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歴史問題も吹き飛ばす!! 韓国の時代劇なのにゾンビNetflix『キングダム』がスゴい!!

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
『キングダム』(Netfllix公式サイトより)

海外ドラマ『ウォーキング・デッド』の成功がきっかけになったのか、ゾンビを題材にした映像作品が世界中で作られている今日この頃だ。

日本のゾンビ作品といえば、2016年に公開された『アイアムアヒーロー』や、昨年ヒットした低予算映画『カメラを止めるな!』などが記憶に新しい。

韓国でもゾンビ作品が増えており、2017年に日本公開された映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』が代表的な作品として挙げられるだろう。

ところが、韓国では最近、その座を奪いそうな勢いで、とあるドラマが話題を呼んでいる。Netflixで配信されているオリジナルドラマ『キングダム』がそれだ。

『キングダム』は、日本でリメイク制作されたドラマ『シグナル』の脚本家キム・ウニと、映画『トンネル 闇に鎖された男』のキム・ソンフン監督がタッグを組んだ作品だ。

主演には人気俳優チュ・ジフンと、ドラマ『最高の離婚』の韓国リメイク版にも出演した演技派女優のペ・ドゥナなど、豪華キャストが集結。当然のように高額な制作費がかかっている。

(参考記事:【2019年版】韓国でリメイクされた日本のドラマを一挙紹介。えっ、あのドラマまで!?

韓国ドラマのNetflix配信と言えば、『ミスター・サンシャイン』や『アルハンブラ宮殿の思い出』が有名だが、『キングダム』は合計200億ウォン(20億円)の制作費をNetflixが全額負担した初のオリジナル韓国産ドラマだ。

1本あたりの制作費は約20億ウォン(約2億円)で、15億ウォン(1億5000万円)の『ミスター・サンシャイン』や、18億ウォン(1億8000万円)の『アルハンブラ宮殿の思い出』を上回る。

(参考記事:Netflixがアジア初の作品紹介イベントで「韓国に注目する理由」を明かす

そんな韓国ドラマ史上最高規模と言われる『キングダム』が、1月25日より日本を含め約190カ国で配信スタート。早くも韓国はもちろん、海外からもレビューが寄せられている。

朝鮮王朝時代を舞台に“西洋生まれ”であるゾンビの存在を描くという目新しい設定は、『キングダム』が注目を集める大きな理由だろう。

「韓服(韓国の民族衣装)を着てダッシュするゾンビが新鮮で面白い」「朝鮮王朝時代の描写が興味深い」という海外からの反応を見てもわかるが、“韓国型ゾンビ”たちがゾンビの従来のイメージを容赦なくぶち壊していることだけは確かなようだ。

ただ、配信前まではジャンルが時代劇だからこそ浮かぶ懸念もあった。韓国の時代劇にかならずつきまとう“歴史問題”である。

これまでも数多くの作品がその問題で炎上に巻き込まれてきた。

例えば最近だと、1945年を舞台にした映画『軍艦島』が、徴用工の生活ぶりの描写が事実と違うという指摘が殺到し、動員観客数が急失速。当初は1000万人突破が見込まれていたが、約660万人にとどまってしまった。

(参考記事:観客急減の理由は歴史歪曲!? 韓国メディアが暴いた、映画『軍艦島』のウソと真実

他にも『朱蒙』『奇皇后』、映画『バトル・オーシャン 海上決戦』などが炎上を避けられなかったが、どうやら『キングダム』は歴史問題の疑惑をかけられることすらなさそうだ。

ゾンビがいるという設定はもとより、蓋を開けてみると王をはじめとするすべての登場人物が架空のもので、年代すらもはっきりしていない。一応、朝鮮王朝時代を舞台にしているものの、新感覚の時代劇だったのだ。

グローバル配信を念頭に置いて丁寧に練り上げた印象を受ける『キングダム』。韓国内ではシーズン1の内容が多少陳腐だというレビューも見受けられるが、ラストにどんでん返しの要素が待っている。現在撮影中というシーズン2の配信を、ぜひ楽しみにしたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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