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薬物、売春斡旋とスキャンダル多発の韓国芸能界で今、問われている「品格」

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
パク・ユチョン(写真:ロイター/アフロ)

日韓合同ガールズグループ「IZ*ONE」などを輩出したオーディション番組『PRODUCE』。その新シリーズ『PRODUCE X 101』が、番組開始早々トラブルに見舞われてしまった。

日本ではお笑いコンビ・ナインティナインが仕切り役を務める日本版プロジェクト『PRODUCE 101 JAPAN』の応募が始まっているだけに、本家の新シリーズに対する注目も高いのではないだろうか。

ただ、『PRODUCE』シリーズはその出演者の多さもあって毎回何かしらトラブルが発生する印象だが、あいにく今回も予期せぬ事態が起こってしまった。

渦中の人物は、TWICEなどが所属するJYPエンターテインメント(以下、JYP)の練習生ユン・ソビン君。同番組に出演する練習生のほとんどが中・小芸能事務所の所属なのに比べ、JYPという大きな看板を背負う彼は登場シーンからして注目を浴びる存在だった。

ところが第1話放送後、彼が「校内暴力の加害者だった」と主張するネット投稿が拡散。地元では名の知れた不良だったというその投稿には、制服姿で飲酒・喫煙を行う彼の写真も添えられており、波紋を広げた。

(参考記事:未成年飲酒に喫煙、校内暴力? 『プロデュース』新シリーズの人気練習生が“素行不良”疑惑で炎上)

結果から言うと投稿があってから3日後、ユン・ソビン君は番組降板が決まり、JYPとの契約も解除されている。

そもそも同番組の制作発表会では「出演する練習生を決める際は個人面接2回、事務所面接1回を通じて私生活の面もチェックする」と明かしていたが、当の本人が嘘を通す場合はそれを信じるほか方法がなく、このような不祥事になりかねない。

まだデビューもしていないアイドルの卵とはいえ、韓国がタレントの“私生活”にここまで敏感な反応を示すのは、やはりここ最近の出来事が大きく影響しているからだろう。

例えば、この数カ月、世間を騒がせているBIGBANGの元メンバーV.Iは性接待あっせんや横領など、いわゆる“V.Iスキャンダル”で芸能界全体を揺さぶっている。

(参考記事:世間の目が再びV.Iへ。“ミルク姫”の麻薬コネクションはどこまで広がるか)

JYJユチョンも先日、元恋人であるファン・ハナ氏と麻薬を投薬した事実を認め、芸能人生を棒に振ることとなった。

(参考記事:【検証】麻薬容疑のパク・ユチョン、韓流スターはいかにして堕落していったのか)

それだけではない。昨年には「#MeToo」運動で人気俳優のオ・ダルス、映画監督キム・ギドクなどがセクハラ・性的暴行疑惑で世間に衝撃を与えている。

当時、あまりにも多い俳優が疑惑に包まれたため、とある関係者は「もう演技力は問わない。私生活がクリーンな俳優であれば起用する」と嘆くほどだった。

この一連の出来事は韓国芸能界に一石を投じたようで、今やいくら実力や人気があるタレントだとしても「まずは品格を備えてから」という認識が広がりつつある。「芸能人を夢見る者は幼稚園の頃から自己管理すべき」という笑い話も出るくらい、タレントに求める品格の基準が高まったのだ。

(参考記事:スキャンダル多発の韓国芸能界は今…「笑い話をチェックするほど敏感な時期」)

これは芸能人がただの“憧れ”の存在から公人として“ソーシャルモデル”であることが期待されるようになったとも言えるが、K-POPなど韓国のエンターテインメント・コンテンツが韓国を超えて世界で消費される時代だからこその変化なのかもしれない。

いずれにしても、『PRODUCE X 101』のような騒動は日本でも十分起こりうる問題だ。今後も動向を見守りたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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