人が納得し喜んでくれる状況になることを願っております》という発言をそう解釈したのだろう。

『週刊文春』は「結婚にNO」という強い見出し

 気になったのは『週刊文春』3月4日号の、かなり踏み込んだ見出しだ。

「天皇がついに”裁断”眞子さま小室圭さん結婚に『NO』」

 うーん、こういう解釈が可能なのだろうか。週刊誌の記事そのものは読まずに、車内吊りや新聞で見出しだけを目にする人は多いから、これは影響も大きかったはずだ。

 記事本文を読むとこう書いてある。

「つまり、現状のままではお二人の結婚に『NO』を突き付けざるを得ないという”裁断”を、天皇が公の場で示されたのだ」

 昨年11月の会見で秋篠宮は眞子さまの結婚を認めたかのような報道がなされたが、秋篠宮は決して同意したわけではない、と記事中で秋篠宮家関係者がこう強調している。

 「会見で結婚を認めるとおっしゃったのはあくまで〈婚姻は両性の合意のみに基づく〉という憲法第二十四条を念頭に、二人が合意しているならば憲法上は止めようがない、という意味でお話しされたもの。本音では最終盤に述べられた『結婚と婚約は違います』の部分です」

 その弟の気持ちを理解したうえで、天皇自身がそれに同調するという気持ちを示したのが今回の発言だというのだ。

昨年11月の秋篠宮会見と眞子さま「お気持ち」文書

 昨年の秋篠宮誕生日会見での発言は、11月20日に収録されたものだが、その1週間前の11月13日に、眞子さまのいわゆる「お気持ち」文書が出されており、それを受けてのものだった。その文書で眞子さまは、結婚の意志が堅いことを強調したのだが、その中にこういうくだりがあった。

「天皇皇后両陛下と上皇上皇后両陛下が私の気持ちを尊重して静かにお見守りくださっていることに、深く感謝申し上げております」

 あたかも自分の結婚を天皇夫妻が黙認しているかのような表現だったが、これも事実と違うと関係者が語っている。

 前出『週刊新潮』3月4日号で、「秋篠宮家の事情を知る関係者」がこうコメントしている。

「”気持ちを尊重して静かにお見守り”とは、文書をしたためられた眞子さまの受け止め方であって、陛下のご様子を客観的に描写したものではありません。ところがそれを眞子さまは『陛下がご結婚を応援してくださっている』と解釈なさってしまった。そこが大きなズレとなったわけです」

 今回の会見での天皇の発言は、それらの経緯を念頭に置いてなされたものというのが週刊誌の見方であるようだ。

 確かに天皇がそうした経緯を踏まえて、自分たちがあたかも眞子さまの結婚に同意しているかのような受けとめ方に対して、実はそういうことでもないのだと、バランスをとろうと考えた可能性はあるかもしれない。

 ちなみに眞子さまの「お気持ち」文書はかなり強いメッセージで、その意味するものについては当時、このヤフーニュースに書いたので参照してほしい。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20201122-00209109/

眞子さまの結婚宣言「お気持ち」文書の大波紋とバッシング報道の背景にある皇室タブー

発言の真意はいったいどうなのか

 そのあたり真相はどうなのか。天皇会見の発言の微妙なニュアンスや背景を週刊誌は読み取っているのだが、実態はわからない。日本の週刊誌は基本的に眞子さまと小室圭さんの結婚に反対するキャンペーンを張ってきたから、その意味でバイアスがかかっているという見方もできる。

 23日の天皇誕生日を受けて25日発売の『週刊新潮』『女性セブン』『週刊文春』が掲載したのは前述したような記事だった。週明けには『週刊朝日』など他の週刊誌もこの問題を取り上げるだろうから、それらを踏まえて、この件、引き続き検証を続けたい。

 それにしてもいつも思うのだが、新聞・テレビは皇室については踏み込んだ論評をいっさいせず、今回の天皇会見も内容をそのまま伝えるのみだ。それゆえそれについての背景を探るには週刊誌報道を見るしかないのだが、週刊誌も全体として眞子さまと小室さんの結婚には反対で、見出しなどはその方向にそったものであることが多い。もう少し多様な見方が提示されるようになってほしい…と皇室報道を見ていて思う。

 そんなことを感じながら週刊誌を見ていて逆の意味でいささか驚いたのが『女性自身』3月9日号「眞子さま”結婚確定”で新婚生活へ猛進!『圭さんとのタワマン』物色中」だった。もう2人の結婚は確定的で「10月までに結婚される可能性が高い」という皇室ジャーナリストのコメントも載っている。もちろんこの記事は天皇誕生日会見以前のものだが、いったい真相はどうなのだろうか。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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