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11月に日本上陸の「BTSのテーマパーク」も。生みの親が掲げた“音楽産業革命”とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
BTS(防弾少年団)(写真:REX/アフロ)

今や世界各地で旋風を巻き起こしているK-POPグループBTS(防弾少年団)。その人気の高さは、世界20都市42回公演で約104万人を動員した昨年のワールドツアーの規模からも一目瞭然だ。

ハリウッドのマシュー・マコノヒーが家族とともにコンサートに足を運んでいるし、韓国では女優キム・テリ、日本では若手俳優の坂口健太郎などがBTSのファンであることを公言している。

BTSのファンダムは通称「ARMY」(アーミー)と呼ばれているが、ロイヤリティが高く、熱量も凄いARMYは世界各地で増えているという感じだ。

昨日10月18日にはBTSファン待望の大規模ポップアップストア「HOUSE OF BTS」がソウルの中心・江南(カンナム)にオープンした。

期間限定とはいえ、1組のアーティストが地下1階・地上3階規模のポップアップストアを展開するのはK-POP史上初ではないだろうか。

この「HOUSE OF BTS」には、BTSの数々のヒット曲をテーマにしたグッズや体験ゾーンが用意されていて、BTSの世界観にどっぷり浸れるという。ファンにとっては、それこそBTSのテーマパークなのだろう。多くのファンがこの日を待ちに待ったようで、オープン当日は早朝から行列ができ、エリア一帯がお祭り騒ぎだったという。

(参考記事:BTSの“期間限定ショップ”に潜入! まさにARMYのためのテーマパークだ【PHOTO】

このポップアップストアのオープンでもわかる通り、BTSは現在、アイドルやアーティストといった言葉では収まらない、一つの“ブランド”と化している。

それは、“BTSの生みの親”パン・シヒョク代表が率いるBig Hitエンターテインメント(以下、Big Hit)が今後目指そうとしている道でもあるのだろう。

Big Hitは今年8月、関連会社および協力会社など200人を対象に「共同体とともにするBig Hitの会社説明会」を開いているが、そこでも明確な経営戦略が示された。

パン代表は、会社の成功秘訣の一つとしてIP(著作権などの知的財産権・Intellectual Property)ビジネスをあげていた。要するにアーティストが構築したブランド価値を高めて市場での影響力を確保し、それを持続可能なブランド事業として拡大させるという方針だ。

実際のところ、Big Hitは音楽やミュージックビデオだけに限らず、小説やウェブ漫画、LINEキャラクター「BT21」、玩具、ゲームなど、様々なジャンルでBTSというグループが持つ世界観を活用している。

来年はBTSの世界観を描いた実写ドラマも放送される予定しているらしい。

これからも各分野を代表する有名メーカーとコラボを実施し、生活全般にわたってBTSの関連コンテンツを展開していくというのだ。ファンがその気になればBTSのポップアップストアで購入したグッズだけで生活できる日が来るのかもしれない。

K-POP業界にBTSという大きな波を起こし、「音楽産業の革命」という壮大なビジョンを掲げたBig Hit。

2019年上半期の発表によると、BTSのアルバムの売上額は韓国の大手3大事務所(SMエンターテインメント、JYPエンターテインメント、YGエンターテインメント)所属の全アーティストの売上を上回り、もしBig Hitが上場すればその時価総額は3大事務所を追い越す1兆6000億ウォン(約1600億円)と言われているから驚きだ。

それだけではない。Big HitはすでにBTSの“弟グループ”となるTOMORROW X TOGETHERをデビューさせ、新しいガールズグループも準備するなど、次々と新たな一手を打っている。その動きを見ていると、彼らが起こそうとする“音楽産業革命”の本気度が伝わってくる。

ちなみに11月には「HOUSE OF BTS」が期間限定ながら東京、大阪、福岡にもやってくるという。BTSというブランドの力と、BigHitが考えているIPビジネスの最先端を間近で見られるチャンスかもしれない。

BTSおよびBig HitがリードしていくK-POP業界はどう変化していくか。今後の動向に注目が集まりそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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