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涙のセクハラ告発から「仲間を侮辱」のイヤなやつ? 韓国ショートトラック女王に何があったのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真:ロイター/アフロ)

2大会連続の五輪金メダリストが、スキャンダルを理由に12月22日に代表資格停止処分を受けて、このままでは北京五輪に出場できなくなってしまった。

選手の名は韓国のシム・ソクヒ。

2014年のソチ五輪で金1、銀1、銅1のメダルを獲得し、地元開催となった前回の平昌五輪でも女子3000mリレーで金メダルを獲得。韓国のお家芸であるショートトラックの看板選手とされてきた選手だが、日本では衝撃の性的暴行暴露で有名になった選手としても知られているかもしれない。

平昌五輪前にも小学1年生の頃から指導を受けていたチョ・ジェボム元コーチのパワハラを訴えてナショナルトレーニングセンターを跳び出して波紋を呼んだが、2019年1月にチョ元コーチから常習的に性的暴行を受けてきたことを告白。大きな波紋を呼んだ。

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チョ元コーチは懲役13年が確定し、シム・ソクヒは2019年から高陽(コヤン)市庁所属選手として再スタートを切り、今年5月に行われた2021-2022シーズンの韓国代表選抜戦で1位に入り、北京五輪への出場権も確保していたが、10月に今度はシム・ソクヒが加害者となるスキャンダルが明るみになった。

とある韓国メディアが、平昌五輪当時にシム・ソクヒが代表チームのコーチと交わしたとされるメール内容を暴露。シム・ソクヒが、ライバルで韓国代表の同僚であるチェ・ミンジョンをはじめとするチームメイトを露骨に非難し、その中には八百長を疑わせるような内容も含まれていたのだ。

皮肉にもその内容は実刑が確定したチョ元コーチが、裁判の過程で得た資料をメディアに横流ししたものだった。つまり、シム・ソクヒへの報復行為とも受け止められる暴露だが、世論の目は冷たかった。

シム・ソクヒは八百長を否定し、ライバルやかつてのチームメイトたちを陰で侮辱していたことを謝罪したが、チェ・ミンジョンはシム・ソクヒから継続的にかかってくる電話やメールがストレスだと訴えるほど、軋轢は深刻だった。

韓国氷上競技連盟も厳しかった。調査の結果、平昌冬季五輪での故意の衝突=八百長疑惑、選手ロッカールームでの盗聴疑惑、2016年ISUワールドカップ及び2017年札幌冬季アジア大会での八百長疑惑に関して、明白な証拠は見つからず「シロ」としたが、メール公開によって明かされたコーチへの悪口やチームメイトへの卑下発言は「スケート選手としての品位を著しく損ねた」として、12月22日に代表資格停止2か月の懲戒処分を決定した。

この代表資格停止期間は来年2月20日まで。つまり、北京五輪には出場できないことになる。

韓国は4度のISUワールドカップを通じて、女子1000mと1500mでそれぞれ3枠、500mで2枠の出場権を確保。3000mリレーでも出場権を獲得しているが、シム・ソクヒ不在となれば戦力ダウンは否めない。

スキャンダル発覚以降、今季はワールドカップシリーズなどに出場できていないシム・ソクヒだが、1000mで銅(ソチ大会)、1500mで銀(ソチ大会)、3000mリレーではソチ、平昌と連続メダルを手にしている実力者だ。北京でも有力なメダル候補だっただけに、連盟としてももどかしいところだろう。

ただ、シム・ソクヒはまだあきらめていないという。このままでは北京五輪出場は不可能だが、処罰を言い渡された公正委員会(賞罰委員会)では1時間半にわたり、オリンピック出場へ強い想いを語ったという。

とある関係者によると、「シム・ソクヒが“これまで一生懸命練習してきた。チェ・ミンジョンらに謝罪をしようとしたが、受け入れてくれず辛かった”と心情を吐露した」という。

シム・ソクヒが北京五輪に出場するためには、大韓体育会のスポーツ公正委員会に再審を請求するか、スポーツ裁判所に効力停止仮処分申請を出すかの2つの方法があるが、はたして。

1月23日までに大韓体育会にショートトラック代表の最終エントリーを提出しなければならないことを踏まえると、この問題はもう一波乱ありそうな気配だ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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