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日本でも最近映像化が増えるウェブ漫画とは?韓国の人気作家が語る「可能性」

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真提供:エスピーオー)

2年前の今頃、Hey!Say!JUMPの中島裕翔が主演し、遠藤憲一らが脇を固めたドラマ『HOPE~期待ゼロの新入社員~』(フジテレビ系)を覚えているだろうか。

総合商社を舞台に、非正規社員問題や社内不正問題といった昨今起こるさまざまな問題を取り上げつつ、そこで働くビジネスパーソンたちの人間模様が描かれた作品だった。

そして、このドラマはもともと、大ヒットしたドラマ『未生 ミセン』のリメイクだった。

日本ではその後、『ごめん、愛してる』(TBS系)、『シグナル長期未解決事件捜査班』(フジテレビ系)、『グッド・ドクター』(フジテレビ系)など韓国ドラマがリメイクされ、最近は韓国でも『Mother』、『リッチマン、プアウーマン』、『最高の離婚』、『リーガル・ハイ』などがリメイクされているが、『HOPE』はその流れの始まりだったと言えるかもしれない。

(参考記事:【2019年版】韓国でリメイクされた日本のドラマを一挙紹介。えっ、あのドラマまで!?

しかも、『HOPE』=『未生』は韓国で大ヒットしたウェブ漫画を原作にしている。日本でも翻訳出版され、2017年には第20回文化庁メディア芸術祭のマンガ部門で優秀賞を受賞するなど、日本でもその作品性を認められている。

この『未生 ミセン』の原作者がユン・テホだ。彼は『未生』だけではなく、映画『インサイダーズ/内部者たち』や『黒く濁る村』といった映像化された韓国映画の原作者でもある。日本の原作小説が韓国映画になることも多いが、韓国では最近、ウェブ漫画が映像化されてヒットすることが本当に多い。

しかも、『未生』、『内部者たち』、『黒く濁る村』。見た人ならわかると思うが、彼の作品に共通するのは韓国社会が抱える暗部とそこに生きる人々の人間模様が多面的に描かれていることだ。

それだけに以前から興味があり、韓国コンテンツ振興院日本ビジネスセンターの協力でユン・テホ本人へのインタビューが実現した。

「42歳になってようやく売れっ子作家になりました。こうやって日本でも取材を受けるのですから」

挨拶するなり、明るく照れ笑いを浮かべながらそう語ったユン・テホ。『未生』の日本リメイクについて感想を尋ねてみると、こんな言葉が返ってきた。

「『未生 ミセン』が日本でドラマ化されたことは、僕にとってもものすごいビッグチャンスで、とてもありがたい話でした。日本では講談社からコミックスが発売され、映像化についてはフジテレビさんと長らく話を進め、ドラマ化を実現させたのです」

「韓国ではドラマ化の成功に伴って非正規雇用が話題に上がることが増えましたし、“ミセン”という言葉が社会に定着したりと、いろんな現象が起きましたが、日本でもそういうところに興味を持ってくださったようです。

アジアにはいま、将来について懐疑的な見方を示す若者が多いようですが、やはり日本でも共感する部分が多かったのではないでしょうか」

インタビュー中のユン・テホ作家(写真協力:スポーツソウル日本編集部)
インタビュー中のユン・テホ作家(写真協力:スポーツソウル日本編集部)

韓国では若者たちの就職難が長引き、今でも問題になっている。あのBTSも、その楽曲を通じて韓国の若者たちが抱える問題を語り、韓国社会に強くメッセージを放っている。

ユン・テホも自身の作品を通じて、韓国社会が抱える問題を訴えてきた作家だが、では彼はいかにして創作活動を始め、韓国でひとつのコンテンツとして定着しているウェブ漫画界の現状についてどんな意見と考えを持っているのだろうか。

もっと詳しく知りたくなった。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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