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「女帝温存」で開幕2連敗でも女子バレーボール韓国代表への期待に胸弾む“3つ理由”

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
女子バレー韓国代表(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

女子バレーボールのネーションズリーグが始まった。日本は初戦のブルガリア戦を3-1で制して白星発進したが、続くアメリカ戦に敗れ、1勝1敗というまずまずのスタートを切った。

対照的に不安なスタートとなったのは、韓国だ。

初戦の相手は昨年同大会の準優勝チームであるトルコで、ほとんど良いところなく0-3と完敗。続く2戦目も世界ランキング1位のセルビアと対戦し、1-3と連敗を喫した。

順調なスタートは切れなかったものの、今回の女子バレー韓国代表に対する期待は低くない。その理由は何か。

国内リーグが大盛り上がりの女子バレー

ひとつは、女子バレーの韓国国内リーグである「Vリーグ」が大きな盛り上がりを見せたからだ。

イ・ジェヨンら“美女アタッカー”たちの活躍もあり、ポスト・シーズンの試合の視聴率は、前年比103.9%も急上昇したというのだから驚く。

(参考記事:【PHOTO】“Vリーグ女神”に“美人姉妹”、日本との因縁も。韓国美女バレー選手ベスト6を一挙紹介

そんな大盛り上がりを見せた韓国Vリーグは4月にシーズンが幕を閉じているが、その熱気によって女子バレー韓国代表の試合にも注目と期待が集まっているといえる。

ふたつ目は、女子バレー韓国代表として初となる外国人監督の招聘だ。

“神戸惨事”にセクハラ問題まで…

そもそも韓国女子バレーは昨年、バレーボール世界選手権でまさかの1次リーグ敗退の屈辱を味わった。

当時、世界ランキング1位のアメリカやロシア(同5位)、タイ(同16位)などが属し、“死の組”とされたC組に入る不運もあったが、韓国が1次リーグで敗退するのは、世界バレーの出場枠が24カ国に拡大された1974年大会以来、初めてのことだ。

“神戸惨事”と呼ばれる敗退に加え、さらに敗退直後には“セクハラ問題”まで浮上し、「女子バレーはめちゃくちゃになった」(韓国スポーツ紙)とまで指摘されていた。

(参考記事:“神戸惨事”の始まりだった…女子バレー韓国代表に起きていた「セクハラ事件」の内情

そんななかで史上初の試みとして、外国人監督が招聘された。イタリア出身のステファーノ・ラバリニ(Stefano Lavarini)監督がその人で、「史上初の外国人監督、韓国女子バレーはどれだけ変わるか」(『ノーカットニュース』)などと、沸き立った。

ラバリニ監督は1979年生まれで、選手経験のない経歴の持ち主だ。それだけに韓国の指導者とはトレーニング方法や要求に違いがあったという。イ・ダヨンやチョン・デヨンといった女子バレー韓国代表の常連によると、「男子のような攻撃スピードバレー」の追求が新監督の哲学らしい。

ネーションズリーグ初戦でトルコに敗れた際も、「身体的に不利なチームとの試合では、私たちの攻撃をより速くする必要がある。そして戦略的な試合運用が必要である」と強調していた。

そんな監督の哲学がチームに溶け込むまで、もう少し時間がかかると考えでも楽観的すぎることはないだろう。

そして最後の理由は、ここ2戦の韓国代表はベストメンバーではないからだ。

絶対的エース、キム・ヨンジョンの合流はまだ

何よりも韓国女子バレーの絶対的なエースでキャプテンを務める、キム・ヨンギョンが出場していない。トルコリーグでプレーする彼女は5月に入って韓国に帰国しており、ネーションズリーグ第3週(6月4~6日)から合流することになっている。

キム・ヨンギョンが所属するエジザージュバシュは2018-2019シーズン、トルコリーグ1位、トルコカップおよびスーパーカップに優勝しており、彼女の大きな貢献を果たした。

「一生懸命準備したい」と意気込んでいる彼女がまだ合流していないだけに、韓国代表への期待は続いているわけだ。

(参考記事:「東京五輪は夢とは違う」女子バレーのキム・ヨンギョンが語った抱負と決意

いずれにしても現在行われているネーションズリーグの1次リーグは、出場16チームが総当りで戦い、6月20日まで続く。韓国女子バレーの今後の上昇に期待したい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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