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伊勢谷友介さん薬物事件と大麻について専門家に改めて聞いた

篠田博之月刊『創』編集長
伊勢谷友介さんはこれからどうなる!?(写真: ロイター/アフロ)

 俳優の伊勢谷友介さんが2020年9月8日に逮捕され、30日に保釈された。芸能人の薬物事件が続いているが、伊勢谷さんの場合は覚せい剤でなく大麻だったことで、改めて大麻がクローズアップされた。

 これまで『創』では、田代まさしさんや高橋祐也さん、元体操選手の岡崎聡子さんなど様々な薬物事件について、当事者の手記を含めて取り上げてきたが、それら覚せい剤のケースと大麻はどう違うのだろうか。

伊勢谷さん逮捕を報じるスポーツ紙(筆者撮影)
伊勢谷さん逮捕を報じるスポーツ紙(筆者撮影)

 

 10月7日発売の月刊『創』11月号でロングインタビューに応えていただいたのは、精神科医の松本俊彦さんだ。肩書は国立精神・神経医療センター精神保健研究所薬物依存研究部長。これまでも有名人の薬物治療にあたってきたし、この問題についてたびたびテレビなどで解説を行っている。『創』とは、松本さんが相模原障害者殺傷事件の厚労省の検証委員会委員だったことでおつきあいが始まり、何度も登場いただいている。

 その松本さんのロングインタビューはかなり詳細で長いので、全文は『創』11月号で読んでもらうことにして、ここでは主な内容を紹介しよう。松本さんは第一人者と言うべき専門家として知られているが、薬物依存と治療については独自の見解を持っている。事件のたびに依存者を叩き回る風潮や報道のあり方にも批判的だ。そのへんも含めて、ぜひインタビューを読んでいただきたい。

相も変わらぬバッシング報道

――人気俳優の伊勢谷友介さんが大麻取締法違反容疑で逮捕された事件について松本さんはいろいろ発言もされています。まず、この事件をめぐる報道の全体的な印象からお話しください。

松本 相変わらずといった感じです。芸能人の薬物事件のたびに思うことですが、バラエティやワイドショーを中心にひどいバッシングがされています。

 ただ少し悩ましいのは、伊勢谷容疑者(インタビュー時点では起訴されておらず、容疑者とした)がいろんな芸能人と恋愛関係にあったようで、その中でDVの話などが出てきました。一方で慈善事業というか、学校を経営したりとか好ましい活動をしているんですが、女性に対するDVの話と大麻の話がごっちゃにされて、大麻使用者の凶悪なイメージが煽られている感じがします。

 個人的には彼は俳優として味があるというか、他の人には代えの効かない芝居をする方じゃないかと思っています。芝居自体にも、少し狂気めいた役柄もあったりして、そこが逆に彼の私生活の情報の漏洩とともに、非常に嫌なイメージを作られてしまっているような気がします。

精神科医の松本俊彦さん(筆者撮影)
精神科医の松本俊彦さん(筆者撮影)

 

 それは彼自身の今後の社会復帰にも足かせになるだろうし、大麻に関していろんな議論がある中で、ネガティヴなイメージづくりがされてしまったのではないでしょうか。

大麻と覚せい剤の違いとは…

――大麻については、海外の一部地域では合法化の動きが進んでいると言われますが、覚せい剤との違いをどう考えるべきなのでしょうか。

松本 大麻が100%安全と言うつもりはありませんが、アルコールやタバコもそうであるように、嗜好品である以上、良い部分もあれば害になる部分もあります。

 そもそも大麻の規制に関する歴史を辿ってみると、大麻乱用による健康被害の実態がないまま、まずは米国を中心に強力な規制が始まったことについて、多くの方に情報が共有されていない現実があります。

 同じように日本においても、大麻に関する乱用の実態がないにもかかわらず、第二次世界大戦後にGHQの指導で法律ができて、規制された。覚せい剤の場合には、明確な乱用の実態がありましたが、大麻はそうでない。最近になって様々な研究が行われるようになりましたが、特に米国を中心に、大麻は研究目的でも使うことを禁じられていた時代も長く続いていました。ですから、大麻が中枢神経系にどのような影響を与えるかとか、あるいは人間が使った場合どのようになるのかということに関して、信用できるデータがそれほどないんですね。

