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賛否に包まれるJO1……“日本アイドルのK-POP化”を韓国はどう見ているのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
画像=PRODUCE 101 JAPAN公式サイト

オーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN』から生まれた、日本の男性アイドルグループ「JO1」が、お隣・韓国でもちょっとした話題になっていた。

政治や経済面で日韓関係が冷え込んでいる今、個人的にはスポーツやエンターテインメントの分野での交流の一環にもなって良いと思っていたが、韓国で話題になっているのはあまり良い意味ではなさそうだ。

最近、JO1はデビューミュージックビデオを公開したのだが、韓国の音楽ファンは「“完全にK-POPじゃないか”と怒っている」(『topstarnews』)というのだ。

この『PRODUCE 101 JAPAN』とJO1には若干の説明が必要かもしれない。

そもそもオーディション番組『PRODUCE』シリーズは、韓国のCJ ENMが生み出したオーディション番組だ。シーズンごとに多くのアイドル練習生が出演し、視聴者の人気投票によって最終的にデビューするアイドルが選ばれるといった内容となっている。

AKBメンバーが所属するIZ*ONEを生んだ番組

韓国はもちろん、日本のK-POPファンからも支持を集めた番組で、デビューしたグループのなかには、AKB48グループの宮脇咲良らが所属する日韓合同グループ「IZ*ONE(アイズワン)」などがいる。

ただ、韓国の本家『PRODUCE』シリーズは“投票操作”疑惑が浮上し、2019年8月に最新シリーズ『PRODUCE X 101』からデビューしたX1は、約4カ月という活動期間で解散。IZ*ONEもその活動が中止や延期に追い込まれた時期もあったが、今なおTWICEにも匹敵する人気ガールズグループだ。

(参考記事:IZ*ONEにも飛び火した『PRODUCE』の“投票操作疑惑”、被害者は誰か

そんな『PRODUCE』シリーズの日本版『PRODUCE 101 JAPAN』は、本家の投票操作疑惑が浮上する前の2019年4月に制作されることが発表され、本家が疑惑の真っ只中にある2019年9月に放送開始。CJ ENMと吉本興業、MCIPホールディングスが共同制作し、お笑いコンビのナインティナインが司会を務めた。

その日本版『PRODUCE』から誕生したグループがJO1ということだ。来る3月に日本でデビューし、活動する予定となっている。

JO1には、101人の練習生から視聴者の人気投票で選ばれた11人が所属している。その全員が日本人だ。

そして最近、デビューMVが公開されたわけだが、その姿がまるでK-POPアイドルのようであったため、韓国の音楽ファンの一部から「韓国のパクリではないか」という声が上がっているというわけだ。

「日本人が日本語で歌ってもK-POP?」

冒頭で引用した『topstarnews』は、「ティーザー映像から既存の日本アイドルには見られなかったK-POPスタイルで、デビュー曲とダンスも韓国人専門家が担ったとされている」と報じた。

また韓国メディア『スポーツQ』は「日本人が日本語で歌う歌も“K-POP”なのだろうか?」と見出しを打ち、「最近、日本の音楽市場は“K-POP”を主な武器としたアイドルグループの出撃を控えている」などと紹介していた。

同メディアによれば「韓国音楽ファンたちは“日本人を韓国グループのように包装し、広報している”と強く批判している」そうで、「日本はK-POPがアジアだけでなく、世界的な音楽市場で良い反応を得た後に、K-POPの成功戦略を真似る姿を見せている」と断定した。

つまるところ、日本のアイドルが韓国の良いところを模倣しているようにしか韓国のメディアやファンには映らないというのだ。

ただ、そもそもは韓国で『PRODUCE 101』が放送された2016年当時は、「AKB48選抜総選挙」のパクリ疑惑が持ち上がるなど、批判の声が多かった。

また、『PRODUCE』シリーズが日本で展開されると発表された2019年4月には、「韓流コンテンツ・フォーマットの輸出時代」だと誇らしげに歓迎するメディアも多かった。

にもかかわらず、今になって「完全にK-POPじゃないか」と批判するのは理不尽なような気がするが、JO1に所属するメンバーを選抜する過程で韓国から参加していた練習生が3人も辞退したことも、韓国メディアがJO1に厳しい目を向けることと関係しているのかもしれない。

最終回を目前に韓国人練習生3人が“辞退”

当時の様子を『ハフポスト』は、「人気ランキングで上位に入り、デビューも視野に入れていた韓国の練習生が最終回を目前に相次いで辞退する事態となり、ファンの間で衝撃が走っている」と報じていた。

辞退の理由は「一身上の都合」「本人たちの意向」といったもので、あまり明確ではなかったため、さまざまな憶測を呼んだりもした。

前出のIZ*ONEのように、JO1にも韓国人メンバーが含まれていれば、少なくとも「日本人が日本語で歌う歌も“K-POP”なのだろうか?」といった声は出なかったかもしれないが、そうなったら今度は「JO1は日本のグループか、韓国のグループか」との論争も起きることが容易に想像できる。

ちなみにJO1に限らず、現在は「Nizi Project」というオーディションが始まっており、こちらはTWICEなどが所属するJYPエンターテインメントと、日本のソニーミュージックによるプロジェクトだ。

JYPの代表パク・ジニョンは同プロジェクトについて「日本人メンバー中心で構成されたTWICEと思えばいい」と話したりしていた。

いずれにしても、韓国メディアや一部の音楽ファンたちが指摘する“日本アイドルのK-POP化”は、今後も続いていくのだろうか。日韓両国の反応にも注目してみたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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