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東方神起への単独インタビューでわかった!!ふたりの「日本語力」と「誠実さ」

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
月刊GOETHE最新号(著者撮影)

韓国はもちろん、日本でも絶大な人気を誇るスーパーデュオ東方神起。昨年は5大ドームツアーに加え、国内外アーティストとしては史上初となる日産スタジアム3DAYSも開催。そのトータル動員数は約120万人を超え、2018年の年間ライブ観客動員ランキングでは安室奈美恵(4位)、嵐(3位)、B‘z(2位)を抜いて堂々の1位にも輝いた。

韓国でもその人気は高い。昨年はデビュー15周年記念スペシャルアルバム『New Chapter#2:The Truth of Love』を発表し、ソウルで行われたファンミーティング「TVXQ! Special Day ‘The Truth of Love’」も大盛況。衰えることのないその人気から、韓国メディアの『毎日経済』などは「東方神起こそ“不滅のアイドル”と呼ぶにふさわしい」とし、多くの韓国メディアがその成長の記録を大特集したほどでもあった。

もちろん、今年も日韓を股にかけて活躍中。日本では最近、ニューシングル『Hot Hot Ho/ミラーズ』を発表しており、韓国ではユンホが待望のソロアルバムを発表、チャンミンが人気バラエティのMCに抜擢されるなど、大忙しだ。先日は香港でコンサートも開いている。

(参考記事:【写真あり】東方神起、香港アンコール公演を開催。彼らが披露したものとは?)

そんな中、この夏にはビジネス&カルチャー誌『月刊GOETHE』の最新号(2019年9月号)で表紙と特集グラビアを飾っている。すでに書店に並んでいるのでご覧になった方々も多いかもしれない。

実はこの『GOETHE』で筆者はふたりのインタビューを担当した。ふたりと直接言葉を交わしたのは2011年6月7日に京セラ・ドームで行われた『Seoul Osaka Music of Heart Fighting JAPAN』でのバックステージ以来だったが、テーブルを挟んでじっくり話し合って驚いた。

インタビューの最初から最後まで、ふたりは一貫して日本語で受け答えしたのだ。

もちろん、彼らだけではなく、日本語でインタビュー取材を応対する韓国人は多い。筆者も仕事柄、これまで多くのスポーツ選手や芸能人、文化人やビジネスマンにインタビューしてきたが、「日本語が上手だなぁ」と感じさせるインタビューは多かった。

例えばスポーツ選手ではサッカーのノ・ジョンユン、パク・チソン、キム・ミヌ、キム・ジンヒョンが上手であったし、女子ゴルフだと全美貞が流暢な日本語だった。ツアーパンフレットの仕事で何度がインタビューした元KARAのメンバーたちも、当時はかなり熱心に日本語を勉強していてひらがなで日本語メッセージを書いてくれたほど。現在はアルビレックス新潟でプレーするチョ・ヨンチョルに至っては、日本語でツイッターをつぶやくほどだ。

ただ、インタビューではどうしても韓国語のほうがスムーズになる。込み入った話やその心情や考えを正確に伝えようとすれば、ボキャブラリーが豊富な韓国語になりがちで、細かいニュアンスを表現したい場合は余計にそうだろう。

しかし、東方神起のふたりは違った。聞くのも話すのも日本語で、しかもそのレベルはかなり高い。正直、これまで取材してきた韓国のアスリート、芸能人、文化人にビジネスマンの中でもトップクラスだった。

なぜ、彼らは日本語で対応したのか。こちらが韓国語でやり取りできることはわかっていても、スタッフや編集者などスタジオにいた大勢の日本人スタッフにも話している内容がわかるようにしたいという彼らなりの気遣いのようだが、私はそれだけではないと感じた。

たとえ誌面の活字とはいえ、自分たちの考えや想いを日本の読者やファンたちが使う言葉で届けたい。そんな一心からではなかったかと思う。日本でのデビュー以来、日本のファンたちとしっかりと向き合い寄り添いながら、さまざまな出来事を共有してきた彼らだからこそ、韓国語ではなく日本語で伝えたかったのではないかと思う。

かつてとある男性K-POPグループのマネージメントを間近で手伝ったことがあるが、彼らは口では「東方神起のように日本でも頑張りたい」と語るものの、ファンはおろか日本スタッフたちともなかなか協調しようとはせず、結局は消えていった。

そういった残念な場面を何度も見てきただけに、東方神起の対応は驚きで、その成熟さは眩しく見えた。

しかも、インタビューでは彼らが得意とする音楽やダンス・パフォーマンスのことだけではなく、お酒との付き合い方や仕事観など、普段はあまり語られてこなかった硬派な内容だった。ふたりとも人生哲学や30代になって変わった価値観なども話してくれて、人間的な魅力と味わいが深まっているように見えるくらいだ。

兵役も無事に務め上げ、30代になって大人の男の誠実さも漂わすようになった東方神起。今年秋(11月)からは通算4度目となる5大ドーム・ツアーを開催するという。赤い熱狂が待ち受けるすべての会場でも、東方神起はきっと、日本語でストレートに自分たちの“熱い想い”を伝えるに違いない。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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