 だから、「どういう害があるの」と聞かれても、根拠をきちんと示せと言われたら「なんかよくわからないな」というふうに、しどろもどろになってしまいます。

 もちろん、細胞を用いた実験とか、あるいはネズミ等の小動物を用いた実験といった、基礎医学的なデータはあります。ただそれを言ったら、アルコールでもカフェインでも動物に投与する実験ではいろいろおかしなことが起こるわけで、問題は人間が使った場合にどうなのか。それに関してそれほど臨床的な研究が蓄積されているわけではないということです。大麻に関しては根拠のない情報が先行してしまっているような感じはありますね。

大麻の影響については専門家の間でも議論が

――覚せい剤の場合は問題のある行動や後遺症などが指摘されていますが、大麻については曖昧なんですか。

松本 薬物の後遺症に関してはいろいろ議論があるんですが、まず覚せい剤の場合には第二次世界大戦後に軍需品だったヒロポンが市中に出て、それが社会問題になったという現実があります。精神科医療機関でも、多数の覚せい剤誘発性精神病患者の治療が行われました。そしてその後覚せい剤取締法ができました。法律として規制することがどこまで奏功したかという別の議論はあるんですけど、いずれにせよ、法律の根拠となる乱用実態はあったのです。

 しかし、大麻に関しては、大規模なきちんとした研究が日本国内であるわけではないんです。海外ではそれなりの数あるけれど、結果に関しては様々な議論がある。

 そうした海外の研究知見のなかではっきりしているのは、10代から始めると良くないだろうということです。依存を形成したり、後遺症と思われる症状が出てきたり、統合失調症に似たような慢性精神病が出てくるケースがあることは報告されています。

 ただ、この知見に関しても、慎重に吟味する必要があります。メンタルヘルスの問題を抱えている人ほど大麻を使うとも指摘されているので、後遺症なのか、元々あった精神障害が顕在化したのか、まだ議論の決着は見ていません。

 例えば国内で私どもが行っている全国の住民調査とか、あるいは全国の中学生の調査では、生涯使用経験率が一番高い薬物は大麻なんです。でも嗜好用に使われている割には、医療の中ではあまり浮かび上がってこない。

 病院に来ている薬物依存症の方たちが主にどの薬物を使っているかというと、ダントツに多いのが覚せい剤で、薬物依存症患者のおよそ半数を占めます。残りの半数は、2割が処方薬(睡眠薬や抗不安薬)で、2割が市販薬。あとの1割は、コカインやLSD、ヘロインなどのその他諸々の薬物で、その中に大麻も含まれています。

 そう考えてみると、生涯経験率が高い割には、精神科医療現場や私たちがやっている全国規模の患者調査の中では、意外に少ないという印象はあるんですよ。

 実際に外来に来ている患者さんたちを見ていると、大きく二つに分類できるんです。一つは、元々何らかの精神障害があったり、あるいはとても深刻なトラウマや身体的疼痛があったりとかして、そうした心身の苦痛を緩和させるのに大麻がすごく役に立って、使っているうちにやめられなくなってしまった人。これが半分です。

 残りの半分は、大麻取締法で捕まって、保釈になったけれど少しでも軽い刑をもらいたくて病院に行って治療プログラムを受けましたとか、あるいは病院で依存症は重篤でないというお墨付きをもらえないかと思ってきている人たちです。

 その残りの半分の患者がどんな人であるかを思い浮かべてみると、割と多いのがミュージシャンやサーフボード店の店長とかで、それこそ若い時から毎日タバコと同じような感覚で大麻を使用して、20年、30年、ずっとやってきたという方たちです。

健康被害の重篤さと規制の重さは一致しない

――相模原事件の植松聖死刑囚についても、精神鑑定などで大麻の影響が議論されましたが、本人は事件には全く影響を与えていないと主張しています。医学的にその辺りの真偽はわからないのですか。

