アカデミー賞『パラサイト』のキャストこぼれ話とポン・ジュノ監督の“オタク”力

『パラサイト』のキャストとポン・ジュノ監督(右から3番目)(写真:REX/アフロ)

韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が、「第92回アカデミー賞」で脚本賞、国際長編映画賞、監督賞、作品賞の4冠を達成した。

昨年の第72回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに輝いたことや、第77回ゴールデン・グローブ賞で外国語映画賞を受賞したことから、アカデミー賞でも国際長編映画賞の大本命とはされていたが、まさか脚本賞、監督賞、作品賞まで受賞することになるとは驚きだ。

92年の歴史を誇るアカデミー賞において、英語圏以外の映画が作品賞に輝くのは初めてのこと。韓国映画がアカデミー賞を受賞するのも初めてのことだ。それだけに韓国でも大盛り上がりなのは言うまでもない。

韓国のSNS上には、「ノーベル文学賞よりも先に、アカデミー賞の脚本賞と作品賞を取った民族になってしまった」というコメントまであったほどだ。

『パラサイト』キャスティングこぼれ話

主演のソン・ガンホをはじめ、チョ・ヨジョン、イ・ジョンウン、チャン・へジン、イ・ソンギュン、チェ・ウシク、パク・ソダムなど7人の主演キャストが一緒にアカデミー賞のレッドカーペットを歩き、作品賞のトロフィーに触って喜び、涙ぐむ姿も印象的だった。

信頼するポン・ジュノ監督のもとで「いつになく気楽に演じた」というソン・ガンホ。

そのソン・ガンホ演じる主人公ギテクの妻を演じるために15kgを増量し、膝の痛みや拒食症で苦労したという女優チェン・へジン。“家庭教師ジェシカ”ことギジョンを演じた女優パク・ソダムは、ポン・ジュノ監督からの出演オファーを2カ月間待ち焦がれて役を掴んだ。

美人だがどこか能天気なセレブ妻を演じた女優チョ・ヨジョンは「見ているだけで清らかな人だと思った」(ポン・ジュノ監督)との理由で、キャスティングされたという。

チョ・ヨジョンは以前、高校時代の卒業写真がテレビで公開されたことがあるが、『パラサイト』効果で当時の記事に再び注目を集めているほどだ。

(参考記事:映画『パラサイト』の美人奥様女優、高校の卒業写真も美しかった!!)

ただ、もっとも喝采を浴びているのはポン・ジュノ監督だ。

長編2作目の『殺人の追憶』が大ヒットして“韓国の若き巨匠”と言われるようになって以降も、『母なる証明』『グエムル-漢江の怪物-』『スノーピアサー』『オクジャ』などさまざまなヒット作を手がけ、今回のアカデミー賞では個人としても脚本賞と監督賞に輝いたのだから、今や名実ともに“世界の巨匠”になったと言っても過言ではないだろう。

「成功したオタク」になったポン・ジュノ監督

そのポン・ジュノ監督は韓国で「ドクフ」として有名だ。

「ドクフ」を漢字にすると「徳厚」となるのだが、「徳が厚い」という意味ではない。日本で言うところの「オタク」を意味する造語「オドックフ(オドックとも言う)」が変化した言葉で、ポン・ジュノ監督は幼い頃から“映画トクフ”だった。

韓国メディアの過去のインタビュー記事を見ると、学生時代は雑誌『スクリーン』や『ロードショー』を愛読していたという逸話もある。ポン・ジュノ監督よりも1歳年下の俳優イ・ビョンホンも、学生時代は『スクリーン』や『ロードショー』を愛読していたと話していたが、ポン・ジュノ監督も日本の映画雑誌を楽しみにしていた映画少年だったのだ。

また、ポン・ジュノ監督は“漫画ドクフ”としても有名だ。延世(ヨンセ)大学時代は学内報に連載を持っていたほどの腕前で、その画力を生かした繊細なコンテは“ポンテイル(ポン・ジュノ+ディテール)”と呼ばれている。

そんな映画オタクの少年がカンヌ映画祭の最高賞であるパルムドールを受賞しただけではなく、アカデミー賞で作品賞まで手にしたことで、韓国では今、ポン・ジュノ監督を「成功したドクフ」と呼ぶようになった。

「世界的な巨匠たちを目の前に、ドクフ・モード全開のポン・ジュノ監督が賞に輝いて痛快」といったニュアンスの書き込みも多く見受けられている。

かつて韓国でもドクフにはネガティブなイメージがあった。

が、今では「何か夢中になれるような趣味を持つ人」を指す名詞として定着している。ポン・ジュノ監督が成し遂げた大快挙によって、「成功を目指すドクフ」も増えいくことだろう。

と同時に、『パラサイト』のアカデミー賞受賞をきっかけに、韓国はもとより日本をはじめとしたアジアの映画がよりグローバルに羽ばたくチャンスが増えることを期待したい。