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元日本代表にJ1昇格戦士も韓国へ。「内憂外患」のKリーグで成功できるか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
日本代表歴もある増田は三度、韓国へ。(写真:アフロスポーツ)

続々と発表になるJリーグ各クラブの新体制が話題だ。

昨年末には元スペイン代表のダビド・ビジャが昨季のアンドレス・イニエスタに続きヴィッセル神戸加入が発表されたことも関心を集めていたし、最近も各クラブの選手たちの移籍情報が連日のように報じられている。

韓国から新たにJリーグにやって来る選手も徐々に明らかになってきた。

昨季のKリーグ2(2部リーグ)で得点王、年間MVP、ベストイレブンに輝き、韓国代表にも選ばれたナ・サンホはFC東京に完全移籍。元韓国代表で蔚山現代のアタッカーである元韓国代表のイ・ジョンホは、J2のV・ファーレン長崎にレンタル移籍することになった。

ちなみにKリーグの大邱FCでプレーし、ロシア・ワールドカップで名を挙げた韓国代表GKチョ・ヒョヌもJリーグ移籍の噂か絶えないが、今のところまだその去就は明らかにされていない。

チョ・ヒョヌは奇抜な髪形がトレードマークで、昨年は日焼け止めのCMにも登場。愛妻家で伴侶も美人妻ということで話題の多い選手だけに、日本に来ることになれば関心を集めることは間違いないだろう。

(参考記事:韓国代表の“美女パートナー”を一挙紹介。ソン・フンミンの恋人は人気アイドル!? 【PHOTO】

一方で、鹿島アントラーズからフランスのトゥールーズへ移籍した昌子源など、海外へ活躍の場を移す日本人選手も増えているが、そのなかでも個人的に注目しているのは、新天地に韓国を選んだ日本人選手もいることだ。

日本人Kリーガーのなかでも高評価

ひとりは清水エスパルスの増田誓志。Kリーグ2(2部リーグ)のソウル・イーランドFCに移籍することがつい先日、発表された。

かつて鹿島アントラーズなどで活躍し、日本代表にも選出されたことのあるボランチだが、実は増田はKリーグでプレーした経験がある。

2013~2014年に蔚山現代でプレー。2年目のシーズン途中に大宮アルディージャにレンタル移籍し、2015年シーズンから再び蔚山現代に戻り、2016年シーズンまでプレーした。

これまで多くの日本人選手がKリーグに挑戦してきたが、環境やプレースタイルの異なる韓国で結果を残せないケースも多かった。

(参考記事:元日本代表から欧州組、有名タレントもそうだった!! 歴代の日本人Kリーガー通信簿

そのなかでもKリーグ通算98試合7得点を記録した増田は、2列目や最前線へのパスを積極的に仕掛けるプレーが評価され、“蔚山現代の隠れたMVP”とも称されていた。

それだけに韓国サッカーファンの間で増田の知名度は高い。旧知のサッカー記者によると、「その実績からして最近発表になったKリーグ平均年俸]を大きく上回る好待遇ではないか」との声もある。

(参考記事:最高額は日本キラーの大巨人!! 韓国Kリーグの平均年俸はいくらなのか

昨季は清水で出場機会を得られなかったが、韓国メディアは「ソウル・イーランドFC、Kリーグに最適化された“日本人MF”増田を獲得」(『インターフットボール』)とKリーグ復帰に期待を寄せている。

“内憂外患”の江原FCへ

もうひとりは、大分トリニータの清本拓己だ。

高校在学中にオランダへ留学し、2013年にFC岐阜でプロデビュー。2016年から大分でプレーしたサイドアタッカーで、昨季は26試合に出場し4得点を記録。

大分のJ1昇格に貢献したが、契約満了を迎えKリーグ1(1部リーグ)の江原FCへ加入することが決まった。

江原FCはかつて大橋正博がプレーした。Jリーグ通算152試合15得点の実績を引っ提げて、2009年に創設されたばかりの江原FCに加入。

翌年に水戸ホーリーホックに移籍したが、2011年から再び江原FCでプレーし、Kリーグ通算成績は24試合4得点を記録した。

その大橋がプレーした江原FCに再び日本人Kリーガーが誕生したわけだが、清本の前途は多難かもしれない。

というのも、江原FCは2017年シーズンこそKリーグ1に昇格。昇格初年度にして12チーム中6位で上位スプリット進出を果たしたが、昨季はリーグ戦8位に終わった。

1試合当たりの平均有料観客数も、2017年シーズンの1550人から1351人に減っている。リーグ全体の平均観客数(5459人)を大きく下回っており、12チーム中11位という結果だ(最下位は軍隊チームの尚州尚武)。

成績も人気も低迷しているわけだが、そこに追い打ちをかけるようにクラブ内部でも問題が発生している。

江原FCは昨季、韓国プロ野球のネクセン・ヒーローズ出身で“スターCEO”と呼ばれるチョ・テリョン氏をクラブ代表として迎え入れたが、その辣腕CEOがクラブの広告費を流用していたという。クラブが受け取った航空券を私的流用していたとも報じられている。

昨季Kリーグでは、FCソウルのイ・サンホの飲酒運転騒動や、元韓国代表で城南FCなどでプレーしたチャン・ハギョンが現役選手に八百長を持ちかけた事件など、不祥事も多かったが、江原FCもそのひとつだったわけだ。

こうした状況を受け、江原FCが本拠地とする江原道の地域紙『江原道民日報』も、「不正行為疑惑に興行失敗、江原FC“内憂外患”」と自嘲していたほどだ。

そんな江原FCに加入する清本のKリーグ挑戦には一抹の不安がよぎるが、はたして清本は新天地で成功できるか。

いずれにしても、今季は韓国でプレーすることが決まった増田と清本。新シーズン開幕はまだ先だが、新たな日本人Kリーガーの活躍が今から楽しみだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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