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紀平梨花とキム・ヨナ後継者ユ・ヨンとの関係は?「トリプルアクセル日韓戦」の行方

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ユ・ヨン(左)と紀平梨花(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

今日からソウルで行われるフィギュアスケートの四大陸選手権。

韓国開催は2002年の全州(チョンジュ)、2005年の江陵(カンルン)、2008年の高陽(コヤン)、2010年の全州、2015年のソウル、2017年の江陵に続いて今回で7回目となるが、過去の自国開催で韓国がメダル獲得したことは一度もない。

それどころか過去すべての大会で韓国がメダルを獲得したのは、2009年バンクーバー大会の女子シングルで金メダルに輝いたキム・ヨナのみ。

平昌五輪のプレ大会として行われた2017年江陵大会では女子シングル5位のチャ・ダビンが最高成績で、男子シングルではイ・シヒョンが16位、キム・ジンソが17位、イ・ジュンヒョンが18位と惨敗だった。

だが、今回の四大陸選手権では11年ぶりのメダル獲得への期待が高まっている。特に女子シングルの期待は大きい。

その理由としては、ユ・ヨン、イム・ウンス、キム・イェリムの3人が揃い踏みするからだろう。彼女たちは“キム・ヨナ キッズ3銃士”と呼ばれて、人気も高い。

(参考記事:かわいい&美人の「キム・ヨナの後継者たち」韓国の女子フィギュア5人の実力と可能性

キム・ヨナも果たせなかったジャンプ

特に今季はユ・ヨンの人気と期待が高い。

そもそもユ・ヨンは3年前から“韓国フィギュアの希望”と期待を寄せられた有望株だ。2004年5月生まれの15歳。

東南アジアで事業を展開する父親の影響で1歳の頃からシンガポールで育ち、フィギュアをするために母とともに2013年に韓国に戻った彼女は、2016年韓国フィギュアスケート選手権で優勝。当時はまだ身長143センチの小学6年生だったこともあって“神童”と騒がれた。

オリンピック出場資格である満15歳に届かなかったため2018年平昌五輪には間に合わなかったが、その後も順調に成長し、シニア・デビュー戦となった今季GPシリーズ第2戦のスケート・カナダでは、あのキム・ヨナも果たせなかった「韓国人女子選手初のトリプルアクセル成功者」となって、いきなり銅メダルに輝いた。

また、今年1月にスイスで開かれた冬季ユース五輪では韓国選手として初めて優勝。前述した“キム・ヨナ キッズ三銃士”の中でも、今季は頭ひとつ抜き出た印象だ。

韓国ではこのユ・ヨンの優勝を期待する声が多く、そのために乗り越えなければならないライバルとして日本の紀平梨花の名を挙げるメディアが多い。

2人ともトリプルアクセルを跳ぶことから、「フィギュア四大陸選手権は“トリプルアクセル韓日戦”、ユ・ヨン、ホームでメダル挑戦」(『SPOTV NEWS』)と報じているところもある。

濱田美栄コーチに師事

ただ、当のユ・ヨンの口から紀平をライバル視するような発言はない。今年1月24日の会見でも、「紀平選手とは同じチームで練習しながらたくさんのことを見て学んでいる」と語っている。

実はユ・ヨン、一昨年から宮原知子や紀平梨花を育てた濱田美栄氏に師事しており、練習のために日本に来ることも多いという。

昨年10月には『スポーツソウル』フィギュア担当記者がインタビューを行ったのだが、その際にも「昨年までトリプルアクセルをほとんど飛べなかったのに、今季から突然良くなった。(濱田美栄氏のもとで)練習をたくさんしたことで体が慣れたようだ」と、濱田美栄氏への感謝と信頼を隠さなかった。

キム・ヨナに憧れてスケートを始め、日本人コーチのもとで技量を磨き、トリプルアクセルを武器にキム・ヨナ以来の快挙を狙うユ・ヨン。

フィギュアファンの関心は日本勢に集まっているが、ユ・ヨンがそこに割って入るダークホースになれるか、注目だ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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