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K-POP=韓国ではなく、韓国デビュー目指す日本人も。K-POPダンス・ブーム最近傾向

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
(写真提供=『KP SHOW!』実行委員会)

ダンス・ブームに沸く日本で、ひとつのジャンルとして成立しつつあるK-POP。そのK-POP専門のカリキュラムがある『Dance Studio Cielo』を主宰し、今年で開催20回を超えたK-POPダンス・イベント『KP SHOW!』の運営にも携わる町田真吾さん。K-POPダンスの最近の傾向などを紹介したい。

―幅広い層の間でK-POPダンスが流行・浸透していると思いますが、一時期的にK-POP人気が落ち着いた頃もあったと思います。具体的には日韓関係が冷え込み始めた2013年ぐらいですが、そのときにファンは離れてしまったりしたのでしょうか。

「世間的にはK-POP人気が著しく冷めたような報道が多かったような気もしますが、さほど影響はなかったですね。確かに2010年前後の熱気が若干落ち着いた感じもありましたが、K-POPのファンは根強く存在しましたし、コミュニティが多くいずれも強く繋がっていましたから」

―そうこうしているうちに、2017年頃からふたたびブーム再燃となりますよね。いわゆる“第三次韓流ブーム”の到来です。

「ええ。TWICEやBTS、BLACKPINKなどの登場で、数年は若年層、特に中学・高校生が増えて小学生のキッズ・ダンサーたちもK-POPを踊りたいと言って、親御様と一緒にいらっしゃるようになりました」

(参考記事:広がりつつあるK-POPダンス・ブームの実態【日本の中の韓流、15年目の現在地】)

―日本の中高生たちはなぜ、K-POPに引き付けられたのでしょう。TWICEやBLACKPINKのダンスのどんなところに魅力があったと思いますか?

「小学生の間ではTWICEが人気だし、高校生、大学生になるとBLACKPINKが人気です。なぜ人気かというと、彼女たちのダンスは自分たちでも真似の出来る、真似のしやすいちょうど良さ、というものがあると思うんです。

(参考記事:ワールドツアーに向かうBLACKPINKを激写! 空港で見せたキュートなコーディネートも話題【PHOTO】

USのプロモヴィデオにも沢山ダンスは出てきますが、アジア人と欧米人では身体つきが違うし、同じ踊りでも見え方は異なります。K-POPはほどよく最先端の振り付けを吸収していて今っぽさもあり、同じアジア人として“真似したい”“真似できる”という要素が多いことが魅力なのではないでしょうか」

―なるほど。そのほかには?

「音楽的にもK-POPが人気となる余地が日本にはあったと思います。昔は低音が効いているクラブ・ミュージック調の楽曲はポップチャートでは受け入れられなかったものですが、今やクラブ・ミュージックが若年層にかなり浸透しています。

そういった若年層の趣向の変化と同時に、K-POPは流行りの洋楽と同じように聴いたりできるんです。極端な例えかもしれませんが、リアーナを聴いた次にBTSやBLACKPINKの曲を流してもまったく遜色がないというか」

―音楽に国境はないと言いますが、まさにそんな感じなのでしょうね。

「そうですね。加えて今の若いファンたちにとっては、“K-POPイコール韓国”になっていない方も多いのかもしれません。

例えば韓流ドラマ好きの方の場合、韓流ドラマは韓国のものという前提があると思いますが、今の若者たちはK-POPのKはKOREAという認識こそあれ、韓国という国と密接に結びついてはない。

実際、韓国という国にもさほど興味はないし、新大久保にも特には行かないけど、BTSやTWICEは好きというライトなリスナーも非常に増えている印象です。

彼らは一種のカルチャーとして、K-POPを捉えていると思います。ヒップホップやジャズに国籍を問わないように、K-POPにも国籍が無くなりつつある。ロックやヒップホップのように、K-POPもひとつのジャンルになっているわけです」

(参考記事:日本の“韓流人気”を象徴するアンケート調査の意外な結果とは?【日本の中の韓流、15年目の現在地】)

―なるほど。最近はそんなK-POPのアーティストやダンサーとしてデビューしたいと日本の若者も増えているのでしょうか。実際に韓国に渡って練習生になった日本人も多いわけですし。

「そうですね、最近は趣味としてK-POPダンスを習いに来るのではなく、将来的にはK-POPグループとして芸能界デビューすることを夢見てやって来る10代も、増えてきています。

そういう状況を聞きつけて、韓国から問い合わせを受けたり、韓国の芸能事務所と協力して非公開のオーディションをすることも増えました。彼らの今後に関する最終判断はこちらではできませんが、いつかこのスタジオから本物のK-POPアイドルを輩出できたら良いですね」

―そのためにもK-POPが一過性のブームで終わらず、これからもますます発展し盛り上がることが不可欠だと思いますが、最後に韓国側にお願いや課題があるとしたら?

「まずは引き続き素晴らしい楽曲とパフォーマンスを発表し続けてほしいですよね。ファンや多くの人々が、“私もあのダンスを踊ってみたい”と思うような憧れであり続けてほしいと思います。

あとは・・・韓国のアイドルは恋愛などに関して、少しオープンすぎる場合があるので(笑)、アイドルやアーティストの方が恋愛をされる場合は、ファンのことももう少し配慮してもらえたら嬉しいですね。」(おわり)

町田真吾さん(撮影協力:スポーツソウル)
町田真吾さん(撮影協力:スポーツソウル)
ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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