松本 大麻の中にある最も中枢神経に効果を与える成分は、THC(テトラヒドロカンナビノール)というものです。動物実験レベルでも異常行動が起こることが確認されているし、一定の依存性があることも確認されています。

 さらに、THCを高濃度にした大麻関連商品があるんです。我々は大麻というと、葉っぱを乾燥させた乾燥大麻を指しますよね。マリファナとかガンジャとかと言われるもの、あるいはジョイントみたいにタバコタイプにするものですが、そのほかにもリキッドと言われる液状製品とか、ワックスと言われる樹脂製品もあって、それはすごくTHCの濃度が高いんです。これが脳の機能に強く影響することは明らかになっています。   

 しかし、俗に大麻とかマリファナとか言われる乾燥した葉っぱを吸うことが、どれほどの精神障害を起こすのか、それを使った人のどのくらいがおかしな行動を起こすのか、また、もしもおかしな行動を引き起こすとすれば、それは酒を飲んだ場合と比べてどの程度のおかしさなのか、というデータがきちんとあるわけではありません。

 もちろん体質的に合わなくてそういう症状に陥る人もいるし、いろいろなケースがありえます。ただそれを言うと、お酒だってそうですよね。体質的に全然合わない人がいたり、そんなに飲んでないのに病的な酩酊状態になったりする人もいます。そもそも、実は医学的な健康被害が重篤だから規制されているとは限らないんです。このことは、薬物依存症の専門家ならば誰もが知っていることです。

 医学誌『ランセット』に2010年に掲載された有名な論文があって、英国のDavid.nuttという薬物問題を専門としている精神科医がたくさんの研究者と協力して行った研究なんですが、そこでは個人に対する健康被害と他者ないし社会に対する迷惑や健康被害が、どの薬物が一番深刻かということを比較しています。実は、ダントツに深刻なのはアルコールであると結論されています。

 もちろん覚醒剤やヘロインのような薬物も、個人に対する健康被害はあるんだけれども、彼らは基本的に薬を使うとき一人であり、薬にはまるとますます引きこもってしまうんです。でも、お酒は外に行って飲みますし、酔うと人恋しい気持ちが高まるせいか、人との接触は多くなります。それでいて感情のコントロールが効かなくなる。それで、結構暴力行動につながるんです。暴力犯罪の加害者の少なく見積もっても48%、多く見積もると70%近くが犯行当時お酒が入っていると言われます。DVとか児童虐待とか、飲酒運転による交通事故とかも含めると他害的な問題にアルコールがかなり関わっているんです。

 そうなると、愛好家が多いアルコールは規制困難だが、愛好家が少ない薬物については、規制しても、政府が国民の支持を失うことがないだけではないか、という気もするのです。つまり、有害性とは次元の異なる話ではないかという気もして、なかなか悩ましいですよね。

大麻を合法化した国の判断の根拠は

――海外で認められている国があるということは、その国は被害が深刻でないという判断なのですか。

松本 最初に大麻の合法化を行ったのはウルグアイです。そのあといくつかの国が行っていますが、最近で有名なのはカナダです。アメリカでは11くらいの州が嗜好品としての使用を含めて合法化しており、あと25~26くらいの州が医療用の使用に関して許可をしています。

 最初にウルグアイが合法化した背景には、違法化することによって密売組織がビジネスできるようになってしまうという理由でした。国が管理することによって、密売組織や反社会勢力がビジネスのネタに使えないようにするということです。では、合法化によってどんな結果になったかといえば、なぜか国内の犯罪件数は減少し、国民の大麻の使用経験率は低下しています。

 カナダに関していうと、密売のままだと未成年が使ってしまうので、未成年に使わせないために国が管理して、成人にのみ売ると考えたのです。よく大麻がゲートウェイドラッグといって他のハードな違法薬物への入門になってしまうと言われていますが、それはなぜかというと違法化されているからです。1920年代の禁酒法があった米国ならば、アルコールがゲートウェイドラッグだったと思うんです。反社会勢力との繋がりができるきっかけになるためですね。だから大麻ユーザーと反社会勢力との関係を切り離したいというのが一つあったのですね。

