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サッカー日韓戦に挑む韓国代表はガチの「ベストメンバー」なのか? 意外に多いのは…

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
オーストリア遠征にはファン・ウィジョも活躍(写真提供=FA Photos)

3月25日に横浜で行われる日韓戦の韓国代表メンバーが昨日発表になった。

国際親善試合としては2011年8月以来。ともに国内組中心で行われたE-1チャンピオンシップ(東アジア選手権)とは異なり、ヨーロッパ組も加えた“フル代表”としての対決が期待される中、昨日の時点で発表された韓国代表リストにはイ・ガンイン(バレンシア)、ファン・ヒチャン(ライプツィヒ)、そしてソン・フンミン(トッテナム)の名も含まれていたが、文字通りのベストメンバーと言えるだろうか。

そのメンバーの顔触れを詳しく見てきたい。

5年ぶり復帰と3人の初選出

まずGKは順当だろう。2018年9月のパウロ・ベント監督体制発足以降、正GKの座を競っているキム・スンギュ(柏レイソル)とチョ・ヒョヌ(蔚山現代)が選ばれた。キム・ジンヒョン(セレッソ大阪)は今回の日韓戦に出場すれば、2018年9月のチリ代表戦以来となる。

このキム・ジンヒョン以上に久々の代表復帰となったのがユン・ビッカラム(蔚山現代)。2010年に頭角を現した頃は“パク・チソンの後継者のひとり”と目されたMFは、2016年9月のチェコ戦以来、実に5年ぶりの代表復帰。ベント体制では初の代表招集となるが、ベントが今回、初めて呼んだ選手はユン・ビッカラムだけではない。

DFキム・ヨンビン(江原FC)、MFチョン・ウヨン(フライブルク)、FWチョ・ヨンウク(FCソウル)ら3人も代表初選出だ。

チョン・ウヨンはかつてヴィッセル神戸でも活躍したチョン・ウヨン(アル・サッド)とは同名だが別人で、まだ21歳のチョン・ウヨンはバイエルンの下部組織出身で、2018-2019シーズンにはUEFAチャンピオンズリーグのグループステージでトップチームデビューも経験している。

元ガンバのファン・ウィジョら招集されず

バイエルンⅡでの生活を経て今季からフライブルクに復帰した期待の欧州組だが、本来あるべきはずの欧州組の名がリストになかったのも事実だ。

チョン・ウヨンと同じくフライブルクに所属すチャンスメーカーのクォン・チャンフン。

元ガンバ大阪で現在はフランスのプレーするファン・ウィジョ(ジロンダン・ボルドー)。

ベント監督下で韓国代表の10番を背負うイ・ジェソン(ホルシュタイン・キール)。

そして、一昨年のE-1チャンピオンシップ日韓戦でゴールを決めた“韓国のピルロ”ことファン・インボム(ルビン・カザン)。

(参考記事:森保ジャパンを下した“韓国のピルロ”が、ゴール後に日本サポーター席に向かった理由)

昨年11月のオーストリア遠征(メキシコ代表、カタール代表と対戦)でも活躍した韓国欧州組が、所属クラブの招集拒否やチーム内の新型コロナ陽性者発生に伴う隔離などを理由に招集されていないのだ。

ソン・フンミンらも離脱なら主力5名は欠くことに

欧州組だけではない。“韓国のファン・ダイク”とされるDFキム・ミンジェ(北京国安)、昨季KリーグMVPで韓国代表にも定着しつつあったMFソン・ジュンホ(山東泰山)ら中国スーパーリーグでプレーする選手たちの招集も見送られた。

ちなみに昨年11月のオーストリア遠征に続いて今回の日本戦メンバーにも選ばれたのは12名。イ・ガンイン、ファン・ヒチャン、そしてソン・フンミンらもオーストリア遠征に続く代表入りだが、彼らさえも日本行きが見送られれば韓国代表はレギュラークラス6〜7名、そのうち不動の主力5名(ソン・フンミン、ファン・ウィジョ、キム・ミンジェ、ファン・ヒチャン、イ・ジェソン)を欠くことになる。

意外と多い元コリアンJリーガー

そうなるとベストメンバーとは言えそうにないが、欧州組や中国組を欠いてもキム・ヨングォン(ガンバ大阪)、チュ・セジョン(ガンバ大阪)ら現役Jリーガーだけではなく、パク・チュホ(元鹿島など/水原FC)、ウォン・ドゥジェ(元福岡/蔚山現代)、ナ・サンホ(元FC東京・FCソウル)、チョン・ウヨン(元神戸/アル・サッド)、イ・ジョンヒョプ(元湘南/慶南FC)など、元Jリーガーも多い。

若い力も加わっている。初代表のチョ・ヨンウクはイ・ガンインらとともに2019年U-20ワールドカップ準優勝メンバーで、東京五輪出場を決めているU-24韓国代表の主力FWだ。

キム・ハッボム監督率いるU-24韓国代表は3月22日から30日まで強化合宿を行なう予定だが、このチョ・ヨンウクを含めDFユン・ジョンギュ(ソウル)、MFイ・ドンジュン(蔚山現代)、MFオム・ウォンサン(光州FC)ら4人のU-24五輪代表が日本戦遠征メンバーに加わっている。チョ・ヨンウク以外の3人は昨年11月のオーストリア遠征(にも参加しているので、ベント監督もおおまかな起用法を想定しているはずだ。

「このメンバーが最善だと考えた。我々が追求するサッカー、望む試合と結果を得るためには、このメンバーが最善であることをわかってほしい」

昨日の記者会見でもそう語ったベント監督。「結果を得るためにはこのメンバーがベスト」というチームはどんな状態で日本にやってくるのだうか。

■3月25日 日本代表戦・韓国代表メンバー

GK

キム・スンギュ(柏レイソル)、キム・ジンヒョン(セレッソ大阪)、チョ・ヒョヌ(蔚山現代)

DF

キム・ヨングォン(ガンバ大阪)、パク・チュホ、パク・ジス(水原FC)、ユン・ジョンギュ(FCソウル)、キム・ヨンビン(江原FC)、ホン・チョル、キム・テファン、ウォン・ドゥジェ(以上、蔚山現代)

MF

ナ・サンホ(FCソウル)、オム・ウォンサン(光州FC)、イ・ドンジュン、ユン・ビッカラム(以上、蔚山現代)、チュ・セジョン(ガンバ大阪)、ナム・テヒ、チョン・ウヨン(以上、アル・サッド)、ファン・ヒチャン(ライプツィヒ)、ソン・フンミン(トッテナム)、イ・ガンイン(バレンシア)、チョン・ウヨン(フライブルク)

FW

イ・ジョンヒョプ(慶南FC)、チョ・ヨンウク(FCソウル)

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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