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映画『SLAM DUNK』が韓国で『鬼滅の刃』やジブリ作品を超えた理由。残すは『君の名は。』か

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
今月1月26日にオープンしたポップアップストアの入口(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

アニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』の人気が韓国で止まらない。

その熱狂ぶりはすでに多くの日本メディアでも報じられているし、『SLAM DUNK』が以前から韓国で根強い人気を誇ってきたことは本欄でも2度目に渡って紹介したが、個人的に注目しているのは『THE FIRST SLAM DUNK』が今後、その記録をどこまで伸ばしていくか、ということだ。

(参考記事:韓国でも伝説『スラムダンク』の映画が公開。実は日韓で違いがある?)

というのも、韓国の映画館入場券統合電算ネットワークを見ると『THE FIRST SLAM DUNK』は2月1日で韓国での観客動員数200万人を突破した。

週末にジブリ作品や『鬼滅の刃』超えは確実

2月1日終了時点で203万6482人を記録し、韓国で公開された日本アニメの長編映画歴代ランキングで5位になった。

今週末には2001年に公開された映画『千と千尋の神隠し』が記録した216万7573人を抜いて、歴代4位にランクアップすることは確実視されている。

歴代4位だけではない。歴代3位には3年前の同じ頃に韓国で人気を呼んだ『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が控えているが、それも楽々と超えてしまうだろう(『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は218万9110人)。

つまり、この週末で『SLAM DUNK』はジブリと『鬼滅』を追い越すことになるわけだが、なぜそれができたのか。

世代と性別を超えた『SLAM DUNK』人気

ひとつは根強いファンがいることだろう。韓国の『SLAM DUNK』人気をけん引するのは30〜40代の男性たち。

30~40代と言えば、ちょうど彼らが中学・高校時代に『SLAM DUNK』が大人気。韓国ではコミック版が1992年~1996年に発売され、テレビアニメは1998年6月から1999年3月まで放映されたが、その頃に『SLAM DUNK』に夢中なった中高生たちが、『THE FIRST SLAM DUNK』に熱狂している。

そうした熱気が口コミでも広がり、最近は世代や性別を超えて幅広い層が沸いている。

大手シネマコンプレックス・CGVによれば最近の『THE FIRST SLAM DUNK』の前売り率は20代が18.7%、30代が38.6%、40代が31.8%と、20代の割合が増加傾向を見せており、性別においても女性が47.5%、男性が52.5%と女性客も目立って増えているというのだ。

高級百貨店『THE HYUNDAI』で期間限定でオープンしたポップアップストア
高級百貨店『THE HYUNDAI』で期間限定でオープンしたポップアップストア写真:Lee Jae-Won/アフロ

さらに言うと字幕版を見た観客が53.1%、吹き替え版も46.9%とほぼ同数で両方とも観るリピート鑑賞ブームも起こっているらしい。

また、最近は小学生などの子供と一緒に家族で映画鑑賞する人々も増えている。

日本では“韓流四天王”のひとりとして知られた俳優チャン・ドンゴンが家族とともに『THE FIRST SLAM DUNK』を鑑賞したことがニュースにもなった。

こうした盛り上がりの連鎖が『鬼滅の刃』やスタジオジブリ作品を追い抜くひとつの決め手になったと言えるだろう。

『ハウルの動く城』と『君の名は。』を超えられるか

しかも、今の熱狂ぶりだと2004年から2005年にかけて韓国で大ヒットした『ハウルの動く城』が築いた歴代2位・261万4043人の壁も突き破ることも時間の問題だとされている。

こうなってくると期待したくなるのは、歴代最高記録の更新だ。

韓国における日本アニメ長編映画ランキングの歴代1位は、2017年1月に公開された新海誠監督の『君の名は。』で、その観客動員数は379万6716人。

『君の名は。』は2017年1月4日の公開初日からボックスオフィス1位になり、その後も常に興行ランキングの常連に。3月26日に公開82日目にして365万人を突破。その後も地道にロングランを続け、380万人に肉薄する記録を打ち立てたが、『THE FIRST SLAM DUNK』もその記録に挑戦できる状況でもある。

というのも『THE FIRST SLAM DUNK』はまた公開されて1か月足らず。公開13日で250万人突破した『君の名は。』には及ばないが、『ハウルの動く城』が1か月で250万人に達したことを踏まえれば、またまだ伸びる可能性は十分にあるのだ。

ライバルは3月公開の『すずめの戸締り』!?

ただ、『THE FIRST SLAM DUNK』の座を脅かしそうなライバルがいないわけでもない。それも日本アニメがその行く手を遮るかもしれない。

新作『すずめの戸締まり』がそれだ。『君の名は。』の新海誠監督4年ぶりの新作が3月8日から韓国で公開されるのだ。

『すずめの戸締まり』の韓国配給会社はすでに積極的なPR活動をはじめており、公式SNSを通じて公開された「すずめイズカミング」映像が約90万回再生、約6000リツイート(1月25日18時時点)を超えるなど、韓国でも大きな注目を集めている。

そんな強力ライバルの公開まで『THE FIRST SLAM DUNK』はどこまで観客動員数を伸ばすだろうか。ジブリや『鬼滅』を抜いて『君の名は。』に挑む、宮城リョータや桜木花道ら湘北メンバーたちの進撃は続く。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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