 これは大麻に限った話ではないのですが、やっぱり世界の潮流としては、薬物に関する法律と刑罰による規制は失敗したんじゃないかという議論が高まっているんです。薬物に対して刑罰と規制によってコントロールしようという国際協調の試みが議論され始めたのが100年前なんですね。アヘン戦争なんかがきっかけになってるんですけれども、皆、植民地では売りたい、自国民には使わせたくないというそれぞれの国の思惑があったので、なかなか制度としてはきちんとしたものができなかった。

 きちんとした制度として発足したのは1961年。国連が麻薬に関する単一条約を作ってからなんですね。それ以降、いくつかの薬物に関する国際条約ができて、日本を始めとする様々な国はこれに批准することを根拠として様々な規制法を作ってきたわけです。人類の薬物との数千年に及ぶ付き合いの中で、規制によってコントロールしようとしたのはたった60年なんです。その60年の間に薬物の問題が良い方向に向かったかというと、かえって世界全体のコカインやアヘンの生産量は激増しているという現実があります。末端価格は安くなり、純度はどんどん高くなるという状況です。薬物関連の犯罪で刑務所に入る人は年々増加してしまい、それから不潔な注射器を回し打ちすることによってHIVの新規感染者も激増し、薬の過量摂取で死亡する人も増えているんです。

 さらに一番の問題は、規制をすることによって反社会勢力の薬物カルテルが大きくなってしまって、もう国家レベルではコントロールできなくなったことです。南米で密造される薬物の8割は規制の厳しいアメリカで使われているというのが現実で、南米の国々もこれ以上放置すると国が潰れると国連に直訴するような事態になったんですね。

 それで、2016年と2019年の国連の会議で、薬物の問題は健康問題であって、司法的な問題ではないと宣言し、各国に非犯罪化と、保健・医療・福祉的支援の対象とするように勧告しています。その中でアメリカは州ごとにはともかく連邦政府としては未だに厳罰主義のスタンスをとっています。大麻ももちろん違法薬物のままです。

 そもそも大麻を違法薬物にした根拠は、1961年の麻薬に関する単一条約で、これはアヘンとか、モルヒネ、ヘロインといういわゆるオピオイドに加えて、コカインを「麻薬」として定義したんだけど、土壇場でアメリカがゴリ押しで大麻も入れろということになって、よくわからないうちに政治的な力で大麻も麻薬の中に入れられてしまった。けれども、そもそもアメリカがなぜそこまで大麻にこだわったかということも、やっぱり歴史的には無視できない問題ではあるんですね。

大麻と覚せい剤の依存の仕方の違い

――今、日本で犯罪で捕まる人は覚醒剤が多いと思うのですが、流通量でいうと大麻もそれなりに多いんですか。

松本 はい、そうです。大麻の場合には現状では使用罪がなくて所持のみ。だから物が見つからないと逮捕されないのです。覚醒剤は使用罪がありますから、捕まる人の数が違う。やはり大麻の場合は使用罪では逮捕できないので、ガサ入れ(家宅捜索)に入った時にモノが見つかるという確信がないとなかなか踏み込めないという事情はあるかと思います。

 それから、覚醒剤取締法違反に比べると、大麻取締法違反は再犯率も低いのだと思います。覚醒剤と違って、一回捕まって判決が出ると、もう二度と捕まりたくないからと、そのままやめてしまう人が多いのかもしれませんね。

――つまり、依存の仕方が違うのですか。

松本 おそらく、そうなのではないかと思っています。実際臨床現場で見ていても、やめられなさ具合が大麻の問題できている人らと、覚醒剤で来ている人たちと違います。大麻の人は生活が破綻している人は少ないですし、精神的におかしくなっていない方が多いのです。

