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受験生のために入試問題に保護者が激怒も。人生をかけた韓国の大学受験とは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
スヌンに挑む学生たちを応援する人々もいる。(写真:ロイター/アフロ)

受験シーズン真っただ中の今日この頃だ。国公立から私立大までさまざまな大学で入学試験が行われており、街で受験生と思わしき若者たちを見る機会も多い。

誰もが希望する大学に進学できるよう祈るばかりだが、韓国では受験生たちの大学進学動向をめぐって、ちょっとした異変が起きている。

事の発端となったのは、日本の大学入試センター試験に当たる「大学修学能力試験」。略して “スヌン”(修能)と呼ばれるこの試験は、韓国の受験戦争の終着点であり、その後の人生を左右する分岐点と言う人も少なくない。韓国ではK-POPアイドルたちの中にも、スヌンを受ける者もいる。

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スヌンの日だけはラッシュ時の混雑を防ぐために会社員の出社時間が延ばされたり、リスニング問題が流れる時刻には騒音防止のために飛行機の離着陸が禁止されたりするなど、世の中が受験生を中心に回るほどだ。

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韓国は日本と違って大学独自の試験はなく(ただし一部名門大学は論述試験を行う)、スヌンの一発勝負となっている。

だからこそスヌンを「人生の一大事」と呼ぶ人も少なくないが、昨年11月に行われたスヌンがこれまでにない高難易度だったため、各メディアが大騒ぎ。あちこちで議論が巻き起こった。

例えば国語(当然、韓国語だ)では、東・西洋における天文学の改革過程を読んでから万有引力の法則に対するグラフィックを解釈するといった、国語というより科学に近い問題もあったという。

スヌンが終わった後、「あの問題を見た瞬間、メンタルが崩壊した」という受験生からの声が続出したことはもちろん、スヌンの出題を担当する「韓国教育評価院」宛に史上最多となる991件の異議提起が寄せられたという。

案の定、その問題の正解率は、適当に選んだ場合よりも低いと言われる18.3%に過ぎなかったらしい。

例年に比べて受験生の成績低下が顕著になっているのは言うまでもないが、それにしても今年は「最もいい成績を収めた順に名門大学へ進学できる」といった不文律まで破られているというから、興味深い。

例えば“美しき高学歴女優”イ・シウォンも卒業したソウル大学だ。2019年の世界大学ランキングで129位を記録したソウル大学は、韓国大学ランキングの不動のトップに君臨しているが、スヌンの「英語」で4級(例えば100点満点中60点くらい)を取っても合格したケースがはじめて出たという。

一般的にソウル大の定時募集といえば、スヌンの全科目で1級(上位4%)を取らなければ合格が難しいと言われるが、今年は合格者10人中4人が英語2級以下という分析も出ている。

こうした中で先日は、スヌンの問題難易度に不満を抱いた約10人の保護者たちが、行政機関である教育部(日本の文部科学省にあたる)と、前出の「韓国教育評価院」に損害賠償を求めて提訴する意向を示した。

昨年のスヌンには高校の教育課程外の内容や、法学適正試験・公職適格性評価試験レベルの問題が見受けられ、「学校教育だけではスヌンに備えられないというムードを助長して学習塾や予備校などに通う私教育を奨励している」というのが、保護者たちの主張だ。

国の行政機関を相手に提訴するくらいだから、怒りは相当なものだろう。

最近韓国で放送終了された大ヒットドラマ『SKYキャッスル』ほどではないが、保護者たちの過剰な教育熱を感じずにはいられない。高学歴者が優待される風潮が根強い韓国ならではの騒動とも言えなくもないだろう。

(参考記事:韓国でシンドロームを巻き起こしたドラマ『SKYキャッスル』、その10週間の足跡

ただ、そんな難易度にもかかわらず、今年はスヌン全科目で満点を取った現役・浪人生が9人現れたという。昨年の15人よりは減少したが、その中の現役生1人は中学の頃に白血病を患い、3年間の闘病生活を経て完治したというストーリーが明かされ、話題を呼んだ。

日本でも大学入試の合格発表が次々と行われている。結果はどうであれ、今まで頑張ってきたすべての受験生たちが前向きな気持ちで春を迎えてほしい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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