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先輩イ・ボミに続け!! 韓国ゴルフブランドも注目する日本人ゴルファー瀬戸瑞希とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
瀬戸瑞希(著者撮影)

“黄金世代”の台頭や韓国勢の強さなど、今季も話題に事欠かない国内女子プロゴルフツアー。そんな中で個人的に気になる選手がひとりいる。

瀬戸瑞希。黄金世代よりも3歳年上の1995年生まれである彼女の存在を教えてくれたのは、韓国のゴルフ関係者だった。

「韓国のゴルフ・アパレルブランドが日本の女子プロとウェア契約を交わしたらしい」

仕事柄、韓国のゴルフ市場調査をすることもあり、特に韓国のゴルフ・アパレル市場が伸び盛りであることは知っていた。最近では“フェアウェイの妖精”と呼ばれる美女ゴルファーのパク・キョルが、今季からFJのアンバサダーに就任して韓国でも大きなニュースになっている。

(参考記事:韓国屈指の“絶世の美女ゴルファー”パク・キョル、今季からFJのアンバサダーに!!

そんな韓国のゴルフ・アパレル企業がいよいよ日本人選手との契約にも乗り出したのかと思いつつ、彼女のことを調べてみると、ツアー優勝経験どころかプロテストにもまだ合格していない。

昨年のファイナルQTで19位になり、今季前半戦の出場権こそ得ているが、まだ実績ゼロの選手だ。そんな無名に近い彼女になぜ韓国ブランドから白羽の矢が立ったのだろうか。

「実は私もオファーがあったときは驚きました。まだこれといった実績もないので」

照れ隠しにちょっぴり当惑した表情を浮かべつつ謙遜した瀬戸。たしかに彼女のこれまでのキャリアを振り返ると、目立った実績があるわけではない。

「幼稚園のときにゴルフ好きだった両親に連れられて、ゴルフ練習場でクラブを握ったのが初めてでした。ボールを遠くに飛ばすのが、とにかく楽しくて。両親も、時間を見つけては私を練習場やゴルフ場に連れて行ってくれたので、気が付くとゴルフ漬け。小学生や中学生時代は、学校とゴルフ練習場と自宅の間を行き来する毎日でした」

大阪産業大学付属高校に進学してからはさらにゴルフ漬けの毎日を送り、プロゴルファーになることを人生の目標に定めたというが、現実は厳しく夢への扉をなかなか開くことはできなかった。

「高校を卒業したあと、琵琶湖CC(カントリークラブ)の研修生になりました。日中はゴルフバックを担いだりキャディを務め、勤務が終わったら練習に励む毎日を送ったのですが、プロテストになかなか合格できなくて。その後、ラーメン屋さんでバイトもしながら、ステップ・アップ・ツアーも出場していましたが、なかなか結果を残せず家族に迷惑かけてばかりだったんです」

レギュラーツアーへの出場資格を持たない選手や新人を対象にしたステップ・アップ・ツアー。瀬戸は2015年から参加しているが、優勝は一度もない。それでも一人娘の夢を応援する両親に支えられ、北は北海道から南は九州・沖縄でも開催される試合に精力的に出場し続けた。

「母が運転するエスティマに、ゴルフ用具はもちろん、衣類や日用品まで一切合切を詰め込んで各地を転戦しました。私に稼ぎがなかったので、それこそ一家の貯金を食いつぶす毎日です。それでも両親は私を最優先に考えてくれて…。私だけビジネスホテルに泊まって母は車中泊ということもありましたし、母が夜通しで運転して次の試合会場へということも。結果が出ず、悔しさと申し訳なさで泣きながら夜の高速道路を走ったこともありました」

泣きながら日本を横断した母娘。想像しただけで胸が詰まったが、おそらくプロゴルファーを目指す多くの選手と家族が、瀬戸親子のような苦労を重ねているのだろう。

ただ、「失敗も不運も引きずらない性格」(瀬戸)ゆえに、それでも気持ちはいつも前向きでレベルアップに貪欲だった。

充実した練習環境と藤井かすみプロの指導が受けられると聞いてマスターズゴルフアカデミーに入校したり、月に一度は静岡まで出向いて“チームセリザワ”の高田順史プロからスイングチェックも受けている。さまざまな変化を加えながら自身のゴルフをバージョンアップさせていた昨年、突如飛び込んできたのが韓国のゴルフ・アパレルブランドからのオファーだった。

「まだ立ち上がって間もないブランドで、そのブランド・イメージを一緒に作って成長できる新人選手を探していたそうなんですね。その過程で私のインスタグラムを見つけて打診してくれたそうです。私、多くの韓国人プロのインスタグラムをフォローしているので、それも関係していたかもしれません」

たしかにイ・ボミ、キム・ハヌル、アン・シネなど“韓国女子ゴルファー神セブン”たちはインスタグラムなどSNS発信に積極的だ。“次世代セクシークイーン”と呼ばれるユ・ヒョンジュの場合、彼女が写真をアップするだけでそれが記事にもなる。

(参考記事:“韓流ゴルフ女神”ユ・ヒョンジュの男心をつかむフィジカル【PHOTO】

ただ、SNSの発信だけで瀬戸にウェア契約を打診したわけではないだろう。彼女の可能性に着目したのだろうし、実際、瀬戸は昨年のファイナルQTで19位になっている。2015年はファイナルQT101位、2016年はサードQT90位、2017年はファイナルQT100位で終わっていたことを考えれば大躍進だ。韓国のゴルフ・アパレルブランドも、そんな急成長ぶりに着目していたのもかれしない。

それに期待しているのは、韓国のゴルフブランドだけではない。マスターズゴルフアカデミー出身という縁もあって、瀬戸は今年から、イ・ボミやキム・ハヌルらと同じく延田グループ(マスターズゴルフ倶楽部)所属選手となった。

「ボミさんやハヌルさんには、先日もツアー会場で挨拶させていただきました。今までテレビや雑誌で見ていたプロたちと同じ舞台に立っていることが信じられないくらいです。いえいえ、緊張したり、物怖じすることはありません。もともと人に見られることが結構好きなタイプなので、むしろレギュラーツアーをプレーできる喜びを噛みしめながら、ゴルフを楽しんでいます」

嬉しそうにそう語った表情に充実感が漲っていた。今のところ開幕戦から予選落ちが続くが、その結果にめげることも焦ることもない。

「“過ぎたことはしゃあない、次、頑張ろう”。そんな感覚です。気持ちの切り替えが早いほうなんです。それに自分らしいゴルフをしていれば、いつか結果もついてくるはずだし」と楽観的だ。明るくポジティブなところが彼女の魅力であり、長所なのかもしれない。

「とにかく今季は頑張って、来季シード権を獲得することが目標。そのためには技術を磨く必要がありますし、練習しかありません。ひたすら練習して、レギュラーツアーに立ち続けたい。遅咲きでもいいから佐伯三貴プロのように、息が長くいつまでも第一線で活躍できる選手になることが目標です」

瀬戸瑞希、24歳。まだ実績も名声もないが、その名前は覚えておいたほうがよさそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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