――松本さんはこの事件について発言していますが、亀石倫子弁護士始め、今回の逮捕劇や社会の反応について異論を唱えた人が多い気がするのは、やはり大麻ならではなのでしょうか。覚醒剤の場合はなかなかそうならない気がします。

松本 「違法じゃないか」「国で定められているではないか」と言っても、国によって事情が違うというのをどう考えたらよいのかということはありますよね。人を殺したり傷つけたり人の所有物を奪ったりすることはどの国でも犯罪なのですが、薬物というのは被害者が明確ではないというか、むしろ被害者が自分なのです。

 そう言うと放送局やスポンサーなど周りに迷惑をかけているではないかと言われますが、それは犯罪化されているからですよね。薬物の薬理作用で人生を棒に振るというより、規制している法律によって弾劾されたり、バッシングされて排除されてダメになってしまうんですね。

吉永小百合さんだからこその発言

――国としても、近年は処罰だけでなく治療に向かわせようと、法的な仕組みを作ったり、治療プログラムを導入していますね。覚せい剤だけでなく大麻についても基本的にそういう考え方なのですか?

松本 もちろんです。ただ依存症とは言えない愛好家という人の割合が多くなるので、そういう人にも強制的に医療を提供するというのは、人権上への配慮という観点からするとどうかというのも悩ましいところです。

吉永小百合さんの発言が大きく報道(筆者撮影)
吉永小百合さんの発言が大きく報道(筆者撮影)

――日本の反応が、逮捕された途端にCMがなくなるわ、ドラマも放送中止と、一つのパターンが出来上がってきた気がします。吉永小百合さんが早く戻ってきてほしいと言ったのがニュースになっていましたが、ああいうことも普通はなかなか言えないですよね。

松本 吉永小百合さんだからこそ言えたことだと思います。もう少し若手の人が言ったらバッシングを受けて、あっという間にスポンサーがつかなくなってテレビに出れなくなると思うんですよね。

 昔、1980年代から90年代は薬物で捕まった方たちがたくさんいたと思うんです。有名なミュージシャンだと井上陽水さんや長渕剛さんもそうですよね。それから、結局は事情聴取で終わって「疑惑」止まりではあるけれど草刈正雄さんも逮捕はされてるんです。でもそういう人たちはその後、大河ドラマに出てるわ、紅白に出てるわじゃないですか。

 ところがこの10年くらいは、それが難しくなっていますよね。どうしてこうなったのだろうかということですよ。

「ダメ、ゼッタイ」キャンペーンが作った社会の空気

 何が問題かというと、2000年からの厚生労働省の薬物乱用防止のための予防啓発が、変に効きすぎてしまったのではないか、と個人的には思っています。あの、有名な「ダメ、ゼッタイ」という、変に語呂のいいキャッチコピーを前面に出したキャンペーンがありますね。あれが社会の空気を作るのに一役買ってる気がしてならない。成果が上がっているかというと、確かに覚せい剤は若い人たちは少なくなっていますが、大麻の検挙者は増えています。「ダメ、ゼッタイ」を展開してきた20年間、何が起きたかというと、少なくとも依存症治療の現場では睡眠薬や抗不安薬や、あるいは市販薬などの、いわゆる捕まらない合法な薬物、一回使っても人生が破滅しないことがわかっている薬物に依存してきている人たちが増えています。

 それから脱法ハーブを始めとしたギリギリセーフな捕まらない薬物が、数年前問題になりましたよね。世界中で危険ドラッグはやはり問題になったんですけど、日本ほどフィーバーした国はないのです。なぜ日本でフィーバーしたかというと、日本人が遵法精神に富んだ国だからです。捕まらなきゃ良いと思っているだけで、本当はものすごく薬物が好きで、隙あらばハイになりたいと抜け道をうかがっている国民なんですよ。

 薬物は違法じゃないかと言うんだけど、それを言ったらアパルトヘイトもホロコーストもその時代その国では合法だったじゃないですか。あるいは旧優生保護法もそうですが、違法か適法かという論拠だけで良いのかと思ってしまいます。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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