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学生たちが「恐ろしい」と身震いする韓国の新入生歓迎コンパの落とし穴とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
写真はイメージです。(ペイレスイメージズ/アフロ)

全国各地の大学で新学期が始まり、部活動や同好会サークルの新入生歓迎コンパがあちこちで行われている今日この頃だ。夜の街に出かけると、大学生と思しき若者たちが居酒屋などで楽しく盛り上がっている姿を見る機会も多くなった。

実は韓国でも新歓コンパは新学期の風物詩となっていて、大学生を主人公にした学園モノのドラマなどでは欠かさず登場するイベントでもある。

韓国の大学では新入生歓迎会のことを「OT」(オリエンテーションの略)と呼ぶ。日本でも新学期早々にオリエンテーションを行なう学校が多いが、韓国のそれは新学期前、つまり入学式を1〜2週間後に控えたタイミングで、学科ごとに行われるのが一般的だ。

今年は美少女子役として有名だったキム・ヒャンギとキム・セロンがそれぞれ大学生になって、ドラマではないリアルなキャンパス・ライフを送っているが、彼女たちもきっと、「OT」に参加したことだろう。

ただ、韓国の「OT」は1泊2日以上の日程で行われるのが普通だ。大学生活に関する情報を共有し、教授や先輩との親交を深めることが目的となっているが、まだ入学もしていない新入生たちは、初対面の人たちと一晩を過ごさなければならないわけだ。

そして、その夜にかならず登場するのがビールや焼酎といったアルコール類だ。

韓国では19歳から飲酒が認められており、しかも数え年で歳を数えるため、19歳になった歳の1月1日からお酒解禁となるため、高校を卒業したばかりの新入生たちがお酒を飲んでもなんら問題はない。

ただ、それがときに度が過ぎる場合がある。

2017年には、とある大学が1700人の学生を対象とする2泊3日のOTに備えて焼酎7800本、ペットボトル・サイズのビール瓶960本など、計1200万ウォン(約120万円)相当のアルコール類を購入したことが発覚し、物議を醸した。

宴会でお酒は欠かせないとはいえ、焼酎だけでも1人当たり4〜5本ずつ飲まなければいけない分量を大学側が準備していたことは理解に苦しむ状況だ。

また、酒やアルコール類が原因で不祥事も起きている。

例えば、女子学生たちは飲み会の余興としてセクシーダンスを強要されるという。その過程で女子学生たちへのセクハラが行われるのは想像に難くない。昨年、発覚した女子バレー韓国代表のセクハラ騒動も、合宿中の宿舎での飲酒が原因だった。

(参考記事:“神戸惨事”の始まりだった…女子バレー韓国代表に起きていた「セクハラ事件」の内情

さらには、酔った女子学生への性的暴行や盗撮事件も少なからず起きている。

最近もBIGBANGの元メンバーであるV.Iやタレントのチョン・ジュニョンが参加していたメッセンジャーアプリ内でのグループチャット内で、女性蔑視発言や盗撮動画の流布などが行われていたことが明らかになっているが、飲みの席での被害を告発するケースも増えているのだ。

(参考記事:V.Iらグループチャットの被害者がさらに登場…海外で性暴行→不法動画を撮影・共有

さらに言えば、韓国では毎年この時期になると大学新入生が急性アルコール中毒で死亡する事故、過度な飲酒による失神や転落事故なども多く、OTを控えた大学新入生たちから「怖い」という声もよく上がっているという。

昨今、K-POPアイドルたちの学歴詐称問題や大学での“特別待遇”などが問題になっている韓国だが、大学内で起きている悪しき飲酒文化も正すべきだろう。

(参考記事:“特別待遇”疑惑のK-POPアイドルたちの学位は「取り消し」に!! 大学側の異議が棄却

ただ、最近はそのような事件・事故を防止すべく、少しずつ改善への動きも出ている。

例えば今年3月、ソウルの崇実(スンシル)大学が「お酒強要禁止ブレスレット」を導入し、話題を集めた。

それぞれ「お酒を飲めない」「今日はほどほどに飲みたい」「お酒に強い」といった意味を表す3色のブレスレットを新入生たちに配って視覚的にはっきり意思表示できるようにしたのだ。その結果、新入生からの反応は大好評で、和やかな雰囲気の中でOTが行われたという。

他にも「ノンアルコールOT」を宣言する大学や、1泊2日のOTを廃止してキャンパスツアーのみを行う大学なども現れるなど、新入生の歓迎文化そのものが変わりつつあるようだ。

いずれにしても、日韓両国で新入生歓迎ムードが盛り上がる昨今。これからの時代を担う大学生たちには飲酒で失敗することなく、キャンパス・ライフという名の青春を存分に楽しんでもらいたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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