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コーチ池田誠剛が語った日韓サッカー「日本選手の良さやうまさが評価・必要とされている」

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
インタビュー中の池田誠剛コーチ(撮影=LEE WANBOK)

「数多くの監督やコーチと仕事をしてきましたが、その中でも非常に優れた指導者のひとりです。KFA(韓国サッカー協会)の専務理事として4年ほど現場を離れていますが、そんなブランクは一切感じさせないし、その感覚は衰えないどころか以前よりもさらに研ぎ澄まされた印象。選手時代はもちろん、ピッチ外での経験が多くなり視野も広がり、指示も的確。いろんな部分で確信を持てることが多くなったような感じがします」

今季からKリーグの蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)の首席コーチとなった池田誠剛がそう評価したのは、現役時代はJリーグの柏レイソル(1999年~2000年)などで活躍し、2002年ワールドカップでベスト4進出の主力でもあったホン・ミョンボ監督のことだ。

韓国の英雄ホン・ミョンボが信頼する日本人コーチ

ジェフユナイテッド市原(1993〜1996年)、横浜F・マリノス(1997〜2004年)、FC東京(2016年)、サンフレッチェ広島(2018年~2020年)などでフィジカルコーチとして活躍してきた池田誠剛とホン・ミョンボ。

ふたりの仲はかれこれ10年になる。

始まりは2008年。ホン・ミョンボがU-20韓国代表監督を務めたときに、池田氏はKFA(韓国サッカー協会)初の日本人コーチとして迎え入れられた。

以降、ふたりは2009年U-20ワールドカップ、2012年ロンドン五輪、2014年ブラジル・ワールドカップを共に戦った。韓国代表を率いたホン・ミョンボ監督にとって池田は頼もしい右腕であり、日本人指導者が韓国代表のコーチングスタッフとなったのは池田が初めてだった。

ホン・ミョンボが2016年から2017年まで率いた中国リーグの杭州緑城でも、池田がフィジカルコーチを務めている。

そんなふたりが三度コンビを組むことは、ホン・ミョンボが蔚山現代で現場復帰したときから予想できた。

当時、池田はサンフレッチェ広島に籍を置いていたが、2021年冬に退団が決まるとホン・ミョンボはすぐさま池田コーチに蔚山加入を打診していたらしい。

クラブ側もホン・ミョンボの強い要請もあって受諾。こうして今季から蔚山現代の一員となった池田だが、Kリーグのフルタイムコーチを務めるのは実は初めてだという。

ホン・ミョンボと目指す“日韓ハイブリッド”

「2007年にKリーグの釜山(プサン)アイパークで臨時コーチを務めた経験はありまししたが、フルタイムでKリーグのシーズンを戦うのは初めてなんですよ。もちろん、代表コーチ時代にもKリーグはよくチェックしていましたが、外から見るのと中で戦うのとでは、まったく違いますから」

ただ、Kリーグでの日々は充実しているという。

「代表だと練習や指導できる時間も限られてきますが、クラブは毎日練習できるので、それこそ“作りたい体”、“作りたいコンディション”を作れる。少しずつ積み重ねながら、ホン・ミョンボ監督とともに“作りたいチーム”を目指して、日夜汗できることは幸せですよ」

池田氏がホン・ミョンボ監督とともに目指すのは、 韓国の日本の良さを高次元で融合させた「日韓ハイブリッド」だ。

2012年ロンドン五輪でもコンビを組んで両国の特長やノウハウを生かし融合させ、韓国五輪代表を銅メダルに導いたホン・ミョンボ監督は、今度はそれをKリーグの蔚山現代でやろうとしている。

池田氏はそのために欠かせぬ名参謀であり、ホン・ミョンボ監督が天野純を横浜F・マリノスからレンタル移籍で補強したのも、そのためだった。

そのことについては『Sports Graphic Number』(スポーツ グラフィック ナンバー)ですでに詳しく紹介したのでここでは割愛するが、ここで紹介したいのはKリーグで高まる日本人選手たちの存在感だ。池田は語る。

韓国で評価・必要とされる日本選手の長所とは?

「今のKリーグは、中盤を省略したり蹴って走ってのワンパターンを繰り返すかつての韓国サッカーばかりではないんですね。蔚山現代のように、しっかりパスを繋ぎながら最後は持ち前のスピードとパワーでフィニッシュにするスタイルが増えている。そういうスタイルの変化の中で、生きてくるのが日本人選手が持つパス・スキルだったり戦術眼。日本の選手が持つ良さやうまさが、韓国でも評価され必要とされつつある。天野はその代表例でしょう」

(参考記事:【動画】相手GK反応できず!天野純のフリーキックが「まさに芸術」「ハンパない」と韓国で話題沸騰)

韓国でも日本サッカーの長所が光り必要とされる時代が到来したわけだが、日本人選手が韓国でプレーすることはプラスになることも多いと池田は考えている。

「日本サッカーの特長は確かな技術であったり判断力や組織力だったりしますが、それだけでは世界に太刀打ちできない。昨今はスピードやパワーもクローズアップされていますよね?  そのフィジカル的な要素を韓国で鍛えるのも悪くはない。強さとスピード、コンタクトの激しさに関しては、韓国ですから。その中で揉まれ自分のサッカーを表現できれば、ほかの国でも戦える自信も手にできる。これからは日本人選手の海外移籍の選択肢のひとつとして、Kリーグも数えられると思いますよ」

天野をはじめ、邦本宜裕(全北現代) 、小林祐希(江原FC)などKリーグで増えている日本人選手たち。

そのすべての日本人Kリーガーたちがピッチで躍動することを、誰よりも期待し応援しながら、自身も韓国で奮闘する池田。

今後もKリーグで戦う日本人フットボーラーたちには熱視線を送り続けたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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