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美女やアイドルも“トロット歌姫”に。“韓国の演歌”が人気再燃しているワケ

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(提供:ペイレスイメージズ/アフロ)

「トロット」という音楽ジャンルをご存知だろうか。

“韓国の演歌”といわれる大衆歌謡で、その起源には日本の演歌の影響もあるそうだが、いま韓国で人気が急上昇している。

“トロット女神”の存在感

例えば、3月にアルバムを発表したトロット歌手のひとりで、セクシーな美貌と歌声から“トロット女神”などと呼ばれるホン・ジニョンは、韓国企業評判研究所が発表したブランド評判指数でK-POPアイドルたちを抑えて、1位に輝いたこともある。

そんな彼女の活躍も韓国でトロット人気が上昇している理由のひとつだろうが、TV朝鮮のオーディション番組『ミス・トロット』の影響は外せない。

そもそも韓国では近年、オーディション番組が話題を集め続けている。“韓国のASAYAN”と呼ばれる『プロデュース』シリーズは日本の韓流ファンからも注目を浴びており、その番組から誕生したガールズグループ「IZ*ONE」の活躍は周知の通りだ。

そんな流れのなかで、次世代のトロット新スターを誕生させるという『ミス・トロット』が放送された。とはいえ題材がK-POPやアイドルではなく、トロットであることから、企画段階から懸念の声が少なくなかったという。

それでもフタを空けてみると、同番組は放送から視聴率の上昇カーブを描いた。「大人の“プロデュース”シリーズ」などと呼ばれ、地上波でも難しい最高視聴率18.1%を達成したというのだから、いかに反響が大きかったか伝わってくるだろう。

これまで年配層の音楽というイメージがあったトロットというジャンルが、同番組を通じてより幅広い層に支持されることになったのだ。

『ミス・トロット』TOP5メンバーが活躍

事実、『ミス・トロット』でTOP5にランクインしたメンバーは、子持ちのママや売れない歌手、女芸人など経歴も異色で、K-POPアイドルとはまた違った魅力がある。

(参考記事:【インタビュー】韓国で話題沸騰のオーディション番組『ミス・トロット』、TOP5に会ってみた

特に『ミス・トロット』で最終的に優勝したソン・ガインなどは、今をときめくアイドルに混じって音楽番組に出演するなど、引っ張りだこだ。ソン・ガインはあるテレビ番組で「出演料が10倍ほど上がった」と発言しており、人気の高さがわかる。

また『ミス・トロット』メンバーたちは現在全国ツアーを行っており、当初6都市で行われる予定だったが、チケットが完売したため16都市に増加するなど、好評を博しているそうだ。

まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのトロット人気だが、一方で炎上騒ぎも起こっている。

“問題発言”で炎上も

『ミス・トロット』の全国ツアーで、全羅道を訪れた際に、メンバーの1人が“地域差別”と思える発言をし、炎上したのだ。当事者は謝罪したが、今も騒動は収まっていない。

急激にトロット歌手に注目が集まり、話題の人物になっただけに、自分の立場に対する理解が追いついていないのではという指摘が多い。「今の人気を実感しているか」という質問に『ミス・トロット』メンバーたちは「実感が沸かない」と答えていたが、自覚が足りなかった点は否めないだろう。

いずれにしても韓国で人気が急上昇しているトロット。今後もその傾向が続くのか、注目してみたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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