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眞子さま結婚の突然の延期の背後にいったい何があったのか

篠田博之月刊『創』編集長
結婚延期は衝撃を伴って報道された(撮影筆者)

 2月6日、突然宮内庁は、秋篠宮眞子さまと小室圭さんの結婚の延期を発表した。

結納にあたる「納采の儀」が3月初めに迫っていたから延期発表にはぎりぎりのタイミングだったのだろうが、突然の発表には日本中が驚いた。そして各マスコミが言及しているのが、この間の一連の週刊誌報道との関連だ。

 もちろん宮内庁は延期と週刊誌報道は関係がないと言っている。延期の原因が週刊誌報道だなどとは言えないだろうし、実際、その因果関係はそう単純ではないと思う。ただ、タイミングから考えて両者に関係がないという説明にもどう考えても無理がある。

 実は1月31日にヤフーニュースに書いた記事で私は週刊誌の小室家バッシングの背景を取り上げ、その中で結婚延期の可能性を示唆しておいた。

https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20180131-00081067/

 その記事は昨夜来、結構アクセスもあったようで、マスコミからも問い合わせがあった。そこで延期の背後に何があったのか、改めて私の推論を書いておこうと思う。

 結婚延期の原因を一言で言うならば、皇室ないし宮内庁周辺に、この結婚に慎重論ないしブレーキをかける声があったためだろう。それが年末からの週刊誌報道で一気に増幅されたということではないか。恐らくそれが真相だろうと思う。宮内庁が週刊誌報道との関係を否定したのは、今回の週刊誌報道が原因というのでは単純すぎるということなのだろう。

 そもそも一連の週刊誌報道の展開自体が異様というほかない。暮れに『週刊女性』が小室家の400万余の借金の話を報じたのは明らかに、元婚約者の男性の情報提供がきっかけだろう(記事では情報源秘匿の工夫が見られるが、ネタ元はミエミエだ)。でも皇室にも関わりかねないスキャンダルだから普通ならそこで手が打たれるはずだ。圭さんが眞子さまと婚約しているのは周知の事実だから、何らかの信用保証がなされれば400余万のお金をどこかで工面することなど難しくないはずだ。それが異様なことに、放置されたまま年明けに『週刊文春』『週刊新潮』に同じ話が飛び火した。元婚約者男性とて、お金が戻ってくればそれ以上、週刊誌に情報提供もしなかったはずだ。それなのになぜこんな展開になったのか。

 もともとその男性と小室家の母子とではその400万余についての認識が食い違っていたことは間違いない。男性がお金を出した当時、彼は圭さんの母親と婚約していたのであり、そういう状態で自分が出したお金をあとになって返せと言われても簡単に納得できないというのはありえることだろう。しかも、婚約破棄も男性から言い出したようなので、小室家としては相手の身勝手さに腹を立てたのだろう。

 しかし、普通ならそこでどちらが正しいか争っている場合ではないと周囲が考えるのではないだろうか。今この時期にそんな話が週刊誌で拡散していったら、そのダメージは400万円どころではない。どちらが正しいかという理屈は抜きに400万余を払うなりして事態を収めるというのが一般的な対処法ではないだろうか。不思議なのは今回、その方向に事態が向かわず、週刊誌報道が燃え広がるままになったことだ。しかも、小室家側の主張がいっさい報じられることなく、一方的な元婚約者男性の主張ばかりが報じられている。

 そればかりではない。『週刊文春』などは翌週もそのネタを記事にしており、このまま放置すれば他の週刊誌にも波及することは明らかだった。「納采の儀」が迫っているから、この話はニュースバリューがあるためだ。どう考えても一連の報道をめぐる展開が一方的で不可解なのだ。

 なぜこのスキャンダルが燃え広がるままに放置されたのか。ひとつ考えられるのは、眞子さまと小室さんなど当事者がそれに対処しようとしても、それを許さぬほどの逆風が皇室周辺に吹いていたということではないだろうか。もともとくすぶっていた、この結婚に疑問を呈する皇室関係者の空気が一気に膨れ上がったということだろう。

 恐らく、圭さんが小さい時に亡くなった父親がどうも自殺だったらしいとか、借金騒動に見えた小室家の貧しかった事情とか、この間、次々と報じられた事柄に対して、皇室関係者の中に、それは眞子さまの嫁ぎ先としてふさわしいのかという危惧が生じていたのだろう。平たく言えば小室家の「家柄」を問題にする空気だ。

 小室家側は恐らく、母親の元婚約者男性の今回の主張がいかに筋違いであるかをもちろん眞子さまにも、そしてその周囲にも説明したに違いない。しかし、そんな説明よりももっと大きな逆風が吹き荒れて、それどころではない状況になっていったのではないだろうか。

 そもそも若い男女が恋愛に落ち、結婚を決意した時に相手の家柄を問題する関係者が親戚などにいたとしても、「当人たちが愛し合っているならいいではないか」と退けられるのが市民社会の通例だろう。しかし、皇室というのがそういう社会通例と相当にずれた世界であることは、雅子妃の結婚で証明済みだ。

 雅子妃はそれなりのキャリアを持って皇室に入ったのに、「まず跡継ぎを産むことが第一の役目だ」という価値観を強いられ、ついに適応障害という病気に陥った。皇室の尊厳や伝統を重視する勢力から見れば、悪いのはその伝統を理解しない雅子妃の方だということになるのだろう。さんざん週刊誌で雅子妃バッシングが吹き荒れたのは、そういう人たちからの情報が流出したためだろう。

 今回の眞子さまの結婚についても、基本的に同じ構造が作用したとしか思えない。確かに一昨年、二人の交際がNHKのスクープによって報道された直後は日本中が祝福ムード一色で、圭さんの人柄など肯定的な報道があふれたのだが、次第にそれに反する情報が週刊誌にポロポロと流れるようになった。小室家が貧しいこと、父親の死に複雑な事情があったことなどが次々と報道されていったのだ。そして極めつけが昨年末の借金報道だ。

 流れが明らかに一方向へ向かっていったのはどうも偶然だとは思えない。明らかに皇室周辺に、この結婚に疑問を呈したり、慎重を期すべきだと言っている人たちがいるとしか思えないのだ。しかも、その声は結婚時期が近づくにつれて増幅していったと思われる。

 たぶんそのあたりが今回の事態の真相だと思う。

 各紙の報道を見て感心したのは2月7日付日本経済新聞だ。解説記事の中で一連の週刊誌報道についてこう論評しているのだ。

《憂慮されるのは、一連の報道が「皇族の結婚相手としてふさわしくない家柄」というレッテルを貼る空気を助長することだ。》

 そして憲法を持ち出してこれを批判しているのだが、感心したというのは、宮内庁が延期は週刊誌報道と関係ないと説明しているのを認めていないことをあからさまにしている点だ。恐らく各紙の報道でも週刊誌報道に言及した記述が多いのは、それが無関係だとする宮内庁の説明に疑問を感じているからだろう。

 奇しくも『女性セブン』2月15日号は「小室家の闇報道と破談巡る筋書き」という記事を掲載している。結婚延期発表を受けたわけでなく、この間の週刊誌報道を受けて、先読みした見出しをつけたのだろう。見出しに「破談」の文字が躍ったのにはドキッとした関係者もいたであろう。でもこの結婚、へたをすると本当に破談に至る可能性もないではない気がする。当事者2人とその親がよほどしっかりしていないと、「家柄を問題にする」ような空気は拡大していきかねない雰囲気としか思えないのだ。

 

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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