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沢尻エリカの麻薬所持に反応した韓国にある「出演禁止リスト」とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
沢尻エリカ。写真は2007年2月に撮影されたもの(写真:ロイター/アフロ)

連日のように報道されている女優・沢尻エリカの合成麻薬MDMA所持に関連したニュース。スポーツ紙やワイドショーで「容疑者」と呼ばれる彼女のニュースを見ない日がないが、実は韓国でも連日のように報道されている。

「日本の美女スター、沢尻エリカ、麻薬所持の容疑で逮捕」(『韓国日報』)、「日本の有名女優の沢尻エリカ、麻薬所持の疑いで逮捕」(『KBSニュース』)といった第一報から、「沢尻エリカ、エクスタシー、LSD、コカインもやっていた」(『イーデイリー』)、「沢尻エリカ、麻薬所持で逮捕→大河ドラマは代役で再撮影」(『Newsen』)、「沢尻エリカ、10年以上…ドラマ違約金は?」(『国際新聞』)といった続報まで、こと細かく報じられている。

なかには「日本の悪童女優・沢尻エリカ逮捕」(『ソウル新聞』)、「女王様女優・沢尻エリカ、逮捕でCMとドラマ中止に」(『ペン&マイク』)というところもあった。

そもそも沢尻エリカは韓国でも有名だった。

彼女の出世作となった映画『パッチギ!』は2006年に韓国でも公開されており、そのプロモーションもあって来韓。2006年主演ドラマ『1リットルの涙』は韓国のドラマ専門ケーブルテレビチャンネルMBCドラマネットで放映されているし、2013年にも映画のプロモーションで韓国を訪れている。

昨今、韓国では藤井美菜、唐田えりか、RUIなど日本の女優たちがいち早く注目され人気が出るケースが増えているが、沢尻エリカもその例に漏れず、韓国で早くからその名が知られていたのだ。

(参考記事:“清純のアイコン”に“次世代セクシーアイドル”も。韓国で活躍する日本芸能界の美女たち

そんな有名女優が薬物に手を染めていたという衝撃度もあるが、彼女の薬物使用に関するニュースが連日のように報道されるのは、韓国でも同じようなことが起きているからでもあるだろう。

というのも、韓国では今年、4月に人気アイドル出身で俳優としても評価が高かった元JYJのパク・ユチョンの麻薬使用が発覚している。

9月にはボーイズグループiKONのメンバーだったB.Iが警察の取り調べで大麻使用を認め、11月にはボーイズグループMOSNSTA X出身のウォノが、大麻喫煙疑惑に包まれた。韓国でも芸能人の薬物問題がいつになく多かったのだ。

それだけに沢尻エリカの問題も対岸の火事とは思えないわけだが、韓国では薬物問題を起こした芸能人は経済的にも社会的にも制裁される。

例えば1990年代後半から2000年代にかけて清純派女優として人気だったファン・スジョンの場合。彼女は日本でも人気を博した韓国時代劇ドラマ『ホジュン〜宮廷医官の道』でヒロインだったが、2001年11月に薬物使用が発覚すると、当時出演していた多数の企業CMが全面中断となった。2007年のドラマ『塩人形』で復帰するまで、6年間も芸能活動ができなかった。

最近は、芸能人が薬物問題など社会的物議を起こすと、各放送局がその芸能人を今後も起用すべきかどうか審議する。

公共テレビ局のKBSや民放のMBCの場合、審議チーム、広報チーム、法務チームといったさまざまな部署で状況と今後のリスクなどを検討したうえで、「出演禁止リスト」なるものを作成するという。前述したパク・ユチョンも、MBCの「出演禁止リスト」にリストアップされたことが今年7月に報道されている。

この「出演禁止リスト」にその名が加わると解除されるまで、その局のドラマや番組には出演できない。2001年に児童性犯罪で懲役刑となったとある俳優の場合、18年間テレビ出演できなかったという例もあるほどなのだ。

沢尻エリカに関しても大河ドラマの降板・撮り直し、出演CMの中止・差し替え、それに伴う巨額の賠償金などすでに多くの代償が予想されるが、今後の芸能生活にも大きな痛手になることは間違いないだろう。残念なかぎりだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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